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第9段階 part3

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私、ユナ。ただいま放心状態。
話しかけるな。こっち見るな。てか、ニッコリするな。あぁ、そのコレクション!割れ物だから、そんな持ち上げないで!爆発したらヤバいんだからさ!
…そんなに鋭く観察しても、何も出てきやしないわよ。見たまんまだってば。……いや、まぁ。ほぼ爆弾とか危険物だけどさ。
……はぁ。ん?あぁ!ダメだって!なんで、封魔解こうとしてるわけ⁉爆弾だって言ってるでしょ?いや…ごめん!言ってないけど!そろそろ察してよ!って待って?なんで腕に着けた?そんな無邪気な子供みたいに指輪も全部指にはめちゃってさ!……絶対遊んでるでしょ!?しかも……腕輪、私と拘束してる方の腕に着けてるし。さっきこれの封魔解こうとしてたよね?なになに?あんた、腕とおさらばしたいわけ?私を巻き込んでさ……あぁっもう!

以上。私の心中継終了。
チェック通りこして、爆弾で遊び始めたアレン様であった。

私は今、心臓が壊れそうで怖い。もの凄くバクバクしている。なぜかって?隣の男が爆弾で遊び始めたからである。私のコレクションが全て危険物であることは、皆様ご察しの通り。それで『遊ぶ』ということがどんな事を意味するのか、お分かり頂けるだろう。私でさえ、爆弾をコレクションにしていると言っても、眺めている程度。それをコイツは『遊んで』いるのだ。……そう。いつ爆発してもおかしくない。もっと言えば、いつ死んでもおかしくない……状況なのである。
………一つ訂正しよう。アレン様が爆弾で遊び始めて数分。爆弾は爆発していないわけではない。ただ、私達が死んでいないだけであって。状況を説明すると、アレン様は爆弾を爆発させて遊んでいるのだ。馬車の中に超縮小型結界を作って……
その中で爆弾を弄くり回し、カチッと鳴ったかと思えばやったと言わんばかりに、楽しそうな顔をしてこっちを見る。そして、再度爆弾を見て、爆発する様子を眺める。さっきから、これの繰り返しである。これまでに何個やられたかな……五、六個…壊された気がする。
アレン様は、この機会に私のコレクションの『爆弾』を全て片付けるつもりらしい。そのつもりで爆弾を壊し始めた挙げ句、楽しくなって、今に至ると言うわけだ。あーあ、コノ憎たらしい顔何とかならないかしら?私のコレクションを楽しそうに壊すアレン様、しかもそれを見せつけて来るので、余計に憎たらしい。
「……いったい何個壊せば気が済むの?別に今じゃなくたっていいでしょ?絶対……」
嫌味ったらしく私が口を尖らせる。元はと言えば私が悪いに決まってるのだが、隣のあのふざけた……おっと、素晴らしく整った顔を見ると無性に苛つくのだ。
「…ユナ。君に1つ常識というものを教えてあげよう」
いつの間にか『コレクション』から顔をそらしたアレン様は私に、ニッコリと話す。その微笑みは、まさに天使なのだかが…私には分かる。これは、『嵐の前の静けさ』曰く、お仕置きの前のご褒美タイム。笑顔という名の癒やしタイム。『アメとムチ』のアメの部分である。甘い蜜を吸った虫は、その後……捕食者の胃袋の中なのである。つまり、この後私がひどい目に合うことは、約束されているのである。それに……
「常識?私……けっこう常識人よ?」
「……は?」
あんまりだ。私に常識がないみたいではないか。ちょっーと、ほんのちょっーと危ない物は持ってるけど…常識……はあるはず!
「君が常識人だって?」
「?…そうよ?」
アレンの微笑みは増していく。
「本気で言ってる?本気の本気で?」
「本気の本気で。まじで。」
アレンは足を組んで、片手を頭につけて考える人のポーズになった。そして、しばらくして顔を上げると、元のスマイルが復活していた。
「ユナ」
「?…うん?」
どことなくヤバい空気を感じて身がすくむ。強がった結果、またしても墓穴を掘った気がするのは気のせいだろうか。
「あのー……アレン?」
「ん?」
「いや、名前呼んだでしょ?早く要件を話してよ」
「あぁ、ごめんごめん。ついね。君の花嫁修業件お仕置きを考え直してたんだ。」
……考え直して?
「え…それはどういう…」
待って?いや、花嫁修業ってのは忘れかけてたけど。うん。考え直し?これまた、どんなわけで考え直しになったわけ?そんな要素、今までの会話にあった?
「うんとね。僕の君への理解が少し甘かったようだからね」
「甘かった?」
「うん。ユナ、君はいつだって僕の考えの上をいくんだね。今、理解したよ。僕はもっと君を知る必要があるようだ」
……なんか、なんか…なんとなくだけど…
「ひょっとして、バカにしてる?」
「?どこが?」
「さっきから、嫌味にしか聞こえないんだけど」
「……?君が思ってた以上に可愛らしいって話しでしょ?」
あーうん。…無理だ。コイツに話通じないわ。
「あぁ、それと君にはまず『常識』を学んでもらうことにしたよ。花嫁修業」
……え、今なんて言ったコイツ?常識?
「ヘ?常識?」
「うん。常識。」
……?それって、習うことだっけ?アレンの家に行ってまで?
「常識を教える講師なんて、聞いたことないんだけど。てか、常識って教えられるものだっけ?」
「まぁ…そうだね。いないと思うよ?常識は特別教えるものではないからね。その人なりの常識は自然に身につくものだから」
と、まぁ当然のように話す。
「いないって…じゃあ、誰が教えて下さるわけ?」
「…僕だけど?」
「は?」
「僕だよ。ユナ」
……は?待って待って?理解が追いつかない。アレンが教えるって?私に……常識を?いやぁ……これ完全にバカにしてるよね?間違いなく。そもそも、そもそもだよ?花嫁修業って婚約者に見合う花嫁になるための修業であって、婚約者に教えられることではないと思うんだけど。パートナーが必要なダンスならともかくさ。私の常識間違ってる?
「それって花嫁修業なの?」
理解が追いつかない私は、目の前の天使の顔をした悪魔に教えをこう。
「そんなわけないでしょ。」
…はぁん?んなら、なんだって言うのよ。
「これは、学びを得るための準備、前段階だよ」
え…なにそれ。前段階?そんなのあるわけ?超ダルい。いらないってそんなの。
「いらないって?そんなことないさ。基礎はどんな学びにも必要でしょ?ましてや、君は特にね。」
…今聞いた?聞いたよね。コイツ絶対バカにしてるって。てか、『いらない』とか言葉に出してないんだけどなぁ。……はぁ。
私は思う。今、目の前に、いらっしゃるアレン様。何かとチートを隠していそうだが、この悪魔の正体を探ってもどうせどうにもならないのだと。
もう……いいや。どうにでもなれ。もう、知ーらない。
「アレン、1つ教えて上げる。それって、私に常識がないって言ってるのと一緒だわ。」
「そんなことないよ。君の常識が少し、他とかけ離れてるだけさ」
「……なにそれ前よりヒドいじゃない」
……この男。ほんっとにもう嫌っ。
考えることを放棄した私ことユナ。今まさに三途の川を渡っている気分であります。川の先には、本来の地獄ではなく、魔王の城がそびえ立つ。今思えば、閻魔様と魔王は若干結びつかないような。あれ?まぁ、そんなことはさておき。どうせ、行くのだ。魔王の城も地獄も、最悪なのは同じである。

私の『スローライフ計画』、ついに第9段階目突破!
アレン様から逃げることは叶わず。もはや、捕獲されたも同じ。魔王のお手元にただいま参ります。
さぁ!お迎えどうもです。 


あ~もう、どうにでもなぁーれ。
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