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愛
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屋敷で馬車が停まって、力が抜けた私は暫く動けなかった。
カウリス様の肩に体をもたれかけて、ゆらめく湖を見ていた。
「……ユミリア、立てるか?」
「はい……」
私はゆっくり立ち上がってカウリス様に手を引かれて屋敷の裏口に入った。
今日も仮面舞踏会は開かれている。
カウリス様と二階に上がる。
カウリス様が向かったのは、広間が一望できる場所だった。
「こんなに人が……」
「そうだよ。仮面はしているが、俺は誰だかわかる。でもそれを誰にも言わない。それがここのルールだ。でも──」
カウリス様は、ある女性を眺めていた。
私もその女性を見た時、驚いて言葉が出なかった。
──姉だった。
そんな……カウリス様といる時にあんなに幸せそうだったのに。なんでこんなところに?
「黙っておくべきだと思った。でも知ってほしかった。俺とレベッカははたからみれば、幸せな婚約者同士だ。でもあくまで親の決めた相手。本気で恋に落ちたわけではない」
姉は嬉しそうに仮面の紳士と話している。
「自分が惹かれる相手と恋がしたいのは、普通のことじゃないかな」
それはそうだけど。
「カウリス様は許せるんですか?姉を」
カウリス様は少し笑った。
「許すも何も、俺が婚約者の妹に心がある状況で何も咎められない」
「いいんだよこれで。表では幸せな夫婦、裏では本気の恋」
でも私は……。
そんな割り切って、生きられない。
「私にはできません」
広間から目を背けた。
カウリス様に強く抱きしめられた。
「君の心は今どこにある」
私の心──
わかってる。認めたくない、だけど。嘘もつけない。
「あなたを想ってます」
言うべきじゃない。でも、胸にどうしようもなく押し寄せて溢れてくる感情を止めることができない。
「ユミリア、渡したいものがある」
私はカウリス様の部屋に連れて行かれた。
カウリス様は机の引き出しから何か取り出した。
それを私に差し出した。
懐中時計だった。
「俺だと思って持っていて」
「困ります。受け取れません……」
カウリス様は懐中時計を私の手にしっかり握らせた。
「もう会えなくなるかもしれない」
え──?
「それはどういう──」
「君が誰かと結婚したあと、どうなるかわからないだろう」
カウリス様は苦しそうな顔をしている。
「心は自由でも、俺たちは本当の夫婦にはなれないのだから」
涙が溢れた。
カウリス様が私の手の甲にキスをする。
「三日後。レベッカと祝言がある」
手を強く握られた。
「その前に君に愛を誓いたかった」
どう返事をすればいいかわからない。
ただ、私は今は嘘をつきたくなかった。
「わかりました。あなたのお気持ち、受け取りました」
私はカウリス様の頬に触れた。
カウリス様と目が合う。
「愛してます。どうか、お幸せに……」
愛なんて知らない。
恋をしてるのはわかってた。
ただ、認めたくなかった。
でも、私はこの時、愛という言葉がでてきた。
カウリス様は私の体でなく、心が離れないようにしているのかもしれない──
繋がったのは体だけじゃなかった。
心がないなら本気で抵抗できた。
わかってしまった。
カウリス様とあの日目が合った瞬間に私は落ちていたんだと。
私達はきつく抱きしめ合った。
この時、初めて心からこの人への気持ちを認められた。
初めて、こんなに胸が締め付けられて、苦しくて愛しくて、涙が出た。
なんでたった数回しか会っていないのに。
わからない。
ただ、それが紛れもない事実だった。
カウリス様の肩に体をもたれかけて、ゆらめく湖を見ていた。
「……ユミリア、立てるか?」
「はい……」
私はゆっくり立ち上がってカウリス様に手を引かれて屋敷の裏口に入った。
今日も仮面舞踏会は開かれている。
カウリス様と二階に上がる。
カウリス様が向かったのは、広間が一望できる場所だった。
「こんなに人が……」
「そうだよ。仮面はしているが、俺は誰だかわかる。でもそれを誰にも言わない。それがここのルールだ。でも──」
カウリス様は、ある女性を眺めていた。
私もその女性を見た時、驚いて言葉が出なかった。
──姉だった。
そんな……カウリス様といる時にあんなに幸せそうだったのに。なんでこんなところに?
「黙っておくべきだと思った。でも知ってほしかった。俺とレベッカははたからみれば、幸せな婚約者同士だ。でもあくまで親の決めた相手。本気で恋に落ちたわけではない」
姉は嬉しそうに仮面の紳士と話している。
「自分が惹かれる相手と恋がしたいのは、普通のことじゃないかな」
それはそうだけど。
「カウリス様は許せるんですか?姉を」
カウリス様は少し笑った。
「許すも何も、俺が婚約者の妹に心がある状況で何も咎められない」
「いいんだよこれで。表では幸せな夫婦、裏では本気の恋」
でも私は……。
そんな割り切って、生きられない。
「私にはできません」
広間から目を背けた。
カウリス様に強く抱きしめられた。
「君の心は今どこにある」
私の心──
わかってる。認めたくない、だけど。嘘もつけない。
「あなたを想ってます」
言うべきじゃない。でも、胸にどうしようもなく押し寄せて溢れてくる感情を止めることができない。
「ユミリア、渡したいものがある」
私はカウリス様の部屋に連れて行かれた。
カウリス様は机の引き出しから何か取り出した。
それを私に差し出した。
懐中時計だった。
「俺だと思って持っていて」
「困ります。受け取れません……」
カウリス様は懐中時計を私の手にしっかり握らせた。
「もう会えなくなるかもしれない」
え──?
「それはどういう──」
「君が誰かと結婚したあと、どうなるかわからないだろう」
カウリス様は苦しそうな顔をしている。
「心は自由でも、俺たちは本当の夫婦にはなれないのだから」
涙が溢れた。
カウリス様が私の手の甲にキスをする。
「三日後。レベッカと祝言がある」
手を強く握られた。
「その前に君に愛を誓いたかった」
どう返事をすればいいかわからない。
ただ、私は今は嘘をつきたくなかった。
「わかりました。あなたのお気持ち、受け取りました」
私はカウリス様の頬に触れた。
カウリス様と目が合う。
「愛してます。どうか、お幸せに……」
愛なんて知らない。
恋をしてるのはわかってた。
ただ、認めたくなかった。
でも、私はこの時、愛という言葉がでてきた。
カウリス様は私の体でなく、心が離れないようにしているのかもしれない──
繋がったのは体だけじゃなかった。
心がないなら本気で抵抗できた。
わかってしまった。
カウリス様とあの日目が合った瞬間に私は落ちていたんだと。
私達はきつく抱きしめ合った。
この時、初めて心からこの人への気持ちを認められた。
初めて、こんなに胸が締め付けられて、苦しくて愛しくて、涙が出た。
なんでたった数回しか会っていないのに。
わからない。
ただ、それが紛れもない事実だった。
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