本編完結R18)メイドは王子に喰い尽くされる

ハリエニシダ・レン

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if マーカスルート

なんだそうか

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どこで間違ったのか。

私は彼女を手に入れて、幸せになる筈だったのに。
彼女に微笑みを向けられて、彼女から愛されて暮らす筈だったのに。

彼女の身体は手に入れた。
攫うようにして。
いや。薬で意識を奪って攫って、そして閉じ込めて鎖に繋いだ。
でもそれは、彼女が意地を張って私の誘いに応じようとしなかったから。……仕方のない措置だったのだ。
彼女を逃さない為に、私と彼女が幸せになる為には必要なことだった。


そんなふうにして攫いはした。
けれど私は、きちんと彼女を愛した。
毎日抱きしめて丹念に愛を注いだ。
私の愛が彼女に伝わるように。暇さえあれば彼女を抱いた。
私の物になったことを彼女が理解できるように、彼女の身体の奥底に私の体液を繰り返し注ぎ込んだ。

それなのに。
彼女は一向に理解しようとしない。
私の想いを。
自分の立場を。
もう逃げ場などないと。
彼女の居場所はここにしかないのだと。
何度も教えてやっているのに。
彼女はもう私の物として生きるしかないのだと、しつこいくらいに何度も教えてやっているのに。
そんな簡単なことを、頑なに理解しようとしない。

どれほど時間をかけても。
注げる限りの愛を注いでも。
彼女が私に向けるのは嫌悪の視線。
ただそれだけ。
彼女は私に微笑まない。


……私の言う通りには、する癖に。
彼女の弱点である鎖骨。そこを指で触れてやれば、舐めてやれば、噛んでやれば、私の言う通りの行動を取る癖に。

ねだれと言えばねだって。
キスしろと言えばキスして。
「愛している」とさえ口にする癖に。
なのに彼女の瞳は私を拒み続ける。
彼女の心は決して私を受け入れない。

私はこんなにも彼女を愛しているのに。
彼女を逃す気など無いと、丈夫な鎖と窓を全て塞いだ部屋で教えてやっているのに。
彼女の世界には、もう私以外の誰もいないはずなのに。
二人できた子どもたちさえ遠ざけて。
産んだきり、二度と会わせないでいるのに。
彼女には私しかいないと、そうまでして教えてやっているのに……。


彼女の身体は、とうの昔に私に従順になった。挿れればすぐに私のモノに絡みつく。
身体は私に素直に応える。
奥を突くたびに、物欲しそうに腰を揺らして。
喘ぎ声だって止まらないのにっ…


なのになんでっ…


なんで彼女の心は、私のものにならない!
なんで私が言わせなければ、拒絶の言葉ばかり口にするっ!
なんで彼女は、あんな目でしか私を見ないっ…!!!


私はこんなにもこんなにも彼女を愛しているのにっ!!!!!


どうして………






考えて考えて。
一つの答に思い至った。
とても不愉快な答えに。

どこかに彼女の心を奪った男がいるのだ。
そいつが彼女の心を奪った所為で、彼女は私を愛せないのだ。
そうに違いない。
でなければ、これだけ愛してやっている私を彼女が愛さない訳がない。


……そういうことなら話は簡単だ。


そいつを消せばいい。


そうすれば彼女の心は私に向く。
向ける先を失くした彼女の心は、私を求める。

だって彼女は、私以外の人間には会えないのだから。
私が彼女の世界に存在する、唯一の人間なのだから。

だから、邪魔者を消せば今度こそ。
彼女の心は私の物になる。
他に選択肢などないのだから。
全部潰してあげたのだから。

だから今度こそ、彼女は私を見て微笑む筈だ。
私を愛しく思う筈だ。
彼女の心も全て、私のものになる筈だ。

そうに決まっている。
そうならなければおかしい。
そうなるべきなのだ。
そもそも、彼女が私の物になった時点で、そうあるべきだったのだから。
今が、間違っているのだ。


ああならば……早く邪魔者を消そう。
私の為に。彼女の為に。
そうして遂に、私が彼女に愛されるのだ。
あるべき形に、正しい形に戻るのだ。
愛しいリーシャに、私が愛されるのだ。



自分の考えに心が踊る。

だが消すべきその男は誰だ?
彼女の心を奪った男は。
私の物を奪った盗人は。

この屋敷に来てから、というのはあり得ない。彼女には私以外、誰とも会わせていないのだから。
例外は、出産の時に仕方なく呼んだ産婆と、産まれたての赤子だけ。それだって、その日だけのこと。

王宮で働き出す前の知り合い、でもないだろう。
彼女が休日に会ったり手紙をやり取りする相手がいなかったことは調査済みだ。そこまで想う相手と、一度も連絡を取り合わない訳がない。

そうなると、王宮にいた頃。王宮で出会った誰かということになる。
王宮で彼女が深く関わった誰か。
仕事ばかりで、休日に街に下りることもほとんどなかった彼女の相手…

一人の人物が浮かんだ。


…………殿下…か?


殿下なら、その条件に当て嵌まる。
私より先に、彼女の身体を知っていた男。
恐らく……彼女の初めてを奪った男。


………そうか。
殿下を殺せばいいのか。


単純な話だ。
殿下の首を、彼女の目の前に転がしてやればいい。そうすれば彼女の心は私の物になる。
もう、愛した男はこの世にいないのだと理解して。
別の男を求める。
この私を。
彼女の世界に唯一存在する人間を。
彼女をこんなにも愛してやっている男を。




なんだそうか。


肩の力が抜けた。


なんだ、こんなに簡単なことだったのか。
私の望みを叶えるには、たった一人殺せばいい。



それなら。
明日早速、殿下を殺そう。
私の為に。彼女の為に。



ようやくリーシャの心を手に入れる算段がついた所為か、この日は本当に久々によく眠れた。

夜に見た夢の中で、リーシャは何度も愛しげに私の名前を呼んだ。命じなくても、私を求めて甘い声をあげ縋りついた。
とても幸せそうな顔で私に微笑んだ。

「マーカス、愛している」と。
甘い甘い声で……
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