夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

文字の大きさ
35 / 50

ハーモニー

しおりを挟む
 数日間でなんとか形になった、クリスマスソング。

 当日は、イベント開始の一時間前に青柳さんと駅で待ち合わせをしていた。

 祖母が不在の中、祖母の家でギターの練習をした。
 スマホからHappy Xmasの曲を流しながら、歌う。

 その時、スマホに着信があった。
 ──唯川だった。

「もしもし」
『いぶき、今日イベント何時から?』

 唯川はやや焦っている。

「5時からだよ」
『わかった。俺行くよ』
「え!?パーティーは?」
『終わってから行く』

 まさか唯川が来るとは思っていなかった。

『青柳さんと二人で演奏するの?』
「うん、ギターで」
『そうか。俺、ピアノで参加できるかな」

 会場にはいつもピアノがある。

「たぶん大丈夫だと思う」
『わかった』
「一時間前に青柳さんと駅で待ち合わせしてて」
『……それよりもう少し前に行っていい?』
「ん?」
『いきなり三人で合わせるのがちょっと不安』

 確かにそれはそうだ。
 俺は青柳さんとずっと練習してきたが、唯川は青柳さんと演奏するのは初めて。

「事前にリハーサルみたいなのできるか、ばあちゃんに聞いてみる」
『うん』

 電話を切った。

 そのあとすぐに祖母に電話をかけて事情を説明した。

『え!悟史くんも来てくれるのね!ちょっと会長に聞いてみるから、また連絡するわね』

 急展開だ。
 まさか直前にこんなことになるなんて。
 でも、諦めていた夢が叶う。
 唯川とまた弾ける。

 どんな形になっても、後悔しない。
 その後、会長からOKがでて、三人でリハーサルをする時間を作ることができた。

 ***

 3時30分

 駅の前で二人を待った。
 最初に来たのは青柳さん。

「唯川くん来てくれてよかったね~」
「はい、突然予定変えてすみません」
「いやいや、大丈夫。俺も嬉しい。唯川くんのピアノ聴きたいし」

 二人で色々話してると、唯川が来た。
 ややフォーマルなファッションにコートを着ていた。

「唯川、ありがとう」
「いや、突然ごめん」
「ううん、嬉しい」

 二人で見つめ合って微笑んだ。

「とりあえず、行こうか」

 青柳さんが笑っている。
 二人で俯きながら、会場まで急いで向かった。

 会場は既に飾り付けがされてあって、地元の人が準備をしていた。
 挨拶をすると、夏のコンサートに参加していた人が何人か来た。

「また二人の演奏が聴けるの楽しみにしていたよ」
「きっと盛り上がるわね」

 期待がプレッシャーに。

「いぶき、早くやろう」
 唯川がピアノを指さした。

「うん」

 俺と青柳さんはギターを出した。
 マイクは本番で出すと祖母に言われていた。

 ステージに三人で上がる。
 唯川はピアノの椅子に座り、鍵盤に手を置く。
 俺は、ギターを構えて、ピックを片手に持った。

「俺が、曲の入りカウントするから、それに合わせてやろう」
 青柳さんが指示する。

 青柳さんが唯川にギターパートの説明をする。
 唯川はそれを聞いて、ピアノを弾いてみた。

 音楽室で聞いてそれとは違う、もっとはっきりした旋律。
 響いて、壁に反響して、それが特別なものだと改めて感じた。

「唯川くん流石だね。俺達いなくてもなんとかなりそうだね」

 笑顔で青柳さんが茶化す。
 本当に、唯川が弾くだけで立派なコンサートだ。

 でも──
「俺はそれでも弾きます」

 青柳さんは口角を上げた。

「いぶきくん、いいね。負けてられないね」

 そういうつもりではないけど、唯川とはステージの上では対等でいたいと、無意識に思っていたのかもしれない。

 その時、ハンドベルを弾く人たちが近づいてきた。

「あの……一緒に演奏参加してもいいですか?」

 突然の提案に驚いた。

「いぶきくん、どうする?」
 青柳さんが笑顔で聞いてきた。

「いいですよ。是非、一緒に演奏してください」

 ベルの人たちは喜んだ。

「演奏ちょっと合わせますか?」
 青柳さんがベルの人に聞いた。

「はい!歌は知ってるので、なんとか本番までには間に合うと思います」

 完全に青柳さんがステージを仕切っている。
 きっと、青柳さんは今までステージの上で色んな経験をしてきたのかもしれない。
 この時、青柳さんと音楽の繋がりを深く感じられた。

 一度だけ、ベルの人たちも合わせて通しで合わせた。
 ベルの音色も響いて、ハーモニーが会場に広がる。
 準備の人たちが手を止めて聞き入っている。

 一人で弾くと思っていた音楽。
 一人で弾ききった時の達成感はすごくいい。
 だけど、この時、全員で弾き終わった達成感は、同じくらい、いやそれ以上に、大きなものを成し遂げた気がした。

 まだリハーサルにも拘らず、拍手が起こる。
 本番まであと数時間。

 でも俺の中で、もう演奏は始まっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

放課後の旋律~君と僕の秘密の放課後~

七転び八起き
BL
高校生の柏木いぶきは、放課後に偶然聴いた美しいピアノの音に導かれ、音楽室で一人ピアノを弾く唯川悟史と出会う。「ピアノを習いたい」というまっすぐな言葉をきっかけに、悟史はいぶきにピアノを教え始める。 ピアノと悟史への憧れを抱くいぶき。過去に何かを抱え、人前で弾けなくなっていた悟史。週に二回のレッスンを重ねるうちに、二人の距離は少しずつ縮まっていく。 夏に響く二人の音。

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

(完結)冷徹アルファを揺さぶるオメガの衝動

相沢蒼依
BL
 名門・青陵高校に通う佐伯涼は、誰もが一目置く完璧なアルファ。冷静沈着で成績優秀、規律を重んじる彼は、常に自分を律して生きてきた。だがその裏には厳格な父と家の名に縛られ、感情を抑え込んできた孤独があった。  一方、クラスの問題児と呼ばれる榎本虎太郎は自由奔放で喧嘩っ早く、どこか影を抱えた青年。不良のような外見とは裏腹に、心はまっすぐで仲間思い。彼が強さを求めるのは、かつて“弱さ”ゆえに傷ついた過去がある。  青陵高校1年の秋。冷徹で完璧主義の委員長・佐伯涼(α)は、他校の生徒に絡まれたところを隣のクラスの榎本虎太郎(Ω)に助けられる。だがプライドを傷つけられた佐伯は「余計なことをするな」と突き放し、二人の関係は最悪の出会いから始まった。 《届かぬ調べに、心が響き合い》 https://estar.jp/novels/26414089 https://blove.jp/novel/265056/ https://www.neopage.com/book/32111833029792800 (ネオページが作品の連載がいちばん進んでおります)

処理中です...