夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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余韻

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 クリスマスコンサートが終わった後、家族でクリスマスケーキを囲んでいた。

 そこに青柳さんもいた。
 なぜかというと、母が青柳さんを気に入って誘ったからだ。

「いぶきにギター教えてくれてありがとうね~」
「いえいえ、いぶきくん頑張り屋なので教え甲斐があります」

 なぜかビールまで飲んでいる。
 父も青柳さんと楽しそうに話している。

 昔の曲の話をしている。
 青柳さんは古い洋楽や邦楽にも詳しい。
 弟や妹たちもすぐ懐いた。

「俺、兄貴しかいなかったから、かわいい」

 青柳さんは嬉しそうだ。

「いぶき兄ちゃん、あのピアノのお兄ちゃんは?」

 妹が聞いてきた。
 夏に唯川と妹は会ったことがある。

「ピアノの先生のうちでパーティーしてるんだよ」
「え~また会いたい」

 妹は唯川と仲良くなりたいようだ。

「あの子、ピアノすごい上手だったわね。ピアニストみたいだった」

 母が紅茶を淹れながら言う。

「音大目指してるんだよ」
「すごい子だったのね…。あの子とも話してみたいわ」

 父は酔いが回っている。

「女が好きそうなタイプだな」
「唯川くん王子様みたいなんで、羨ましいです」

 青柳さんは、本音なのかよくわからないが、和ませてくれる。

「青柳さんは気さくでいい方ね。いぶきは長男だし、いいお兄さんが近くにいてよかったわね」

 母が言う。

「うん」

 正直、青柳さんがいてくれたから、俺はここまでやってこれた。
 出会えなければ、俺と唯川の関係は破綻していたかもしれない。

 俺たちはまだまだ未熟だ。

「俺そろそろ帰ります。明日早起きしなきゃならないんで」

 青柳さんが立ち上がった。

「あら、残念」
「まだいつでもおいで」

 父と母が言う。

 うちの家族に後ろ髪を引かれながら、青柳さんは家をでた。
 冬の夜の冷たい空気の中、青柳さんと二人で歩いた。

「いい家族だね、いぶきくんの家」
「そうですかね。結構騒がしくて」
「俺の実家、会話ほとんどないよ」
「そうなんですか?」
「親父とおふくろ仲がよくないし、兄貴も親父と合わないから直ぐに家出たし」
「そうだったんですね…」
「だから……いぶきくんに惹かれたのかもな」
「え?」
「俺にないものを持っている」

 むしろ、青柳さんの方が多くを持っている気がするのに、不思議だ。

「俺は周りに恵まれてるだけです」
「それ、すごく大切なんだよ」

 青柳さんが真剣な瞳で見る。

「周りに恵まれてれば色んなチャンスがくる。どんどん挑戦しなよ。俺は自分で足掻くしかなかったからね」

 青柳さんがこれまでどんな人生を歩んだか、はっきりわからない。
 ただ、俺が知らないだけで、笑顔の裏で色んな葛藤を抱えている人は周りにいるのかもしれない。

 そんな気がした。

「三人で演奏できて俺も良かった!やっぱりバンド組みたい。ライブハウスでまた鳴らしたい」

 青柳さんが近づいてきた。

「いぶきくん、俺とバンド組もう」
「え?」
「いや、真剣だよ?」
「え、青柳さんのバンドのメンバーは流石にハードル高いですよ」
「別に一緒にステージにいるだけでいいよ」
「なんですかそれ」

 二人で笑った。

「いぶきくんもっと自信持って。当たって砕けて」
「……考えます」
「前向きにね」

 駅に着いた。

「じゃあいぶきくんまたね~。今日は楽しかったよ。ご家族にも宜しく」
「青柳さん、ありがとうございます!」

 改札を通った青柳さんが、振り返って手を振った。

 冗談が本気かわからない。

 ただ、青柳さんと同じステージに、また立ちたいという気持ちは、本物だった。
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