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12月23日 午後2時
駅のホームにいた。
今日は、薫さんの家でのクリスマスパーティー。
他の教え子たちも集まる。
俺も、ピアノを弾く予定だ。
いぶきが言っていた、クリスマスイベントと被ってしまった。
『一緒に弾いて欲しくて。唯川と三人で』
断ってしまったけど、いぶきはどうするのだろうか。
青柳さんと二人で演奏するのだろうか。
俺なしで。
胸の奥が、ざわめく。
俺はギターを弾いているいぶきを見たことがない。
ステージで見られる機会なんて、この先あるかわからない。
いぶきがステージでギターを弾く姿を見たい。
でも、パーティーを断る訳にはいかない。
俺は進むと決めた。
電車がホームに来た。
ドアが開く。
人が溢れる。
電車に乗る。
ベルが鳴る。
ドアが閉まろうとした時、ホームに戻ってしまった。
スマホを開く。
すぐに薫さんに電話をかけた。
『もしもし?』
「薫さん、すみません、相談があります」
『どうしたの?』
「友人の……大切な人が今日ステージで演奏するんです。どうしてもそのステージに参加したいんです」
『そう…。じゃあ今日は来ないの?』
「いえ、終わり次第そちらに行きます」
『別に今日はレッスンじゃないから大丈夫よ』
「いえ……俺は、その演奏だけできればそれでいいので」
『悟史君はそれでいいの?』
「はい」
『わかったわ。じゃあ待ってる。感想聞かせてね』
「はい。ありがとうございます」
電話を切った。
次に、いぶきの連絡先を表示する。
通話を押した。
『もしもし?』
「いぶき、今日イベント何時から?」
いぶきはやや戸惑っている。
『5時からだよ』
「わかった。俺行くよ」
『え!?パーティーは?』
「終わったら行く」
『ありがとう』
「青柳さんと二人で演奏するの?」
『うん、ギターで』
「そうか。俺、ピアノで参加できるかな」
もうすでに準備は終わっているはず。
なんとかならないか。
『たぶん大丈夫だと思う』
安堵した。
「わかった」
『一時間前に青柳さんと駅で待ち合わせしてて』
「……それよりもう少し前に行っていい?」
『ん?』
「いきなり三人で合わせるのがちょっと不安」
ピアノで一人で弾くことはできる。
でも、複数人でやるとなると話は別だ。
全体のリズムを合わせないといけない。
『事前にリハーサルみたいなのできるか、ばあちゃんに聞いてみる』
「うん」
その後、いぶきとの待ち合わせの駅に向かった。
***
駅に着いて待ち合わせ場所に行くと、既にいぶきと青柳さんがいた。
ライブハウスでしか見た事がない。
普通に会うのはこれが初めて。
年上の大学生。
背が高くて、おしゃれ。
ギターを背負う姿がさまになっている。
見てすぐミュージシャンだとわかる。
いぶきと目が合う。
「唯川、ありがとう」
「いや、突然ごめん」
「ううん、嬉しい」
いぶきの笑顔に安心して頬が緩んだ。
「とりあえず、行こうか」
青柳さんは俺達を見て苦笑している。
この人は俺といぶきの関係を知っている。
いぶきが話したのかもしれない。
***
会場に着いた。
夏に来た、あの自治会の公民館。
あの時は、いぶきと二人だった。
「あ、あの時の!」
前回のピアノを聞いてた人が近寄ってきた。
「今日も楽しみにしてるよ」
優しい笑顔だった。
頭を下げた。
三人でステージに上がる。
俺はピアノの椅子に座り、鍵盤に手を置く。
いぶきは、ギターを構えて、青いピックを片手に持った。
この時初めていぶきがギターを構えているのを見た。
いぶきは青柳さんを見ている。
「俺が、曲の入りカウントするから、それに合わせてやろう」
青柳さんが指示する。
「唯川くん、これギターの楽譜。これでなんとなくわかる?」
渡された楽譜を見る。
いぶきのパートと青柳さんのパート。
「はい大丈夫です」
ギターの流れを意識した伴奏をする。
自分が主役ではない音。
調和のための音。
「唯川くん流石だね。俺達いなくてもなんとかなりそうだね」
青柳さんが笑う。
いや……俺一人だったら、ただのピアノの発表会だ。
ただ聞かせるだけ。
でもきっとこの会の目的は違う。
「俺はそれでも弾きます」
いぶきの発言に驚いた。
前までのいぶきだったら、こんなことは言わないはず。
「いぶきくん、いいね。負けてられないね」
この時にわかった。
いぶきは、俺とは別に音楽の世界を持っている。
駅のホームにいた。
今日は、薫さんの家でのクリスマスパーティー。
他の教え子たちも集まる。
俺も、ピアノを弾く予定だ。
いぶきが言っていた、クリスマスイベントと被ってしまった。
『一緒に弾いて欲しくて。唯川と三人で』
断ってしまったけど、いぶきはどうするのだろうか。
青柳さんと二人で演奏するのだろうか。
俺なしで。
胸の奥が、ざわめく。
俺はギターを弾いているいぶきを見たことがない。
ステージで見られる機会なんて、この先あるかわからない。
いぶきがステージでギターを弾く姿を見たい。
でも、パーティーを断る訳にはいかない。
俺は進むと決めた。
電車がホームに来た。
ドアが開く。
人が溢れる。
電車に乗る。
ベルが鳴る。
ドアが閉まろうとした時、ホームに戻ってしまった。
スマホを開く。
すぐに薫さんに電話をかけた。
『もしもし?』
「薫さん、すみません、相談があります」
『どうしたの?』
「友人の……大切な人が今日ステージで演奏するんです。どうしてもそのステージに参加したいんです」
『そう…。じゃあ今日は来ないの?』
「いえ、終わり次第そちらに行きます」
『別に今日はレッスンじゃないから大丈夫よ』
「いえ……俺は、その演奏だけできればそれでいいので」
『悟史君はそれでいいの?』
「はい」
『わかったわ。じゃあ待ってる。感想聞かせてね』
「はい。ありがとうございます」
電話を切った。
次に、いぶきの連絡先を表示する。
通話を押した。
『もしもし?』
「いぶき、今日イベント何時から?」
いぶきはやや戸惑っている。
『5時からだよ』
「わかった。俺行くよ」
『え!?パーティーは?』
「終わったら行く」
『ありがとう』
「青柳さんと二人で演奏するの?」
『うん、ギターで』
「そうか。俺、ピアノで参加できるかな」
もうすでに準備は終わっているはず。
なんとかならないか。
『たぶん大丈夫だと思う』
安堵した。
「わかった」
『一時間前に青柳さんと駅で待ち合わせしてて』
「……それよりもう少し前に行っていい?」
『ん?』
「いきなり三人で合わせるのがちょっと不安」
ピアノで一人で弾くことはできる。
でも、複数人でやるとなると話は別だ。
全体のリズムを合わせないといけない。
『事前にリハーサルみたいなのできるか、ばあちゃんに聞いてみる』
「うん」
その後、いぶきとの待ち合わせの駅に向かった。
***
駅に着いて待ち合わせ場所に行くと、既にいぶきと青柳さんがいた。
ライブハウスでしか見た事がない。
普通に会うのはこれが初めて。
年上の大学生。
背が高くて、おしゃれ。
ギターを背負う姿がさまになっている。
見てすぐミュージシャンだとわかる。
いぶきと目が合う。
「唯川、ありがとう」
「いや、突然ごめん」
「ううん、嬉しい」
いぶきの笑顔に安心して頬が緩んだ。
「とりあえず、行こうか」
青柳さんは俺達を見て苦笑している。
この人は俺といぶきの関係を知っている。
いぶきが話したのかもしれない。
***
会場に着いた。
夏に来た、あの自治会の公民館。
あの時は、いぶきと二人だった。
「あ、あの時の!」
前回のピアノを聞いてた人が近寄ってきた。
「今日も楽しみにしてるよ」
優しい笑顔だった。
頭を下げた。
三人でステージに上がる。
俺はピアノの椅子に座り、鍵盤に手を置く。
いぶきは、ギターを構えて、青いピックを片手に持った。
この時初めていぶきがギターを構えているのを見た。
いぶきは青柳さんを見ている。
「俺が、曲の入りカウントするから、それに合わせてやろう」
青柳さんが指示する。
「唯川くん、これギターの楽譜。これでなんとなくわかる?」
渡された楽譜を見る。
いぶきのパートと青柳さんのパート。
「はい大丈夫です」
ギターの流れを意識した伴奏をする。
自分が主役ではない音。
調和のための音。
「唯川くん流石だね。俺達いなくてもなんとかなりそうだね」
青柳さんが笑う。
いや……俺一人だったら、ただのピアノの発表会だ。
ただ聞かせるだけ。
でもきっとこの会の目的は違う。
「俺はそれでも弾きます」
いぶきの発言に驚いた。
前までのいぶきだったら、こんなことは言わないはず。
「いぶきくん、いいね。負けてられないね」
この時にわかった。
いぶきは、俺とは別に音楽の世界を持っている。
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