【完結】番が見つかった恋人に今日も溺愛されてますっ…何故っ!?

ハリエニシダ・レン

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オマケ

僕の番……?

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主人公の番編

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僕には番がいた


……かもしれない。
確信はないけど。
でも思い返す度に思うのだ。
……やっぱりあれは、番だったんじゃないかって。
だって、ただの一目惚れにしては込み上げる衝動が強すぎた。……今まで一目惚れした事ないから、比較はできないけど。でも……



その子を一目見た瞬間、惹きつけられてフラフラと引き寄せられるように足が動いた。そして……突如ぶつけられた強烈な殺気に、全身が凍りついた。


茶色の長い耳をした、可愛いウサギ獣人の女性。僕が番だと思った子。その子の隣に立つ、いい身体をした狼獣人の男が僕を睨みつけていた。


それ以上、一歩でも近づいたら殺す


そう目が語っていた。
それでもウサギ獣人の子の目がチラリと僕を見て、その瞬間足が再び動きかけて。けれどすぐにその視線は逸らされて、狼獣人の男を真っ直ぐに見上げた。甘さを含んだ、恋する瞳で。


……あれ?僕の番……じゃ、ないのか……?


彼女の態度に戸惑った。
番がいる奴なんて身の回りにいないから、所詮話で聞いた事があるだけだけど。これだけ強く惹かれるのだから僕の番に違いないと咄嗟に思ったのに。
番は互いに・・・強く惹かれる筈だ。でも彼女は僕に惹かれているようには見えない。いや、少し僕のことを気にしているようには見えるけど……。

だんだん自信がなくなってきた。
番と言ったら、あの番だ。生涯離れず愛し合う、理想の伴侶。なのに彼女は、僕に大して興味を見せていない。隣の狼獣人に恋しているようにしか見えない。『出会った瞬間、強烈に惹かれ合う』と言われている番のようにはとても……。


番でなければ、これはただの一目惚れだ。しかも恋人がいる女性への横恋慕。
……不安になってきた。

獣人は、争いを殴り合いで解決する事が多い。その方が手っ取り早いし分かりやすいから。法律でも、禁じられているのは殺人や重度の怪我くらいだ。軽いケンカまで取り締まっていたら手が足りないし、そもそも現実的じゃない。
動きを止めた僕に、念を押すように更に強い殺気が浴びせられる。


手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す手を出したら殺す


そんな声が聴こえてきそうだった。
本能的に尾が垂れる。
同時に耳もヘニャリと垂れた。


どうやっても勝てる気がしない……。


横恋慕で下手にちょっかいをかけたら、ボコボコにされても文句は言えない。人のものに手を出す奴が悪いのだから。
あの筋肉隆々の腕でボコボコにされたらと想像するとぞっとする。
僕は会社員だ。趣味で身体は鍛えているけど、アレと比べると……。

二回りは細い自分の手足にため息を吐いて、クルリと踵を返した。
視界の端で、長い耳の女性がほっとしたように狼獣人にピタリと寄り添うのが見えた。小柄な割に豊満な胸を押しつけるようにして。

……多分、あの胸にやられたんだ。
僕はそんなに巨乳好きって訳ではないけど、嫌いでもないし。だからちょっと獣的な本能を刺激されて惹かれたんだろう。そう自分を納得させる。

でも、しばらく歩いてからやっぱり気になって振り返ると、狼獣人は尻尾の部分が軽く膨らんだ彼女の細い腰を抱くようにして反対方向に歩いていた。


お尻も可愛いなあああああああああっ!


プルンとしたお尻に思わず視線が釘付けになっていると、殺気に混じって魔力まで飛んできた。
突き刺さるナイフのような濃厚な魔力。
鋭い視線をこちらに向けた狼獣人。
その口がゆっくり開き


死にたいなら、来い


ハッキリと、そう動いた。
その瞬間、既に死んだ気がした。

こいつはきっと躊躇わない。隣の女性を渡さない為なら、人殺しだって。


無意識に首を横に振って後退っていた。
狼獣人は「それでいい」とでも言うように頷くと、今のやり取りには何も気づいてなさげな彼女を連れて去って行った。




っていうやり取りがあったのが先週の事。仕事で首都に行ってきた時の話だ。
それ以来、件の女性を思い出してはため息を吐いてばかりいる。

本当に可愛いかった。長い耳がゆらゆら揺れて、まるで彼女の周りに花が咲いているかのように特別に見えた。


……でも、僕の番じゃないんだよなぁ……


また、重いため息を吐いた。
最初は心配してくれていた同僚たちも、もういい加減慣れたようで「またか」という視線をチラッと向けてくるだけだ。
でもしょうがないじゃないか。思い出してしまうんだから。

更に重いため息が出た。あのウサギ獣人の女の子への未練は、まだ当分は断ち切れなそうだ。
だって凄く可愛かった。今まで会ったどんな子よりも。

たとえ番じゃなかったとしても、生涯一度の大恋愛だったかもしれない僕の恋。それは、こうして始まるまでもなく終わってしまったのだった。

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感想 6

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みんなの感想(6件)

kunoenokou
2022.12.28 kunoenokou

ミュールの番は登場しない方向でお願いします。気の毒なので。

番システム、今お互いにフリーな状態ならなんの問題もないし、運命に惹かれてと羨ましく思うこともできるのですが。
恋人、夫婦、子どももいる状態で出会った時が悲惨。完全にわたしの好みですが、こういった状況の時にあらがうような小説には感情移入してしてしまいます。

それにしても小鳥さんに比べ、全く気持ちが揺るがない狼さん。今後も安泰ですね。

解除
とまとさん
2022.12.27 とまとさん
ネタバレ含む
2022.12.28 ハリエニシダ・レン

そうなんですw

解除
マングース
2022.05.15 マングース

とても面白かったです!
完結は少し寂しいです。

思い立ったら、不規則更新!
に期待して、お気に入りのまま
気長ーに待ってます。

まずはお疲れ様でしたー!!

2022.05.15 ハリエニシダ・レン

ありがとうございます!

小話くらいならそのうち書くかもしれません。
その時はよろしくお願いします!

解除

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