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第4話 冒険者になりたいと思います。

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木の扉だ。うわっ思ったより重い。うわー天井高い。装飾もすごいし、世界遺産みたい。でも人はあんまり居ないな。昼間だからかな。中に居る冒険者らしき人は壁に張ってある紙を見ながら何か話し合ってるみたい。おそらく左右の壁には依頼が貼ってあるのかな。見やすいように壁の上の部分に”A”とか”B”とかランク?が大きく書かれてる。とりあえず冒険者登録するならカウンターだよね。正面がカウンターかな。郵便局とか銀行の窓口みたい。

「すみません。冒険者登録したいのですが。」
「はい。少々お待ちください。」
まじめで優秀そうな青年だな。theエリートって感じ。にしてもここにはイケメンしかいないのか?
「お待たせしました。こちらの書類にご記入をお願いします。そちらのテーブルにペンがございますのでそちらをご使用ください。書き終わりましたらまたお持ちください。」
「はい。ありがとうございます。」

テーブルにペンがあるって言ってたけど、ペンって羽ペンか。インクに付けて書くんだよね。どれくらい浸ければ良いんだろ。先っぽの方に付ければいいかな。
えっと、何を書けば良いんだ。名前は、サトで、HPとMPか。これは本当のやつは書かない方が良さそうだけど、嘘発見器とかあったら…いや、でもさっき少年が自己申告って言ってたしそれはないか。逆に今の数値書いたらそれこそ嘘だと思われそう。とりあえずHPは400で、MPが200ってとこかな。平均より100くらい低くしとけば大丈夫でしょう。で、あとは、所属希望ギルドか。ギルドってどういうシステムなんだろ。それにどんなギルドがあるかわからないからここは空欄でいいかな。ってそんなもんか。簡単だな。そういえばスキル書くとこはないのか。本当におまけみたいなもんなのかな。

「すみません。これよろしくお願いします。」
「はい。お預かりします。冒険者試験はいつにしますか。」
やっぱり試験ってあるんだ。
「冒険者試験って何をするのでしょうか。」
「そうですね。簡単に言ってしまえば基礎力を計る試験になります。体力、魔法、戦術、精神、支援をそれぞれ実技で判定します。それらの平均が合格点以上であれば冒険者として認定されます。」
「なるほど。いつ開催していますか。」
「月曜、水曜、金曜の午後一番で開催しています。本日はもう開催してしまいましたので、最短で明後日水曜になります。」
こっちにも曜日ってあるんだ。明後日か。とりあえず、今日、明日で国の外に出て力を試してみるのはちょうど良いかも。
「では水曜日でお願いします。」
「かしこまりました。ではこちら控えになりますので当日こちらにお持ちください。また、試験料として、銀貨5枚をご用意ください。」
やっぱりお金いるのか。銀貨5枚っていくらくらいなんだろ。
素材を集めて売るとして、何をどれくらい集めたらいいのか基準だけでも聞いておこう。
「すみません、一つ質問してもよろしいですか?」
「はい。どうぞ。」
「私、この国に来て間もないもので、お金の知識が乏しくてですね。ここは、倒した魔物などを買い取ってもらえると聞いたのですが、どれくらい素材があれば銀貨5枚になるでしょうか。」
「そうでしたか。では少々お待ちください。」
「はい。」
何だろ紙に何か書き始めたけど。
「お待たせしました。簡単にこの国の通貨を説明させていただきます。こちらをご覧ください」

金貨1枚 ⇔ 小金貨10枚
小金貨1枚 ⇔ 銀貨10枚
銀貨1枚 ⇔ 銅貨10枚

思ったよりシンプルで分かりやすい。
「大体銅貨2枚で市場の屋台軽食が、銀貨3枚で宿に一泊できます。」
「なるほど。」
「そうですね。銀貨5枚となると、素材のランクや状態にもよりますが初心者向けですと、E、Fランクの魔物から取得できる素材や、薬草になりますので、例えばFランクの”ロングイヤーラビット”という魔物からとれる素材ですと、最低でも50匹ほど倒す必要があります。」
ロングイヤーラビット。耳が長いウサギってことかな?それにしても50匹ってけっこう倒さないといけないんだな…それに素材ってことは魔物の解体とかしないといけないのか。思ったより稼ぐのって大変そう。
「また、比較的採りやすい薬草ですと大体10本で銅貨1枚ほどになります。」
うーん。そっちも大変そう。今日泊まる分のお金も必要だし、ちょっと街を観光してからって思ったけど、すぐに素材集めにいった方が良さそうだな。
「ありがとうございました。あ、あとここは何時くらいまで素材を買い取っていただけますか?」
「基本的には日没までになります。ただ、暗くなってどうしてもご自身で持ちきれなかったり、保存が難しいものでしたら、手数料を多く頂くことになりますが買い取ることは可能です。」
日没までか。後3、4時間くらいかな?急がないと。
「なるほど。ありがとうございます。」
「いえ。お役に立てて光栄です。お気をつけて。」
仕事とはいえ、すごく丁寧で親切な人だったな。

えっと、グランドギルド本部を出てきたはいいけど、どこから国の外に出られるんだろう。あーさっきの受付のお兄さんに聞けばよかった。周りに歩いてる人いないし、ここは勘で行くか…いや、時間はあまり無駄にしたくないな。でも、戻って聞くのも…
「サトさん。お困りですか?」
え?後ろから話しかけられた。しかも私の名前知ってる人って…
「あ、さっきの受付のお兄さん」
「リアムと言います。」
「あっすみません。リアムさん。でもどうしてここに?休憩ですか?」
「そうですね、サトさんの事が心配で様子を見に来てしまいました。」
え、そんなにストレートに言う?鼓動がどんどんうるさくなってる。いや、これはからかわれてるだけ。うん。そう。落ち着け。私。
「もしかしてからかってます?」
「僕がそういう人間に見えますか?」
「うーん…」
表情は真剣だけど…常識的に考えてあり得ないというか…
「僕の顔に何か付いてます?」
え?あっ、つい顔をまじまじと見てた。あ、どうしよう。恥ずかしい。リアムさん、すごく微笑んでるし、そんな顔で見られたらやっと落ちついてきてた鼓動がまたうるさくなっちゃう。
「あっすみません。本気で考えちゃってました」
「サトさんは面白い方ですね。一緒に居られたら飽きなそうだ。」
飽きなそうってなんか最後の方不敵な笑みだったけど、そっちが本心?
「え…」
「いえ。先ほど、この国の来たばかりだと仰っていたので、色々案内出来たらなと思ったのですが、まだ早かったみたいですね。」
「あっそういうわけでは…」
機嫌損ねちゃったかな?
「では、本日はこれを。」
ん、これって…
「この国の地図ですか?」
「その通りです。まだ土地勘がないでしょうから、是非お使いください。」
「ありがとうございます。ちょうど道を悩んでいたもので…すごく嬉しいです。」
「それはちょうどよかったです。ちなみにどこに行こうと思っていたのですか?」
「素材を集めに行こうかと。」
「なるほど。それでしたら今いるグランドギルド本部の少し奥にある南門から、出ると比較的安全ですし、いい素材が集まると思いますよ。」
「はい、そうします。ありがとうございます。」
「いえ、では僕はこれで。」
本当にいい人だな。ま、発言にはびっくりしたけど。それともこっちの人はみんなそういう感じなのかな?
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