秘密の館の主に囚われて 〜彼は姉の婚約者〜

七転び八起き

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秘密

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暫く経つと、部屋のドアがまた開いた。

さっきの男が水を持ってきた。

「ありがとうございます……」

私は差し出された水をゆっくり飲んだ。

水を飲んで暫くすると、だんだんと意識がハッキリしてきた。

私はいつの間にか仮面が外れていた。

彼の方を見ると、彼も仮面をしてなかった。

その顔は、数日前に家の屋敷で見たあの──

姉の婚約者のカウリス様だった。

驚き過ぎて言葉を失った。

「ユミリア。君がここに現れるとは思わなかったよ」

カウリス様は怪しげな笑みを浮かべている。

この前屋敷で見た彼とはまるで別人だ。

「……なんでここに」

「ここは俺の屋敷だよ」

「え?」

カウリス様は立ち上がって窓の外を眺めた。

「俺がこの屋敷の持ち主。そして、この仮面舞踏会を開いている」

驚きの連続だった。

カウリス様は公爵家の人間。

品行方正な方だと思っていた。

「意外です……」

私は怖くなった。

これを知ったらうちの家族はどう思うのだろう。

「ユミリア、もちろんわかってるよね」

カウリス様が近づいてきた。

「絶対誰にも言ってはいけないよ」

優しく怪しく私に釘を刺す。

「はい」

「君もここにいたことを誰かに知られたくないだろう」

知られたら、ソフィアの信用が落ちるし、ソフィアが来ていたこともわかってしまう。

「はい」

──もうここから出よう。

一言ソフィアに言わないと……。

私が立ちあがろうとすると、ドアの前をカウリス様が塞いだ。

「ユミリア、君と二人になりたかった」

カウリス様の言葉に動揺する。

「それはどういう意味でしょうか」

「俺はね、ずっと君に興味があったんだよ」

ずっと?

「カウリス様とはこの前会ったばかりですが」

「いや、もっと前。君が…君たちグランヴィル家の人間が我がルーンハルト家の社交界に来た時だよ」

それは確か一年くらい前だったはず。

「ここに来てくれて嬉しい」

その言葉にどう答えればいいかわからなかった。

「君はずっと姉の陰に隠れて生きてきた」

カウリス様とだんだん距離が近づいてくる。

「俺は君をもっと知りたい」

カウリス様と距離がなくなっていく。

その時、カウリス様の腕の中に私はいた。

いけない、これは。

「カウリス様やめてください!」

私が突き放そうとしても、びくともしない。

私の頬に手を添えている。

「君はとても魅力的だ。今まで見た誰よりも。だから欲しい。全てを」

背筋が凍った。

私は全身で彼を拒絶した。

そしたら彼はすぐに手を離した。

「やり過ぎた。すまない」

口では謝っているけど、目は全く変わっていない。

私がカウリス様の部屋を出て廊下を足早に歩いていると、カウリス様が私を呼び止めた。

「仮面を忘れているよ」

彼が少し笑う。

私は急いで戻って仮面を受け取った。

それを付けて、急いでソフィアの元に行った。

───

一階に戻ると、ソフィアと男の人がバルコニーで寄り添っていた。

声をかけにくい。

──だけど

、私そろそろ帰ろうと思うの」

ソフィアが振り返る。

「もうそんな時間なの?」

「いえ……ちょっと具合が悪くなってしまって」

「まぁ、それは大変だわ!」

ソフィアが立ち上がる。

ソフィアが男性の方を向いた。

「また、もし会えたらお話ししましょう」

彼は頷いた。

「また会おう」

二人は名残惜しそうに離れた。

「ソフィア、ごめんなさい」

「いいの。これで十分。だって、またこの夜会はあるでしょう?また来ればいいのよ」

ソフィアは穏やかな顔をしていた。

そのあと、屋敷を出て馬車に乗った。

そして、二人でだんだん遠ざかる屋敷を眺めていた。

その時、二階のあの部屋の窓が開いていた。

そこにカウリス様の姿があった。

こちらをずっと見ている。

「ユミリアはどうだった?今日」

「……素敵な時間だった」

「よかった。また来ましょう」

もう二度とあの人に会ってはいけない。

ここにも来てはいけない。

でも──

あの人は姉の婚約者。

嫌でもまた会うことになる。

これからの未来に暗雲がたちこめていた。
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