秘密の館の主に囚われて 〜彼は姉の婚約者〜

七転び八起き

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縁談相手

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 カウリス様と姉の結婚の日がどんどん迫ってきていた。

 今日は式用のドレスの寸法を測りに仕立て屋が来ていた。

 ドレスのデザインをいくつか紹介するために、姉の部屋に沢山のドレスが運ばれていた。

「どれもとても素敵……」

 姉は鏡をみながらうっとりしていた。

 カウリス様と姉の結婚式に私は嫌でも参加しないといけない。
 でも、それを見たら気持ちに折り合いがつくかもしれない。
 むしろこれでいい。

 私は庭にでて、パーゴラの椅子に座って手芸をしていた。
 布に薔薇の模様を縫い付けていた。
 手芸をしている時が、一番心が安らぐ。

 すると、馬車が来た。

 カウリス様だ。

 私はそのまま背を向けて、続けていた。

 姉が屋敷から出て来た。

「カウリス様!お待ちしておりましたわ!素敵なドレスがたくさんあって決められません。カウリス様も見てください」

「是非、レベッカ様の美しいお姿を拝見したい」

 カウリス様の作り笑顔が見えなくてもわかる。

 しばらく会いたくなかったのに、切っても切れぬ縁。
 もどかしかった。

 姉が屋敷の中に戻った。

「ユミリア」

 背後から声が聞こえた。

 そっと肩に手を置かれた。

「逃げても無駄だ」

 わかっている。私がここに居る限り、カウリス様からは逃げられない。

「誰かに見られたら大変です。私から離れてください」

 カウリス様の指が首筋をなぞった。
 意図せず声が漏れてしまった。

「ユミリアを見ると、どうしようもなく触れたくなる。苦しいくらいに」

 その声が少し震えていた。

 カウリス様はその場を去った。

 体に熱が宿った。
 きっと私もそう。
 だけど、だめだ。絶対に。

 私はただ、薔薇の花を刺しゅうしていた。
 そして頃合いを見計らって部屋に戻った。

 ◇ ◇ ◇

 それから数日後、私は父と大聖堂のミサに来ていた。

 姉はカウリス様と出かけている。

 静かな空間が私の心のざわめきを落ち着かせる。

 ミサが終わった後、外に出て父と歩いていると、声をかけられた。

「グランヴィル伯爵」

 振り返るとそこには、父と同じくらいの年の紳士が立っていた。
 そしてそのすぐ後ろに、背が高く、端正な顔立ちの青年がいた。
 私のことを見つめている。

「エルバート様!奇遇ですね。早くお会いしたいと思っておりました」

 ──エルバート

 確か、縁談の話があった王都銀行の経営者。
 もしかして、この青年が……。

「こちらが息子のウィリアムです」

 彼がお辞儀をした。

「とても立派なご令息ですね!ユミリアにはもったいない……」

 父は私をなんだと思っているのか。
 姉に比べて地味なのは確かだけど。

「いえ、落ち着いていて、妻にするのにふさわしいご令嬢様です。是非いまから屋敷にいらしてください」

 私と父はエルバート家に行くことになった。

 馬車に乗っている道中、父たちはずっと話していた。

 私は目のやり場がなく、外の景色を見ていた。

「ユミリア様」

 静かな声でウィリアム様が呟いた。

「あなたと早く会いたかった。今日お会いできて嬉しく思っております」

 静かで穏やかな雰囲気。
 甘いマスク。
 ソフィアの言う通り、女性にさぞ慕われているだろう。

 カウリス様といい、なぜ私を目に止めるかさっぱりわからなかった。
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