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第9段階 part4

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ねぇみんな…私一つ思ったの。目の前の魔…ンンッ
アレン様から逃げるのってもう無理じゃね?

私、ユナ。魔王に城まで連行されている中、さっきから周囲に三途の川が見えているような気がする今日この頃であります。
ついに私のスローライフ計画は第9段階まで突破。
気づいたら、私のというよりアレン様から…ひたすら逃げる計画になってました。はぁ…
もうほんとに…どうしよ。
「ユナ、さっきから何を考えてるの?」
目の前の憎ったらしい魔王様は、私に暇さえ与えてくれない模様。もういっそ仏様にでもなってやろうか。
「…気にしないで。今私、悟り開いてるの」
「サト…なんて?」
あっこっちには『悟り』なんて言葉ないんだった。
「ほら見て?アレン。窓の外でおばあちゃんが手を振ってるわ」
「うん…誰もいないね。ところでそのおばあちゃんはどんな人なのかな?」
「あら、三途の川の番人よ。あそこで罪人の服を剥いでしまうの。ほら、お洗濯干してるじゃない?あれその服」
「罪人?…えっと…うん。三途の川は罪人が通る所なんだね。おかしいな僕目は良いはずなんだけど、誰もいない」
小馬鹿にしたように返すアレン。私はしばらくコントを続けることにした。
「ところでアレン、あのおばあちゃんにちゃんとお給料払ってる?」
「うん…僕の話は聞いてないみたいだ。えっとお給料?だっけ。賃金みたいなものかな。どうして僕が?」
「え?だってあなたが雇ってる人でしょ?自分の従業員にはちゃんと払わないとダメじゃない」
三途の川の番人なんだから、地獄の閻魔様の使いだもんね。あれ?魔王と閻魔様って違う人のような…まぁいっか。どっちもそう変わらないわ。
「えっと…うん。ついにどうにかなったかな。まぁいいや。君は僕をなんだと思ってるんだ?」
…ちょっと聞こえてるんだけど。
「魔王」
あっ…やば。勢いで言っちゃった…
「…ユナ」
魔王様のお顔はいつも通り綺麗なもんで、だからかその綺麗な顔でにっこり微笑んだ姿が凄く恐ろしい。
「君の説明を聴いてる限り魔王はあまりいいものじゃなさそうだね?君が言ったんだ、魔王とはどんなものか説明してもらおうか?」

その後、私がアレン様にこってり絞られたのは言うまでもない。この魔車に乗って数時間。私は色んなものを失った気がします…
ところで魔車とは、この世界にある馬車の変わりみたいなもの。私もびっくりしたんだけど、この世界には魔法があるでしょ?だから馬が引かなくても魔法で動くらしいの。もちろん馬車もある。魔法が使えない人も中にはいるし、そもそも動かす事自体結構大変らしいから。あっ私はできるよ?だって家で仕掛け作ってたからさ、やっぱ材料がいるわけで…それを運ぶの大変でしょ?荷馬車ほしいなって。でも馬買うのもなんか…って思って。でも、あれ?魔法使えば楽勝じゃない?って思ったらできてた。
そもそも、浮かせて移動させればいい話なんだけど…あっ後から気づいたのそれ。その時は魔法で動かしてみたくてさ、試行錯誤したらできたんだよね。
ん?そういえば、その時から魔車を見るようになったかも。私が試行錯誤してるとき何か視線感じたけど、殺気じゃなかったから放っといたんだよね。まぁ…いいや。わかんないし。
「ユナ…そろそろ見えてきたよ。あれが僕の家だ」
……えっと。アレン…これは何?新手のいじめ?
「…見えないんだけど。そろそろ開放してくれない?こんな体勢で外が見えるわけないじゃない」
どんな体勢かって?
アレンが私を膝の上に乗せてるの!しかもがっちりホールドして。ハァ…三途の川の1軒いらい絞られて膝に乗せられた。もうこっちは気が気じゃなくて。
魔王の膝とか寿命縮まる。
「あ、ごめんごめん。さっきはおばあちゃんが見えるとか…可笑しなこと言ってたから。おかげて見えなくなっただろ?変なのに手を振って懐かれても困るからね。」
…えっ何言ってんの?あんなの、ただのジョークに決まってるじゃん。何もいないし。まぁ気が遠くなってたのは確かだけど。友達になれるもんならなってやるわ。そしたら、地獄に落ちても三途の川渡り直して逃げてやるもんね。閻魔様と魔王はいい友達になりそう。絶対引き渡されるだろうし…その前に逃げるが勝ち。
…ボソッ「…あんなの…嘘だし」
「え?嘘?…うーん。いや、あながち嘘でもなかったような。なんか…うん。いたよ?こっちには手を振ってるやつ。さすがにおばあちゃんではなかったけどね」
聞こえたらしい。まぁ…聞こえるように言ったけど。でも、え…待って。怖いんだけど。私…何も見てないし。ただの綺麗な風景見てただけなんだけど。え…無理。まじで無理。そういう心霊系は苦手なんだってば!
「…あ、アレン。まさかついてきたりは…」
私はアレンに抱きつく。幽霊よりは魔王のほうが何倍もマシだ。だって、実体あるし。
「…これが弱点か。うん。いいこと聞いたな…
あ、さっきの?ついて来てはないよ?でも…こっちはこっちで新しいのはいるかな」
……
「は?…無理。ほんとに無理だから!」
「しょうがないって。君は好かれる体質みたいだから。君と友達になりたいやつで時々列ができるほどだ。いっそ友達になれば?護ってくれそうだし」
…マジで言ってんの?まぁ友達になっちゃえば怖くないかもだけど…血だらけとかそういうのはちょっと…ところで、アレン様はどこまでチートなのでしょうか。
「アレンは幽霊も見えてるわけ?」
「まあね。なんかいるなって感じで。だから、情報とか入りやすくて。結構いい能力だと思ってる。」
即答ですか…まあ、生身の人間に聞くよりは…駆け引きがなくていいかも。そしてまた冷静な自分にもびっくりだわ。
「…アレン、しばらく私に接近禁止で」
こんなやつといるから、好かれるんじゃない。
「え?無理。…そんなに離れたいなら、これつけてもらうけどいいの?」
チャラン…と出てきたのは綺麗なブレスレット。腕につけるやつ。デザイン的には好きだけど…
「…これ拘束具じゃない」
「うん。なんせ君は『歩く爆弾様』だからね。保険はかけて置かないと」
…ねぇ、この婚約者の頭かち割りたいんだけど良いかな?魔王だし、制圧したってことでお許し貰えない?
「確認するけど…私、あなたの婚約者であってる?」
私…一応花嫁修業に来たはずなんだけど。拘束具つけた婚約者とか聞いたことある?
「もちろん、最初で最後の婚約者だよ」
「え…なんか重。最初で最後?」
普通なら感動的な言葉なんだろうけど、魔王に言われたらちょっと恐い。正直、アレンのことは好きだけど…まぁ、ここは円満にお別れして、お互いスローライフ送りません?
何なら、悪役令嬢になったっていいんだけど。魔王の婚約者だもの、聖女なんていいんじゃない?小説でよくありそうな展開だし。
「ヒロイン…見つけて来ようかな」
「なんて?」
「なんでもない」

私のスローライフ…できる日は来るかな。
スローライフ計画、第9段階。今回も失敗に終わりそう。この地獄の果までに限らず、永遠についてきそうな婚約者様。誰か引き離す放送教えてくれません?

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