43 / 50
新学期
しおりを挟む
とうとう新学期が始まった。
新年初の学校。
澄んだ冬の空、澄んだ空気。
一度リセットされたような世界。
でも同じように続く日常。
息が白く空中に溶ける。
分厚いコートを着て校門まで歩いていると、声がする。
「いぶきあけおめ~」
前田だった。
「唯川と年越しした?」
またからかってくる。
「……うるさい」
「あ、唯川来た!」
前田の言葉に驚いて振り返ると、少し離れた場所から唯川が見えた。
クリスマス以来会っていなかった。
話したい。
「いぶき、行けよ」
前田に押される。
「いや、でも」
「いや、行け」
思い切り唯川の方に押し出された。
唯川の目の前に飛び出してしまった。
二人で立ちすくんでいた。
「……おはよう、いぶき」
電話越しじゃない、唯川の優しく澄んだ声。
少し短くなった髪。
陽に照らされて優しく煌めく瞳。
「おはよう」
そのまま二人で昇降口に行った。
上靴に履き替える。
唯川が待っている。
二人で階段を上る。
別の教室に分かれる直前。
「あ、唯川、昼休み、屋上で待ち合わせ、いいかな」
ぎこちなく言ってしまう。
「うん、行く」
そう言って、唯川がクラスに行く。
その後姿を見ていた。
「いぶき、やっぱり好きなんだな唯川のこと」
前田がいつの間にか近くにいる。
「だったらなんなんだよ」
「もう隠さないんだな」
堂々と言うつもりも、こそこそ隠すつもりもない。
ただ、一緒にいたい。それだけだ。
***
寒い。
一月の風が身に染みる。
でも心は燃えている。
待っている。
唯川と二人になれる瞬間を。
暫くすると足音が聞こえてきた。
唯川が来た。
胸に熱いものが込み上げてくる。
「来たよ」
「うん」
唯川が隣にくる。
「寒いよね」
「うん。でも大丈夫」
暫く沈黙が続いた。
話すことが浮かばなくて困っていた。
会いたいだけで何もそれ以上考えてなかった。
「いぶきの歌また聴きたい」
突然唯川がいいだした。
「え?」
「すごくよかった」
唯川に褒められて嬉しくてたまらなかった。
「ありがとう」
「次はピアノで弾き語りして欲しいな」
目が合う。
「わかったよ。自信ないけど」
「楽しみ」
「ちなみにどんな曲がいい?」
「えーとね……」
唯川がスマホで見せてきた曲は、たまにテレビで聴く有名な昔の邦楽だった。
切ないバラード。
でも希望がある優しい曲。
愛する人の幸せを願う歌。
でも
「これ女性アーティストだよね」
「うん」
「音程が……」
「音程を変えればできるよ」
楽譜がないと弾けない。
でも願いを叶えたい。
でもまだ実力がない。
「はぁ」
「いぶきどうしたの?」
空を見上げる。
唯川と並びたい。
同じ場所に立ちたい。
また一緒に音楽を奏でたい。
「俺、頑張る」
「あ、別に今すぐ聴きたいとかじゃないから、いつか聴けたらで」
「いや、そうじゃない」
「え?」
唯川がやや困っている。
唯川の手を優しく握った。
細い指先。
柔らかくて暖かい。
冷たい風に吹きつけられながらも、俺たちはずっと屋上にいた。
***
昼休みが終わり、教室に戻った。
席に着く。
頭の中で、あの曲のメロディが流れ続けている。
スマホを取り出した。
イヤホンをつけて、もう一度曲を聴く。
優しいメロディ。
切ない歌詞。
サビに入る。
声が高くなる。
小さく口ずさんでみた。
声が裏返りそうになる。
「……無理だ」
でも諦めたくない。
どうすれば。
──そうだ。
音楽の先生なら、何か方法を知ってるかもしれない。
チャイムが鳴った。
次の授業が始まる。
新年初の学校。
澄んだ冬の空、澄んだ空気。
一度リセットされたような世界。
でも同じように続く日常。
息が白く空中に溶ける。
分厚いコートを着て校門まで歩いていると、声がする。
「いぶきあけおめ~」
前田だった。
「唯川と年越しした?」
またからかってくる。
「……うるさい」
「あ、唯川来た!」
前田の言葉に驚いて振り返ると、少し離れた場所から唯川が見えた。
クリスマス以来会っていなかった。
話したい。
「いぶき、行けよ」
前田に押される。
「いや、でも」
「いや、行け」
思い切り唯川の方に押し出された。
唯川の目の前に飛び出してしまった。
二人で立ちすくんでいた。
「……おはよう、いぶき」
電話越しじゃない、唯川の優しく澄んだ声。
少し短くなった髪。
陽に照らされて優しく煌めく瞳。
「おはよう」
そのまま二人で昇降口に行った。
上靴に履き替える。
唯川が待っている。
二人で階段を上る。
別の教室に分かれる直前。
「あ、唯川、昼休み、屋上で待ち合わせ、いいかな」
ぎこちなく言ってしまう。
「うん、行く」
そう言って、唯川がクラスに行く。
その後姿を見ていた。
「いぶき、やっぱり好きなんだな唯川のこと」
前田がいつの間にか近くにいる。
「だったらなんなんだよ」
「もう隠さないんだな」
堂々と言うつもりも、こそこそ隠すつもりもない。
ただ、一緒にいたい。それだけだ。
***
寒い。
一月の風が身に染みる。
でも心は燃えている。
待っている。
唯川と二人になれる瞬間を。
暫くすると足音が聞こえてきた。
唯川が来た。
胸に熱いものが込み上げてくる。
「来たよ」
「うん」
唯川が隣にくる。
「寒いよね」
「うん。でも大丈夫」
暫く沈黙が続いた。
話すことが浮かばなくて困っていた。
会いたいだけで何もそれ以上考えてなかった。
「いぶきの歌また聴きたい」
突然唯川がいいだした。
「え?」
「すごくよかった」
唯川に褒められて嬉しくてたまらなかった。
「ありがとう」
「次はピアノで弾き語りして欲しいな」
目が合う。
「わかったよ。自信ないけど」
「楽しみ」
「ちなみにどんな曲がいい?」
「えーとね……」
唯川がスマホで見せてきた曲は、たまにテレビで聴く有名な昔の邦楽だった。
切ないバラード。
でも希望がある優しい曲。
愛する人の幸せを願う歌。
でも
「これ女性アーティストだよね」
「うん」
「音程が……」
「音程を変えればできるよ」
楽譜がないと弾けない。
でも願いを叶えたい。
でもまだ実力がない。
「はぁ」
「いぶきどうしたの?」
空を見上げる。
唯川と並びたい。
同じ場所に立ちたい。
また一緒に音楽を奏でたい。
「俺、頑張る」
「あ、別に今すぐ聴きたいとかじゃないから、いつか聴けたらで」
「いや、そうじゃない」
「え?」
唯川がやや困っている。
唯川の手を優しく握った。
細い指先。
柔らかくて暖かい。
冷たい風に吹きつけられながらも、俺たちはずっと屋上にいた。
***
昼休みが終わり、教室に戻った。
席に着く。
頭の中で、あの曲のメロディが流れ続けている。
スマホを取り出した。
イヤホンをつけて、もう一度曲を聴く。
優しいメロディ。
切ない歌詞。
サビに入る。
声が高くなる。
小さく口ずさんでみた。
声が裏返りそうになる。
「……無理だ」
でも諦めたくない。
どうすれば。
──そうだ。
音楽の先生なら、何か方法を知ってるかもしれない。
チャイムが鳴った。
次の授業が始まる。
0
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
猫と王子と恋ちぐら
真霜ナオ
BL
高校一年生の橙(かぶち)は、とある理由から過呼吸になることを防ぐために、無音のヘッドホンを装着して過ごしていた。
ある時、電車内で音漏れ警察と呼ばれる中年男性に絡まれた橙は、過呼吸を起こしてしまう。
パニック状態の橙を助けてくれたのは、クラスで王子と呼ばれている千蔵(ちくら)だった。
『そうやっておまえが俺を甘やかしたりするから』
小さな秘密を持つ黒髪王子×過呼吸持ち金髪の高校生BLです。
俺の幼馴染が陽キャのくせに重すぎる!
佐倉海斗
BL
十七歳の高校三年生の春、少年、葉山葵は恋をしていた。
相手は幼馴染の杉田律だ。
……この恋は障害が多すぎる。
律は高校で一番の人気者だった。その為、今日も律の周りには大勢の生徒が集まっている。人見知りで人混みが苦手な葵は、幼馴染だからとその中に入っていくことができず、友人二人と昨日見たばかりのアニメの話で盛り上がっていた。
※三人称の全年齢BLです※
こじらせ委員長と省エネ男子
みずしま
BL
イケメン男子の目覚まし担当になりました……!?
高校一年生の俺、宮下響はワケあって一人暮らし中。隣に住んでいるのは、同じクラスの玖堂碧斗だ。遅刻を繰り返す彼の目覚まし係になるよう、担任から任命され……。
省エネ男子(攻め)と、ちょっとひねくれた委員長(受け)によるわちゃわちゃ青春BL!
宮下響(みやしたひびき)
外面の良い委員長。モブ顔。褒められたい願望あり。
玖堂碧斗(くどうあおと)
常に省エネモードで生活中。気だるげな美形男子。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
雪色のラブレター
hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。
そばにいられればいい。
想いは口にすることなく消えるはずだった。
高校卒業まであと三か月。
幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。
そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。
そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。
翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。
不器用に惹かれる
タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。
といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。
それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。
怖い。それでも友達が欲しい……。
どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。
文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。
一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。
それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。
にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。
そうして夜宮を知れば知るほどーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる