性悪聖者と悪魔のしもべ

ハリエニシダ・レン

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聖者のピロートーク

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「っ…ぁっ…ぅんっ…」

自分のものを握り締めて、聖者の胸にもたれかかって、中に出される感触に耐える。

「っ…ぁっ…ふぅっ…」

初めて現実で味わう、身体の中に出される感覚。
まるで脳みそに精液をぶちまけられてるかのように思考が濁る。

ぅあ……頭ん中まで…犯されてる……




しばらくして、聖者が自分のものを引き抜いた。

「流石は悪魔の僕を名乗るだけあるな。気持ちよかったぞ?」

ニヤリと笑う聖者の手には、未だ燦然と輝く聖者の証。

っ…俺はっ…おまえを堕落させる為に抱かれたんだ…おまえを気持ちよくする為じゃねえっ……

そんな罵倒の一つも言えずに、聖者の身体に寄りかかって震える。
身体どころか顎にさえまだ力が入らない。

この、絶倫がっ……



立ち上がり俺をすぐ脇のベッドに横たえると、聖者は自分の腹を見下ろした。

「随分出したな」

その声につられて目をやると、俺の出したもので聖者の腹はベトベトに汚れていた。
ざまあみろ。

けれど

「そんなに俺に抱かれるのが気持ちよかったか」

と煽るように続けられて、怒りと羞恥で頭に血が上る。

それは俺の台詞だっ…

俺が言ってやりたかった台詞。
俺を抱いたことで聖痕を喪い、呆然とする聖者に言ってやろうと思ってたのにっ…

こいつの聖痕はキラキラと淡く光って、未だにこいつの手の甲に張り付いていた。
悪魔に散々犯され、穢れきった俺を抱いたのに。
まるでそんなのは何でもないことかのように、聖者であり続けるこいつ。

っ…クソっ…なんでだ………

悔しくてたまらない。
抱かれ損じゃないかこんなの。


「なんであんた、まだ聖者なんだ」

半目で睨むと、不思議そうに首を傾げられた。

「なんでって何がだ?」

本気で不思議そうな顔で。

「っ…男でっ…しかも悪魔に抱かれまくった俺を抱いてっ…なんで何ともないんだっ…!」

聖者は不思議そうな顔のまま言う。

「最初に言ったろう?人が人を抱くだけなんだから、何も問題は無いと」

「そんな訳あるか!聖典にだってあるだろ!悪魔と親交のある女と食事をして穢れた神官の話とか、知らない男に無理矢理キスされて聖痕を失った聖者の話とか!」

感心したような顔になる聖者。

「…詳しいな。そんな話があるのか」

「逆に何であんたは知らないんだ!」

思わず全力で突っ込んだ。
聖者は軽く肩をすくめる。

「俺は普通に流れの商人をしてたら、いきなり聖痕が浮き出た口だからな。元々宗教には詳しくない」

そんな奴が聖者に選ばれたのか。

知らなかった。
てっきり信仰心に厚い神官辺りが、ある日覚醒したとばかり思ってた。

「でも神殿の奴らが教育しようとしなかったのか?」

神殿の神官は高圧的で、自分たちが世の中で一番尊いと思っているような奴ばかりだ。そんで何かあれば「聖典にそう書いてある」って言う。

「それが嫌だから旅をしている」

「………は?」

「元々旅の商人だった俺に、神殿にこもって聖典読んで祈る以外することのない生活とか無理に決まってるだろ?だから「あまねく人々を救いたい」ということにして旅をしている」

…こいつの旅する理由ってそんなだったのか…

「神殿に寄って聖痕を見せれば旅費くらいはくれるから便利だぞ?」

神殿のことを財布くらいにしか思ってなさそうな口ぶりに呆れる。

「何であんたみたいなのが聖者なんだよ…」

疲労感を覚えて肩を落とすと

「俺も不思議だ」

とサラリと流された。
しかも

「でもさっき言ってたことが本当なら、聖典には嘘が書かれてるってことじゃないか?」

なんて平然と言いやがった。
神官が聞いたら卒倒どころか憤死しそうだな。いやむしろ殺しにきそうだ。

「権力者が自分の都合で聖典に色々書き加えるなんて、よくあることだろ?」

…そういうもんなのか?
俺にはわからない。
学のない俺には…。

「なんだ。それで俺に抱かれようとしてたのか」

頷き納得する聖者。
おせーよ!

「で、失敗したようだが、それでもまだ俺を堕落させるつもりか?」

「当たり前だ!」

肩をすくめる聖者の問いかけに、反射的に答えていた。

だって俺は、ここ数年ずっとそのつもりで生きてきたんだ。
聖者が現れたって聞いてから。
こいつ一人をどうにかするだけなら俺にもできるって、そう思って。
それだけを考えて。
それだけの為に生きてきたんだ。

夢に現れた悪魔の誘いにのって。
この身を汚し続けた。
こいつを堕とす、その為だけに。
今さら違うって、間違いだったって言われても困る…。

俺は…こいつを堕落させてそして………



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