世界最強だけど我が道を行く！！

３章 ルルの故郷と恋〜主人公無双が止まらない〜

５１.極悪商人ピエール

人知れず俺が強い使命に気づいたその頃、ケルビラでも重大な事件が起こっていた。

それはラウトとルルが盗賊達の処理をしているのと同時刻のことだった。

ケルビラに残って冒険者の活動をしている穂花と暎斗はギルドでクエストを探していた。

ラウトとルルがいないことで、屋敷の掃除やなんやらで昼過ぎになったため、ギルドはかなりガランとしていた。

そんな中、穂花と暎斗は依頼掲示板の前で見知らぬ冒険者のグループが話しているのを偶然聞いた。


「おい、聞いたか？この街にピエールが来るって噂だぞ！」


「おい、マジか、、、この街も流石にヤバいんじゃないか？」


「チッ、結構ここのギルド気に入ってたのによー。これは移動先を考えておかねぇとだな」


「一応、今の内に預けてる金を引き出しとくか・・・」


穂花と暎斗はその会話のただならぬ雰囲気で、何か良くないことがあるのは分かったが、具体的な情報は得られなかった。

しかしその夜、会話に出てきたピエールという人物について知ることになった。


ピエールというのは商人らしい。
とは言え、ただの商人ではなく国家と同等の資産を抱える超がつく程の大商人なのだとか。

それだけなら何の問題もなかったのだが、ピエールは大商人としてよりも、極悪人として名が広まっているのだ。

ピエールは自身の莫大な資産を盾に、村や集落、時には街までも自分の支配下に置き、その街の経済を完全に掌握した。

街で売られるものの価格は、全てピエールが管理し、住人の不利益など構いもせず、街からお金を吸い上げるように自分のものにして、街が枯れるまで居座り、使えないと判断すると次の街へと標的を変えた。

そんな非道をもちろん国家とて許しているわけではない。
しかし、ピエールの持つ資産を後ろ盾にされると国家も動くに動けなかった。

何せ、ピエールのたった一言で都市の経済を破綻させるだけの財力を備えているからだ。


そして、その極悪非道な商人がこの街にやって来るという話をギルドで聞いてしまった穂花と暎斗は、危機感に潰されそうになった。


「穂花、どうする？今すぐに来るって事はないだろうけど、噂になってるって事はそう遠くないうちに来そうだぞ」


「うん、まずはもう少し情報を集めようよ。もしダメそうでもラウトが帰ってくればきっと何とかしてくれるから、それまでは何としても耐えきろう」


「そうだな」


この時の２人の判断が、この街の運命を左右することになる。