夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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弾きたい

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 青柳さんの家から家に帰ってから唯川と電話した。

「12/23、何かあるの?」
「またばあちゃんのお願いで、自治会のクリスマスイベントで演奏して欲しいって言われて」
「そうなんだ」
「唯川、その日空いてる?できたらまた一緒に弾けたらと思ってて」
「……先生に聞いてみる」
「ありがとう」

 その後電話を切った。
 青柳さんのことは言わなかった。
 もし唯川がOKだった場合、青柳さんとのことを言ったらどう思うのか。

 期待と不安を抱きながら、眠りについた。

 ***

 次の日の昼休み、唯川に呼び出された。
 人があまり来ない渡り廊下。

「いぶき、ごめん。確認したら、先生の家でその日、教え子を集めてホームパーティーをするんだって。そこでピアノを皆弾くみたいで」
「そうか……」

 深いため息がでた。
 突然のお願いだから仕方がない。
 ならもう話してしまおう。

「実は……俺、ギター弾こうと思ってた。あの曲で」
「Happy Xmas?」
「うん」
「それは聴きたいな」
「で……唯川にはピアノを弾いてもらって、一緒に演奏したかった」

 唯川は驚いていた。

「そうだったのか。ごめん」
「いや、俺こそ突然ごめん」

 冷えた空気の中、沈黙が流れる。

「実は青柳さんにも声をかけたんだ」
「え?」
「一緒に弾いて欲しくて。唯川と三人で」

 唯川の目が泳いだ。

「そうか……」

 実現したかった。
 でも、この日じゃなくても、この先いつかできる。

「当日はどうにかするから、気にしないで」
「……」

 唯川は目を伏せたまま何も言わなかった。

 そしてチャイムが聞こえた。
 それぞれの教室に戻った。

 次の授業、クリスマス会のことを考えていた。
 あと数日。
 ちゃんと弾けてない状態。
 唯川はいない。
 青柳さんがOKしてくれたとして、それでいいのか。

 唯川なしで、出演する意味があるのか。

 答えが出せなかった。

 ***

 学校が終わって青柳さんにメッセージを送った。
 暫くすると電話がかかってきた。

『いぶき君お疲れ。断られちゃったんだね』
「はい……」
『まあそれは仕方ない。いぶき君はどうしたい?俺はどっちでもいいよ』

 俺は……。

「迷ってます」
『何を?』
「あいつの気持ちを置き去りにして、演奏をすることを」
『いぶき君。唯川君の気持ちは別にして、いぶき君はやりたいの?』

 唯川抜きにして。

 それは──

「やりたいです。弾きたいです」
『ならやりなよ』
「でも」
『いぶき君ね、唯川君のこといちいち気にしてたら、何もできなくなっちゃうよ』

 そうなんだけど。

「あいつと一緒にやりたいんです。青柳さんとも」
『……そうか』

 そんなの俺のわがままだ。
 でもそれが本心だ。

『俺はどっちでもいい。よく考えてみて』

 その後通話を終えた。

 ──自分の気持ち。

 俺は弾きたい。
 人の前で。
 それに気づかされた。

 唯川のように真っ直ぐに。
 青柳さんのように自由に、堂々と。

 不器用で拙い俺の音楽。
 でも弾きたいんだ。

 湧き上がる気持ちに戸惑いながらも、やり遂げたいと思った。
 例え、唯川がいなかったとしても。

 唯川からもらった楽譜が開いてある。
 青いピックが机で光っている。

 狭い部屋の中で。
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