夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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新年

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 新年。
 俺は母の実家で目を覚ました。

 毎年、年末年始は母の実家で家族で年を越す。
 従兄弟たちも集まって、大賑わいだ。
 そしてお年玉をもらう。
 お年玉がもらえるのはきっと高校を卒業するまでだ。
 むしろ未だに暮れる親戚には感謝している。

 俺はどうしても買いたいものがあったからだ。
 それは──

 唯川の誕生日プレゼント。
 唯川の誕生日が一月だという事を数時間前知った。

 遡ること、年越しに二人で通話をしていた時のこと──

 ***

「今日、前田の誕生日なんだよね」
「そうなんだ。プレゼントとかあげるの?」
「あげるわけないじゃん」
「そうなんだ」

 何気ない会話。

「そういえば、唯川の誕生日っていつ?」
「1月20日」
「……え?」

 残り一か月もなかった。

「なんで言ってくれなかったの?」
「言うと、気を使うと思って」

 油断していた。
 でもまだ間に合う。

「そんなこと気にしなくていい。知らないまま終わっている方が辛い」
「うん、ごめん」

 唯川は悪くないのに責めるような言い方に。

「いや、謝らないで。唯川は悪くない」

 1月20日、なんとかして時間を作りたい。

「その日予定ある?」
「いつも通りレッスンはある」
「そうか……」

「放課後、少しでも時間もらっていい?」
「うん、大丈夫」
「ありがとう」

 そして通話を終えた。

 ***

 俺が唯川のことを考えながらお節料理を食べてると、親戚に声をかけられる。

「いぶきは最近どう?」
「卒業後はどうするの?」
「彼女はいるの?」

 そんな質問ばかりだ。

 卒業後の進路は変わらず決まってない。
 でも、音楽は続けたい。
 唯川との時間を大切にしたい。

 今はそれだけだった。

 ***

 やっと家に帰ってきた。

 次は祖母の家に行く。
 弟や妹たちを連れて。

 玄関を開ける。

「ばあちゃん、あけましておめでとう」

 すると、祖母が出てくる。

「いらっしゃい」

 弟と妹が庭で羽子板で遊んでいる。
 それを見ながら、祖母が作ったお吸い物を飲む。

「いぶき、クリスマスコンサート、素晴らしかったわ」

 祖母が微笑む。

「青柳さんがいたから、上手くいったんだよ」
「青柳さんって、いぶきの隣でギターを弾いていた人かしら?」
「うん」
「若いのにしっかりしてそうな人ね」
「そうだね」
「ギターを弾いて、歌も歌って。いぶきはミュージシャンね」
「大袈裟だよ」
「あら、私にはそう見えたわよ」

 孫贔屓だとしても、嬉しかった。

「唯川は音大に行くために特訓している。だから俺も進みたかったんだ」

 祖母が頷く。

「あの子は特別なのよ。漠然としたまま生きている人も沢山いるわ」

 白黒つけない生き方。
 それを青柳さんを見て、実感できた。
 でも、青柳さんも、音楽をずっと続けようとしている。

「はあ。才能がほしい」
「才能がなくても、努力で叶えられるものも沢山ある」

 祖母がお茶を飲みながら言う。

「ところで、悟史くんと最近どうなの?」
「……」
「あんな素敵な子に想われてるなんて、いぶきは罪な男ね」
「なんだよそれ……」

 平凡に生きてきたんだ。夏までは。

「俺のどこが好きなんだろう」

 祖母が笑った。

「好きになるのに理由なんてなくていいのよ」
「うん……」

 スマホに通知が来た。
 唯川だった。

『おかえり』

 早く会いたい。

 冬休みがもうすぐ明ける。

 唯川の誕生日に、プレゼント。

 そして、俺の気持ちをちゃんと伝えるんだ。
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