上 下
17 / 26
2章 幼女な神様と2人旅

16.拾いもんが増えたんだが

しおりを挟む
「つまんねぇな……」


オレは変わり映えの無い草原の景色を眺めながら呟く。
スヴィエートが寝ているので、ひとりで歩いているのと何も変わらない。

街を出てから4時間ほど歩いたが、ずっとスヴィエートは寝続けている。
途中、2回くらい水を飲むために片腕を離したりしたが、器用にバランスを保っていた。


「そろそろ森が見えてくるはずなんだが……」


オレは地図を確認しながら道の先に視線を向ける。
すると、地平線に木のようなものが見えた。


「あれか、まだ遠いな……ん?」


森までの道のりを何となく眺めていると、草原の上を動いている物があった。

魔物かと思い警戒したが、それにしては小さい。
たぶん動物か、魔物だとしても子供だろう。

何だろうと思って近づくと、黒い生き物だと分かる。

さらに近づいていくと、どうやらウルフの子供らしい。
最初は汚れているのかと思ったが、よく見ると黒い毛のウルフだった。

普通、ウルフは白い毛であることが多いので、黒いウルフは珍しい。

ウルフはこちらを警戒しているのか、グルルと唸る。
しかし、姿と相まって唸り声も迫力に欠ける。


「こいつの親は居ないのか?」


周りを見ても、他のウルフの姿はない。
迷子だろうか。

オレに敵対心がないのが伝わったのか、ウルフは唸るのをやめ、首を傾げる。

エサでも与えるべきか?
それとも無視するのがいいのか……。

どうするのが正解なのか分からない。

そんな風に考えていると、腕に抱えていたスヴィエートが目を覚ました。


「よく寝たのだ……。ん?何故、立ち止まってるのだ?」


ちょうど良い。
スヴィエートに聞いてみたら何かアイデアが出るかもしれない。


「ウルフを見つけたんだが、どうしようか迷ってたんだ」


「ウ、ウルフだと!?そんなものすぐ倒すのだ!」


スヴィエートは、ウルフと聞いた瞬間に体を震わせて言う。
強く抱きついてくるので、かなり苦しい。


「離せ!相手は子供だ。襲ってはこない。どうやら迷子らしいぞ」


オレはスヴィエートを引き剥がすと、前を向かせてウルフを見せてやる。


「おお、小さくて可愛いのだ!」


「そいつをどうするか決めかねてたんだ……。と言うか、何してんだ?」


スヴィエートは、ウルフと見つめ合って動かない。
しばらくして、スヴィエートはオレに向き直る。


「ふむ、群れから追い出されたらしいぞ。たぶん毛が黒いのが原因なのだ」


「お前の読心術は魔物にも使えるのか!?」


「我は神様だからな」


自慢げに言うが、確かに凄い。素直に感心した。

スヴィエートは既にウルフと心を通わせたのか、そばに近寄って顎のあたりを撫でていた。
ウルフの方も気持ち良さそうに目を細めている。

それにしても、追い出されたとすると、群れのもとに送り届けたところで意味がないだろう。

それならいっそ、連れていくのも手かもしれない。
これだけ懐いていれば、それも難しくないだろう。


「そのウルフをペットとして連れて行くか?」


オレがそう提案するとスヴィエートは勢いよく頷く。


「うむ!こやつも群れには戻りたくないと言っているし、そうするのだッ!」


オレ達の言葉を理解したのか、ウルフもワフゥッ!と鳴き声をあげた。


「名前はつけるか?」


「当たり前なのだ!もう決めてるぞ!」


「何にするんだ?」


「ナイトなのだ!」


「黒いからナイトか……まあ良いじゃないか」


「うむ。ナイト、しっかり我を守るのだぞ!」


スヴィエートはそう言いながらナイトを頭の上に乗せる。


「まさか、守る方のナイトなのか!?」


てっきり夜の方から取ったのだとばかり思っていたんだが。

それにしても、ナイトは想像以上にスヴィエートの頭の上が気に入ったらしい。
足をダラっと伸ばしてくつろいでいる。

スヴィエートは少し邪魔そうにするが、ナイトはここが定位置だと言わんばかりに動かない。
スヴィエートは観念して、頭の上を明け渡すのだった。
しおりを挟む

処理中です...