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歌声
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唯川とのレッスンの日の放課後。
音楽室に向かう廊下を歩いていた。
階段を上る。
三階は静かだった。
でも微かにピアノの音が聞こえる。
聞き覚えのある曲。
青柳さんがライブで弾いていた、クリスマスの曲。
──まさか
音楽室のドアをそっと開ける。
唯川が、ピアノの前に座ってあの曲を弾いている。
弾きながら、小さく歌っている。
英語の歌詞。
柔らかい声。
唯川の歌声を、初めて聞いた。
繊細で、透き通っている。
ピアノの音に溶けていく。
思わず、立ち尽くした。
唯川が気づいて、振り返った。
「……いぶき」
「今の、すごくよかった」
唯川が顔を背けた。
「聞かれちゃった」
「うん。もっと歌って」
「嫌だ」
即答だった。
「それより、いぶきはちゃんとピアノもやるんだ」
唯川が楽譜を出した。
「暫くまともに弾いてないから、基礎からやり直し」
「はい…」
まだ唯川にピアノを習ったばかりに弾いた練習曲。
夏の思い出が蘇る。
夢中で弾いていた。
導いてくれた。
あの時を思い出して鍵盤を押す。
音を奏でる。
繋ぐ。
だんだんと感覚が戻ってくる。
曲が終わる。
「唯川はちゃんとピアノ弾けてる?」
「え?」
「唯川のピアノのレッスンのことあまり聞かないから」
唯川が隣に座る。
「またちゃんと弾けるようになったよ」
「よかった」
「心配かけてごめん」
唯川の手に触れる。
唯川が握り返す。
「帰ろうか」
「うん」
二人で音楽室を出た。
階段を降りて、昇降口に向かう。
「じゃあ」
「うん、また」
唯川が去っていく。
あの曲と、唯川の歌声がまだ耳に残ったままだった。
***
祖母の家に着いた。
玄関を開ける。
「ただいま」
「あら、いぶき」
祖母が出てきた。
「お茶、淹れるわね」
「ありがとう」
居間に上がる。
祖母がお茶を持ってきた。
「そういえば」
祖母が座る。
「自治会の人から、お願いされたの」
「何を?」
「クリスマス会で、また演奏してほしいって」
「え」
驚いた。
「前にやった時、すごく好評だったから」
「そうなんだ」
前に、唯川と二人でピアノを弾いた。
夏の終わりだった。
「今度のクリスマス会でも、お願いできないかって」
祖母が微笑む。
「どうする?」
悩んだ。
俺一人で出るのは大丈夫だが、最近まともに弾いてなかったせいで、自信がない。
唯川はその日空いてるだろうか。
空いていたとしても、また弾いてくれるだろうか。
ふと、頭に浮かんだ。
「ばあちゃん」
「ん?」
「俺、ギターでやってもいい?」
祖母が、少し驚いた顔をする。
「ギターがいいの?」
「うん。ピアノは唯川に弾いてもらって」
「いいわね」
祖母が嬉しそうに笑う。
「でもまだ唯川に聞いてないけど」
「わかった、いい返事待ってる」
***
二階のピアノの部屋に上がった。
ギターケースを開ける。
青柳さんにもらったアコースティックギター。
青いピックを持つ。
ギターを抱えて、弦を弾く。
音が響く。
まだ拙い。
でも、少しずつ上手くなってきた。
コードを押さえる。
C、G、Am、F。
繰り返す。
あの曲は、どうやって弾くんだろう。
青柳さんに、聞いてみようか。
いや──
もっと、お願いしてみたいことがある。
スマホを取り出す。
青柳さんにメッセージを送った。
音楽室に向かう廊下を歩いていた。
階段を上る。
三階は静かだった。
でも微かにピアノの音が聞こえる。
聞き覚えのある曲。
青柳さんがライブで弾いていた、クリスマスの曲。
──まさか
音楽室のドアをそっと開ける。
唯川が、ピアノの前に座ってあの曲を弾いている。
弾きながら、小さく歌っている。
英語の歌詞。
柔らかい声。
唯川の歌声を、初めて聞いた。
繊細で、透き通っている。
ピアノの音に溶けていく。
思わず、立ち尽くした。
唯川が気づいて、振り返った。
「……いぶき」
「今の、すごくよかった」
唯川が顔を背けた。
「聞かれちゃった」
「うん。もっと歌って」
「嫌だ」
即答だった。
「それより、いぶきはちゃんとピアノもやるんだ」
唯川が楽譜を出した。
「暫くまともに弾いてないから、基礎からやり直し」
「はい…」
まだ唯川にピアノを習ったばかりに弾いた練習曲。
夏の思い出が蘇る。
夢中で弾いていた。
導いてくれた。
あの時を思い出して鍵盤を押す。
音を奏でる。
繋ぐ。
だんだんと感覚が戻ってくる。
曲が終わる。
「唯川はちゃんとピアノ弾けてる?」
「え?」
「唯川のピアノのレッスンのことあまり聞かないから」
唯川が隣に座る。
「またちゃんと弾けるようになったよ」
「よかった」
「心配かけてごめん」
唯川の手に触れる。
唯川が握り返す。
「帰ろうか」
「うん」
二人で音楽室を出た。
階段を降りて、昇降口に向かう。
「じゃあ」
「うん、また」
唯川が去っていく。
あの曲と、唯川の歌声がまだ耳に残ったままだった。
***
祖母の家に着いた。
玄関を開ける。
「ただいま」
「あら、いぶき」
祖母が出てきた。
「お茶、淹れるわね」
「ありがとう」
居間に上がる。
祖母がお茶を持ってきた。
「そういえば」
祖母が座る。
「自治会の人から、お願いされたの」
「何を?」
「クリスマス会で、また演奏してほしいって」
「え」
驚いた。
「前にやった時、すごく好評だったから」
「そうなんだ」
前に、唯川と二人でピアノを弾いた。
夏の終わりだった。
「今度のクリスマス会でも、お願いできないかって」
祖母が微笑む。
「どうする?」
悩んだ。
俺一人で出るのは大丈夫だが、最近まともに弾いてなかったせいで、自信がない。
唯川はその日空いてるだろうか。
空いていたとしても、また弾いてくれるだろうか。
ふと、頭に浮かんだ。
「ばあちゃん」
「ん?」
「俺、ギターでやってもいい?」
祖母が、少し驚いた顔をする。
「ギターがいいの?」
「うん。ピアノは唯川に弾いてもらって」
「いいわね」
祖母が嬉しそうに笑う。
「でもまだ唯川に聞いてないけど」
「わかった、いい返事待ってる」
***
二階のピアノの部屋に上がった。
ギターケースを開ける。
青柳さんにもらったアコースティックギター。
青いピックを持つ。
ギターを抱えて、弦を弾く。
音が響く。
まだ拙い。
でも、少しずつ上手くなってきた。
コードを押さえる。
C、G、Am、F。
繰り返す。
あの曲は、どうやって弾くんだろう。
青柳さんに、聞いてみようか。
いや──
もっと、お願いしてみたいことがある。
スマホを取り出す。
青柳さんにメッセージを送った。
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