夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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Happy Xmas

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 12月23日 午後5時
 自治会のクリスマス会が始まった。

 小さなホールには子供から高齢の人までいた。
 壁にはたくさんのクリスマスの飾り。
 子供が描いたサンタの絵。

 ステージ脇にクリスマスツリー。
 てっぺんに星が飾ってある。
 音響からはクリスマスソングが次々に流れる。

 自治会長の挨拶から始まり、サンタの恰好をした役員が現れた。
 子供たちが喜ぶ声が聞こえる。
 その中に妹や弟もいた。
 そして、今日は父と母もいた。

 俺達はステージ脇からそれを見ていた。

 サンタから子供に配られるクリスマスプレゼント。
 そして、「ジングルベル」「赤鼻のトナカイ」「サンタが町にやってくる」を子供たちが歌った。

 出番は目前に迫っている。
 緊張してのどが渇く。
 唯川も少し緊張している表情だったが、真っすぐにクリスマス会を見ている。
 青柳さんはいつもと変わらず、のんびりと見ている。

 ──そして

 とうとう出番が回ってきた。

「本日、クリスマスソングの演奏をしてくれる人たちが来てます。どうぞ!」

 足がすくむ。
 夏も参加したはずなのに。

 そのとき、青柳さんが肩を優しく叩いた。
 青柳さんの笑顔を見ると少し安心した。

 自分を先頭にステージに上がる。
 大きな歓声。
 持っているギターが重く感じる。
 手が震える。

 ステージにある椅子とスタンドマイク。
 そこに座る。
 唯川はピアノの椅子に座った。
 青柳さんは隣にある椅子に座った。
 ベルの人たちは後ろに並ぶ。

 観客の期待の眼差し。
 静寂が訪れた。

 深呼吸をする。
 色んな感情が無になった。

 青柳さんが、入りの合図をする。

「So this is Xmas」

 マイクに語りかける。
 ギリギリまで練習したコードを鳴らす。
 青柳さんがそれを支えるように、主旋律を弾く。
 唯川は優しく、強く、鍵盤を響かせる。

 いつの間にかタンバリンや鈴の音が聞こえる。
 誰かが鳴らしている。

 緊張が高揚感と合わさる。

 ベルの音が聞こえる。

 青柳さんも歌いだした。
 そして、会場の人も歌っている。
 コーラスの部分も。

 この時会場と一体になった気がした。
 一人じゃない。

 途中で歌詞を忘れて、コードを間違えた。
 でももはや、それも関係なかった。

 長く感じる曲。
 響き渡る会場の音楽と歌声の中、余韻に浸りながら、終わりを迎える。

 終わった瞬間、心は凪いでいた。

 大きな歓声が上がる。

「とても素晴らしい演奏でした!ありがとうございます!」

 拍手が続く。
 立って頭を下げる。

 ピアノの方を振り返る。
 唯川が微笑んで頷いた。

 青柳さんを見る。
 笑顔で親指を立てた。

 やっと呼吸ができた。

 ステージ脇に戻ると、青柳さんが頭を撫でた。

「いぶきくん、最高だった!」
「ありがとうございます…」

 安堵感で力が抜けている。

「いぶき、凄く歌よかったよ」

 唯川が微笑んだ。

「ありがとう」

「惚れ直すね」
 青柳さんが唯川をからかう。

 唯川が一瞬目を逸らす。

「じゃあ、俺は行く。いぶき、一緒に演奏させてくれてありがとう」

 唯川と見つめ合う。
 それは恋とのそれとは違う。
 ステージに立った仲間としてのエールのように感じた。

 唯川は会場を出て行った。

 舞台袖から出ると、色々な人から声をかけられたが、あまり聞こえてなくて、適当に何か答えていた。
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