37 / 50
余韻
しおりを挟む
クリスマスコンサートが終わった後、家族でクリスマスケーキを囲んでいた。
そこに青柳さんもいた。
なぜかというと、母が青柳さんを気に入って誘ったからだ。
「いぶきにギター教えてくれてありがとうね~」
「いえいえ、いぶきくん頑張り屋なので教え甲斐があります」
なぜかビールまで飲んでいる。
父も青柳さんと楽しそうに話している。
昔の曲の話をしている。
青柳さんは古い洋楽や邦楽にも詳しい。
弟や妹たちもすぐ懐いた。
「俺、兄貴しかいなかったから、かわいい」
青柳さんは嬉しそうだ。
「いぶき兄ちゃん、あのピアノのお兄ちゃんは?」
妹が聞いてきた。
夏に唯川と妹は会ったことがある。
「ピアノの先生のうちでパーティーしてるんだよ」
「え~また会いたい」
妹は唯川と仲良くなりたいようだ。
「あの子、ピアノすごい上手だったわね。ピアニストみたいだった」
母が紅茶を淹れながら言う。
「音大目指してるんだよ」
「すごい子だったのね…。あの子とも話してみたいわ」
父は酔いが回っている。
「女が好きそうなタイプだな」
「唯川くん王子様みたいなんで、羨ましいです」
青柳さんは、本音なのかよくわからないが、和ませてくれる。
「青柳さんは気さくでいい方ね。いぶきは長男だし、いいお兄さんが近くにいてよかったわね」
母が言う。
「うん」
正直、青柳さんがいてくれたから、俺はここまでやってこれた。
出会えなければ、俺と唯川の関係は破綻していたかもしれない。
俺たちはまだまだ未熟だ。
「俺そろそろ帰ります。明日早起きしなきゃならないんで」
青柳さんが立ち上がった。
「あら、残念」
「まだいつでもおいで」
父と母が言う。
うちの家族に後ろ髪を引かれながら、青柳さんは家をでた。
冬の夜の冷たい空気の中、青柳さんと二人で歩いた。
「いい家族だね、いぶきくんの家」
「そうですかね。結構騒がしくて」
「俺の実家、会話ほとんどないよ」
「そうなんですか?」
「親父とおふくろ仲がよくないし、兄貴も親父と合わないから直ぐに家出たし」
「そうだったんですね…」
「だから……いぶきくんに惹かれたのかもな」
「え?」
「俺にないものを持っている」
むしろ、青柳さんの方が多くを持っている気がするのに、不思議だ。
「俺は周りに恵まれてるだけです」
「それ、すごく大切なんだよ」
青柳さんが真剣な瞳で見る。
「周りに恵まれてれば色んなチャンスがくる。どんどん挑戦しなよ。俺は自分で足掻くしかなかったからね」
青柳さんがこれまでどんな人生を歩んだか、はっきりわからない。
ただ、俺が知らないだけで、笑顔の裏で色んな葛藤を抱えている人は周りにいるのかもしれない。
そんな気がした。
「三人で演奏できて俺も良かった!やっぱりバンド組みたい。ライブハウスでまた鳴らしたい」
青柳さんが近づいてきた。
「いぶきくん、俺とバンド組もう」
「え?」
「いや、真剣だよ?」
「え、青柳さんのバンドのメンバーは流石にハードル高いですよ」
「別に一緒にステージにいるだけでいいよ」
「なんですかそれ」
二人で笑った。
「いぶきくんもっと自信持って。当たって砕けて」
「……考えます」
「前向きにね」
駅に着いた。
「じゃあいぶきくんまたね~。今日は楽しかったよ。ご家族にも宜しく」
「青柳さん、ありがとうございます!」
改札を通った青柳さんが、振り返って手を振った。
冗談が本気かわからない。
ただ、青柳さんと同じステージに、また立ちたいという気持ちは、本物だった。
そこに青柳さんもいた。
なぜかというと、母が青柳さんを気に入って誘ったからだ。
「いぶきにギター教えてくれてありがとうね~」
「いえいえ、いぶきくん頑張り屋なので教え甲斐があります」
なぜかビールまで飲んでいる。
父も青柳さんと楽しそうに話している。
昔の曲の話をしている。
青柳さんは古い洋楽や邦楽にも詳しい。
弟や妹たちもすぐ懐いた。
「俺、兄貴しかいなかったから、かわいい」
青柳さんは嬉しそうだ。
「いぶき兄ちゃん、あのピアノのお兄ちゃんは?」
妹が聞いてきた。
夏に唯川と妹は会ったことがある。
「ピアノの先生のうちでパーティーしてるんだよ」
「え~また会いたい」
妹は唯川と仲良くなりたいようだ。
「あの子、ピアノすごい上手だったわね。ピアニストみたいだった」
母が紅茶を淹れながら言う。
「音大目指してるんだよ」
「すごい子だったのね…。あの子とも話してみたいわ」
父は酔いが回っている。
「女が好きそうなタイプだな」
「唯川くん王子様みたいなんで、羨ましいです」
青柳さんは、本音なのかよくわからないが、和ませてくれる。
「青柳さんは気さくでいい方ね。いぶきは長男だし、いいお兄さんが近くにいてよかったわね」
母が言う。
「うん」
正直、青柳さんがいてくれたから、俺はここまでやってこれた。
出会えなければ、俺と唯川の関係は破綻していたかもしれない。
俺たちはまだまだ未熟だ。
「俺そろそろ帰ります。明日早起きしなきゃならないんで」
青柳さんが立ち上がった。
「あら、残念」
「まだいつでもおいで」
父と母が言う。
うちの家族に後ろ髪を引かれながら、青柳さんは家をでた。
冬の夜の冷たい空気の中、青柳さんと二人で歩いた。
「いい家族だね、いぶきくんの家」
「そうですかね。結構騒がしくて」
「俺の実家、会話ほとんどないよ」
「そうなんですか?」
「親父とおふくろ仲がよくないし、兄貴も親父と合わないから直ぐに家出たし」
「そうだったんですね…」
「だから……いぶきくんに惹かれたのかもな」
「え?」
「俺にないものを持っている」
むしろ、青柳さんの方が多くを持っている気がするのに、不思議だ。
「俺は周りに恵まれてるだけです」
「それ、すごく大切なんだよ」
青柳さんが真剣な瞳で見る。
「周りに恵まれてれば色んなチャンスがくる。どんどん挑戦しなよ。俺は自分で足掻くしかなかったからね」
青柳さんがこれまでどんな人生を歩んだか、はっきりわからない。
ただ、俺が知らないだけで、笑顔の裏で色んな葛藤を抱えている人は周りにいるのかもしれない。
そんな気がした。
「三人で演奏できて俺も良かった!やっぱりバンド組みたい。ライブハウスでまた鳴らしたい」
青柳さんが近づいてきた。
「いぶきくん、俺とバンド組もう」
「え?」
「いや、真剣だよ?」
「え、青柳さんのバンドのメンバーは流石にハードル高いですよ」
「別に一緒にステージにいるだけでいいよ」
「なんですかそれ」
二人で笑った。
「いぶきくんもっと自信持って。当たって砕けて」
「……考えます」
「前向きにね」
駅に着いた。
「じゃあいぶきくんまたね~。今日は楽しかったよ。ご家族にも宜しく」
「青柳さん、ありがとうございます!」
改札を通った青柳さんが、振り返って手を振った。
冗談が本気かわからない。
ただ、青柳さんと同じステージに、また立ちたいという気持ちは、本物だった。
0
あなたにおすすめの小説
放課後の旋律~君と僕の秘密の放課後~
七転び八起き
BL
高校生の柏木いぶきは、放課後に偶然聴いた美しいピアノの音に導かれ、音楽室で一人ピアノを弾く唯川悟史と出会う。「ピアノを習いたい」というまっすぐな言葉をきっかけに、悟史はいぶきにピアノを教え始める。
ピアノと悟史への憧れを抱くいぶき。過去に何かを抱え、人前で弾けなくなっていた悟史。週に二回のレッスンを重ねるうちに、二人の距離は少しずつ縮まっていく。
夏に響く二人の音。
雪色のラブレター
hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。
そばにいられればいい。
想いは口にすることなく消えるはずだった。
高校卒業まであと三か月。
幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。
そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。
そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。
翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
(完結)冷徹アルファを揺さぶるオメガの衝動
相沢蒼依
BL
名門・青陵高校に通う佐伯涼は、誰もが一目置く完璧なアルファ。冷静沈着で成績優秀、規律を重んじる彼は、常に自分を律して生きてきた。だがその裏には厳格な父と家の名に縛られ、感情を抑え込んできた孤独があった。
一方、クラスの問題児と呼ばれる榎本虎太郎は自由奔放で喧嘩っ早く、どこか影を抱えた青年。不良のような外見とは裏腹に、心はまっすぐで仲間思い。彼が強さを求めるのは、かつて“弱さ”ゆえに傷ついた過去がある。
青陵高校1年の秋。冷徹で完璧主義の委員長・佐伯涼(α)は、他校の生徒に絡まれたところを隣のクラスの榎本虎太郎(Ω)に助けられる。だがプライドを傷つけられた佐伯は「余計なことをするな」と突き放し、二人の関係は最悪の出会いから始まった。
《届かぬ調べに、心が響き合い》
https://estar.jp/novels/26414089
https://blove.jp/novel/265056/
https://www.neopage.com/book/32111833029792800
(ネオページが作品の連載がいちばん進んでおります)
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる