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第8段階

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「さて、ユナ。説明してもらえる?」

私は今、非常に非常にピンチである。なぜかって?想像すれば、察しがつくよね……はぁ……話しは少し前に戻る。

悪運が強いであろう私の『お仕置き』が決まり……青ざめて、思考停止しているなか、暗殺者は警備に付きだされたらしい。私はというと……いつの間にか、どっかのソファー?に座らされていた。
「こんな部屋あったっけ?」
……というのが最初の私の第一声。
「……てかなんでソファー?ん?どういう状況?私……いつの間に移動したの?」
というのも、見覚えのない部屋にお父様、アレン、警察?らしき人たちが勢ぞろいしていたので。私は再び思考停止したのである。
「ユナ、そろそろ起きようか?」
「……はい」
悪魔の微笑み+囁きの再来。今度の標的は私みたい。アレンはにっこり笑う。
「さて、ユナ。説明してもらえる?」

という感じで……今に至る。
「せ……説明?なんのことかな~……なんて。」
私は無邪気な笑顔で返す。なんとか見逃してくれることを願って。
「そっか~ユナ」
「な……なぁに?アレン」
勘違いでしょ?ね?そうだよね。
「……どんなお仕置きがいい?」
……あ~ダメだこりゃ。私はある言葉を思い出す。『一難去ってまた一難』とはまさにこのことである。
「ユナ……話しなさい。諦めが肝心だ」
「……」
ねぇ、お父様?私が『やらかした』ことは、もう決定してるわけ?私、娘なんですけど。この隣にいる『悪魔』から守ってくれたりしないんですかね?
「……だから、きっと勘違いだと……」
「じゃあ、ユナ?その君が腰に下げてるバッグ。会ったときより膨らんでるけど……中身を見せてもらっても?」
「え?あ……」
顔から血の気がひくのを感じる。アレンはにっこりと笑い、私の『コレクションの入ったバッグ』を指差していた。ダメに決まってるけど……最後の足掻きに出る。そう、それが私だ。
「こ……これ?嫌だな~コレクションだよ。さっき拾ったの」
『コレクション』。そう、コレクションなのだ。どんなコレクションかは言わない方がいいだろう。自爆するのはごめんだ。
「どこで?」
どこで?それは……
「湖の近く?だった気がするけど……ん?湖?あ。」
私……今、自爆した?え、湖?の近く。暗殺者が言ってた仕掛け場所も?湖の近く。あ。ヤバ……アレンは……はい。にっこり悪魔の微笑みです!
「ふーん。湖の近く……ねぇ。ユナ、その『拾った』コレクション、僕にも見せてくれる?」
「え~秘密……って言ったら……」
「なんて?」
……怖い。笑顔が怖いよ、アレン様。
「あ……アレン。じゃあさ、手離してくれるかな~なんて。ほら、バッグが上手く開けれないでしょ?」
手を離してくれれば、逃げるチャンスが……
「バッグが?大丈夫、僕も手伝うから問題ないよ」
うん。そういう問題じゃあないんだな。
「ちっ違うの。ほら、ね。手汗がさ、気になるからね?私、女の子だしさ?それに、このまま持ったら汗で滑って割れちゃうかも!」
私はなんとか理由を探し、言葉を紡ぐ。
「手汗?そのことなら心配ないよ。魔法で温度と清潔な状態を保てるようにしてあるから。まぁ、僕としてはそんなの気にならないけど。そうだね……その『コレクション』は汗で滑ったら『割れちゃう』ものなのかな?」
「あ……あはは」
……そうですよ!『水晶玉』だもんね!割れるよね!しかも、何?温度と清潔を保てる魔法?そんな魔法いらないし!うぅ。なんか泣けてきた。
「ユナ。足掻くのも可愛いけど。もう諦めたら?言い逃れなんてできないよ?」
「ユナ」
「お父様……」
やっとか?助け船出してくれるの?こういうときはやっぱりお父様……
「諦めが肝心だ」
ですよねーはぁ……
「もう……わかりました!話しますよ!あぁ、水晶玉?だっけ?どうぞどうぞ!思う存分見てください!あ……でも後で返してね?」
「「はぁ……」」
盛大なため息が二ヶ所から聞こえたがもう、自棄糞である。私は『水晶玉』をそっと机の上に置いた。
「では、少々お借りするよ」
やっと出てきた、警察らしい人。もっと早く出て来てよね。
「……これは、爆弾で間違いない。まぁ、これはある意味……暗殺者が可哀想だな。これだけ強力な『封印魔法』がかけられていたら、並大抵じゃ爆発しない。」
「封印魔法?それがなかったら爆発していたと?」
アレンは抑揚のない声で言う。これが恐ろしいったらありゃしない。
「爆発……してただろうな。悪く言うようだが、お嬢さんごと吹き飛んでいただろう。それだけ強力な爆発物だ。」
アレンは私を見る。その顔から笑顔は消えていた。
「この爆弾もだが……あと一組あったようだな。」
「あぁ、音が聞こえたから……おそらく。」
とお父様。
「この近くの湖で爆発したようだ。なんとも不思議なのが、『湖の中』という点だがな。」
三人の視線が私に注がれる。
「ユナ、言いなさい。」
「はい……」
お父様の中で、私が『やらかした』のは決定事項らしい。
「それで?お嬢さん、その『石』の爆発物をどうしたんだい?」
警察らしい人は面白そうに聞く。
「水切り……しました」
「「「水切り?」」」
「はい……丁度いい感じの石だったから。」
そんな声揃えて、びっくりしなくていいじゃん。暇だったんだもん!遊びたかったんだもん!
「……あ、あぁ。ちょっとまとめさせてくれ。要するに?暇で散歩してたら?『水晶玉』という爆発物を拾って?気に入ったから、封印魔法をかけ『コレクション』に加えた。」 
「はい!そうです!この水晶玉綺麗でしょ?私、透明なものに目がなくて……」
「ユナ、ちょっと黙ろうか」 
「……はーい」
アレンが私をいさめた。
「そして?また散歩してたら、水切りに丁度いい『石』を見つけたから、湖目掛けて投げこんだと、『石』全部。」
「水切り選手権したんです!あ!確か……これ!」
私はポケットから、記念にとっておいた『石』を出した。もちろん『封魔』かけ済みである。
「は?」
警察らしい人がたじろいた。
「ユナ、君さ……死にたいの?」
アレンは呆れ気味に言った。
「ちゃ……ちゃんと封印魔法かけといたもん!」
「そういう問題じゃない」
「ユナ……お前、いつからそんなお転婆になったんだ?」
お父様まで!なんか遠回しにしてくれたみたいだけど、バカって言ってるようなもんじゃない?
「……お嬢さんは……『歩く爆弾』だな。はは」
はぁ?何よ!一番ひどくない?ちゃんと『封印魔法』かけたじゃん!

……うぅ〰️何なの!みんなして!

私とみんなの温度は真逆である。みんなが呆れ半分に冷めていくなか、私は、なんかもう……イライラで沸騰寸前なのだ。

何よ!私……暇だから散歩して『水晶玉』拾って、丁度いい『石』で水切りしただけなんですけど?


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