秘密の館の主に囚われて 〜彼は姉の婚約者〜

七転び八起き

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白い薔薇

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 馬車が屋敷に着く頃には、陽がだいぶ傾いていた。

 エルバート家の屋敷は、とても豪華な作りだった。

 私が馬車から降りようとすると、ウィリアム様が私に手を差し伸べた。

 やや気が引けたが、私は手を借りた。

 屋敷の中に父と導かれた。

 豪華な美術品の数々が並べられている。

 突然の来客に屋敷の下働きの人たちが慌てていた。

「ようこそ、こちらへ」

 エルバート様に導かれた客間で、四人で椅子に座って向かい合った。

「偶然会えてよかったです。ウィリアムがユミリア様に早く会いたいと煩くて」

 ウィリアム様は顔が赤くなった。

「そこまでは言ってません……」

 ウィリアム様が立ち上がった。

「ユミリア様、少し庭を歩きませんか?」

 青いまっすぐな瞳だった。

「はい」

 私も立ち上がってウィリアム様と屋敷から出た。

 その後も、父とエルバート様は談笑していた。

 外は日が沈む瞬間だった。

 夜がやってくる。

「ユミリア様、すみません。父がいると話しづらくて」

「いえ、大丈夫です。お気になさらず」

 私とウィリアム様は薔薇が溢れる庭を歩いていた。

「あの、ユミリア様は薔薇は好きですか?」

 ウィリアム様が躊躇いがちに聞く。

「ええ。薔薇は好きです」

「ではこちらに来てください」

 ウィリアム様に導かれて行った先には、赤い薔薇がたくさん咲く中に、一輪だけ白い薔薇が咲いていた。

「まあ、なぜここだけ白い薔薇が……」

「不思議ですよね。僕も分かりませんが、この白い薔薇が咲いた時、あなたを思い出したのです」

 この人はどうして私に惹かれたのだろう。

「あの、ウィリアム様はなぜ私を……」

 驚いた顔をしてウィリアム様は私を見た。

「それは──前城下町に行った時、貴方を見かけて」

「はい」

「平民の老人が、手から果物を沢山落とした時、周りの貴族の者はそれを無視していました。でも、貴方は人目も憚らず、それを最後まで拾うのを手伝っていました」

 あまり記憶にはなかった。

「それを見た時、僕は胸を打たれたのです。身分を気にせず振る舞う貴方はとても素敵でした」

「そう……ですか」

「僕は見た目や身分など気にせず、優しく接するあなたのような方と結婚したいと思いました」

 たった一度しか私のことを見たことがないのに、結婚まで考えるなんて……。

「ウィリアム様、私はそんな素晴らしい人間じゃありません。それは私の一面に過ぎません」

 だって私は姉の婚約者と──

「あなたに相応しい女ではありません」

 ウィリアム様は驚いている。

「そんな、自分を卑下しないでください。確かにユミリア様のその瞬間しか知りませんが、その一瞬が僕の全てなんです」

 真実を言ったら、この人はどんな顔をするのか。

 言ってしまったら父の顔を潰すことになるから、口が裂けても言えない。

「そうですか。私は貴方のことをよく知りません。噂では聞きますが」

「それはどんな……?」

 ウィリアム様は不安そうな表情をしている。

「街中の女性を虜にしていると」

「え?」

 ウィリアム様は戸惑っている。

 表情がコロコロ変わる。
 見ていて面白かった

「よくわかりませんが……。僕は好きになった方にしか興味はありません」

 白い薔薇の花弁にウィリアム様は優しく触れた。
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