夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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クリスマスの夜

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 今日はクリスマス。
 でも俺はバイトをしている。
 青柳さんと一緒に。

「いぶきくん、唯川くんと会わないの?」

 会いたい。
 でも──

「この前無理に来てくれたから、それでいいんです」

 青柳さんが怪訝な顔をする

「ねぇ、いぶきくん。明日何が起こるかわからないんだよ?突然事故で死んでしまうかもしれない。そしたら後悔しない?」
「え、事故!?」
「大袈裟だけど、つまり、我慢してなんかいいことあるの?」

 それは──

「ない…かもしれませんね」

 でも邪魔はしたくない。

「会いたいと思ってるなら、ちゃんと言った方がいいよ」
 青柳さんの目は真剣だ。

「……言ってみます」
「うん。大切な恋人なんだからさ」

 恋人……
 そう言っていいかわからない。

 でも大切だ。
 唯川のことが好きだ。

「ちょっと裏行ってもいいですか?」
「いってらっしゃ~い」

 青柳さんはにやにやしている。

 バックヤードでスマホを出す。
 唯川のトーク画面を開く。

『今日、バイト終わってから会いに行ってもいいかな』

 送信する。
 リュックにスマホをしまおうとすると、通知がきた。

『いいよ。どこに行けばいい?』

 胸が苦しくなった。

『唯川は家で待ってて。着いたら連絡する』

 既読。

『わかった。待ってる』

 嬉しくて頭が舞い上がっていた。

 店に戻ると、青柳さんが振り返った。

「よかったね」
 お見通しだ。

 隠せない。
 でももう隠すつもりもない。

 好きなんだ。
 理由なんてもうどうでもいい。

 音楽なんて関係ない。
 あいつが好きで仕方ないんだ。

 ***

 バイトが終わると、速攻で店を出た。

『今終わった』
 唯川にメッセージを送る。

『お疲れ様』
 すぐに返信に返ってくる。

 走った。
 急いでバス停に向かった。
 バスに乗り込こむ。

 早く会いたい。
 唯川の顔が見たい。

 ***

 バスで30分。
 やっと唯川の家の最寄りのバス停に着いた。

 バスから降りると、唯川が立っていた。

「ここまで来てくれたんだ」
「うん」

 唯川は、白いセーターを着ている。
 黒いジャケットを羽織っている。
 ベージュのパンツを履いていて、シンプルだけど、すごく似合っている。

 心なしか、いつもより綺麗に見える。

「家に来る……?」
「え、あ、いや、こんな時間だし」
「平気だよ」

 唯川が目を伏せて微笑む。

 唯川の部屋は色々まずい。
 あの日を思い出す。

「前行った公園でもいいかな」
「うん」
「寒かったらごめん」

 一緒に公園に行った。
 公園は暗くて静かだった。
 でも住宅街には電飾が飾られてあったりして、それがイルミネーションのようだった。

 二人でベンチに座る。

「突然来てごめん」
「ううん。会いたかったから」

 唯川は微笑んでいる。
 俺は悶えている。

「あの……こんなんで悪いんだけど、ケーキ、一緒に食べようと思って」

 コンビニに残っていたショートケーキを出した。

「ありがとう」

 プラスチックのスプーンを出す。
 二人で皿もなしに、ベンチでケーキを食べる。

 流石に準備が悪すぎた。

「ごめん」

 ちゃんとした場所で食べさせあげたかった。

「なんで謝るの?俺は嬉しいよ」

 上品にコンビニのケーキを食べる唯川。

 唯川に会えた喜びと、湧き上がる想いに胸が締め付けられる。
 俺はどうしたんだいったい……。

「いぶき、どうしたの?」

 唯川が覗き込む。

「あ」

 唯川が俺の顔に手を伸ばした。

「口にクリームついている」
 指で拭ってくれた。

 我慢していた心の限界を超えてしまった。
 唯川を抱きしめてしまった。

「唯川、好き」

 唯川が背中に手を回す。

「俺も」

 いい匂いがする。
 心臓が壊れそうなくらい脈を打っている。

 耐えられなくて、キスをしてしまう。
 唯川はそれに応じる。

 衝動的に思ったことが喉の奥まで出かかった。

 その時、我に返った。
 ダメだ、今このタイミングで言うべきじゃない。

「唯川」
「うん」
「今度ちゃんと伝えるから」
「何を?
「……秘密」

 ──次は、ちゃんとする。

 ふさわしい形で。

 クリスマスの夜。

 俺は、決意した。
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