夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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新しい二人

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 前奏が始まった瞬間、唯川は驚いて目を見開いた。

 Aメロを歌う。

 何度も何度も練習して、歌詞を見なくても、楽譜を見なくても弾けるようになった。
 何度も練習しているうちに、歌詞の意味をだんだんと理解した。

 想いを歌に乗せる。
 歌を音楽に乗せる。

 唯川にはどう聞こえているだろうか。
 ちゃんと歌えているだろうか。
 ちゃんと響いているだろうか。

 ただ、今自分にできる精一杯を唯川に届ける。
 最後の一音まで。

 静かな音楽室に二人きり。

 俺は、最後まで一曲を全身全霊で奏でた。

 ゆっくりとアウトロを弾き終えた。

 曲が終わって暫くすると、唯川が拍手をした。

「いぶき、すごい、美しかった」
「美しい?」
「うん、旋律も、歌声も、美しかった。素晴らしかった」

 唯川が俺の手を握る。

「ありがとう」

 唯川の笑顔を見て安堵した。
 やっとこの時を迎えられた。

 俺は力を振り絞って立ち上がった。

「唯川」
「うん」

 唯川をじっと見る。
 向かい合う。

「…俺の恋人になってほしい」

 ずっと言うつもりでいた。
 前から。

 いざ言うと、とても恥ずかしかった。
 唯川を見ると、嬉しそうだった。

「うん。俺もいぶきの恋人になりたい」

 二人でしばらく見つめ合った。

 そのあと、耐えきれずに二人で笑った。

 これを言うまでに、何日かかったのか。
 たったこれだけのことを。
 でも、俺はこれを言うにはここまで頑張らなきゃ無理だった。

「唯川、今日迎えに来てもらえるの?」
「いや、ここまで積もるとさすがにもう無理かも」
「じゃあそろそろ帰ろうか」
「うん」

 そのあと、二人で足早に学校を出た。

 次は唯川に弾き語りを披露してもらう約束を交わした。

 それが楽しみで仕方なかった。

 俺たちの形がまた新しいものに変わった気がした。
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