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if レオン&サイラスルート
覚悟
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(0の直前。レオン視点)
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「兄上」
呼び止められて振り向くと、サイラスの視線が私を射抜いた。
「僕は今日、母上を抱くよ」
「……っ!?」
その言葉に、心臓が止まるかと思った。
サイラスにいつもの飄々とした雰囲気はない。
「母上はもう限界だよ。これ以上放っておいたら……壊れてしまう……」
「っ……だが……」
本当にそれでいいのか。そんな方法で……。他にもっといい方法が……。
サイラスと同じ事を考えながらも、私は迷っていた。
考えついた最終手段。あの頃のようにリーシャを抱いて、快楽で思考を埋めてしまえば。父上がいた頃の感覚だけでも再現してやれば。
非道な手段だ。けれどそれ以外の手段はもう試したのだ。このまま何もせず放っておけば、リーシャはきっと壊れてしまう……
言葉を続けられない私をサイラスが睨む。
「じゃあ兄上が母上を助けてあげられるの?もっといい方法で。それなら譲るよ?」
お互いできる事は、考えられる事は全てやったのだ。けれどリーシャは未だに現実を見てくれない。父上の影を追い続けている。彼女を傷つける為にわざとあんな去り方をしたろくでなしを想い続けている。
そんな彼女を、どうしたら救える?
悔しさに俯きギリっと唇を噛み締める私に、サイラスが冷たく言い放つ。
「………できないんでしょ?だったら邪魔しないで」
「……っ!」
咄嗟に顔を上げると、サイラスの驚くほど弱気な顔があった。
「………僕だって……本当はこんな事したくないんだ……でもこのままじゃ母上が……」
小さく漏らされた本音。珍しいサイラスの弱音。微かに震える唇。
サイラスはこんなだけど、リーシャの事を母親として慕っている。兄弟だからよく分かる。女性としてではないけれど、リーシャはサイラスにとって数少ない『特別』だ。
だから……怯えているのだ。このまま何もしなければ訪れるであろう結末に。
……こいつ一人に押しつけられない。
多分、サイラスに任せておけば上手くいく。サイラスは器用だから。リーシャは少しずつ現実を見るようになるだろう。壊れずに済むだろう。
けれどそうなるまでの過程は、サイラスにとってきっと辛い事になる。たとえ救う為だとしても、リーシャを新たに傷つけるのだから。父上の命令ではなく、自分の意志で。回復したリーシャに、どんな目で見られるのかもわからない。
それでもサイラスは決めたのだ。リーシャが壊れてしまうくらいならと。
私はこいつの兄だ。弟に辛い事を押しつけて、自分は手を汚さずに回復したリーシャと何食わぬ顔で接する。そんな真似ができる筈もない。サイラスがすると言うならーー
「………私もする」
言った瞬間にまた睨まれた。
「できるの!?兄上に!途中で躊躇ったら許さないよ!?母上を無駄に傷つけるのは、たとえ兄上だって許さない!」
怒鳴るサイラスに思わず気圧される。こいつが怒るのはとても珍しい。だが、それだけ今のリーシャの状態は危ういのだ。サイラスがここまで追いつめられるほどに。
だから私は頷いた。
「大丈夫だ。躊躇ったりしない」
こちらが迷いを見せたら、リーシャは行為に踏みきれなくなる。そうして壊れてしまう。それは決して引き起こしてはいけない事態だ。
正直怖い。父上がいた頃とは違うのだ。リーシャを傷つけながらも、壊れないよう慎重に限界を見極めていた父上。リーシャは、父上の存在によってあんな状況でもある意味安定していた。父上に傷つけられながら、それを受け入れていられた。
けれどその父上はもういない。
自分の態度一つで、言葉一つで彼女が壊れてしまうかもしれない。
そんな状態で彼女を抱くのだ。怖くて仕方がない。けれどサイラスだってそれは同じなのだ。
それにリーシャを好きだと言いながら、肝心な時に手を差し伸べないような真似などできる訳がない。
後から何度も、違う方法があったのではと後悔する事になるだろう。だが、それでも今はそれ以外の方法がわからないからーー
「約束する」
そう宣言した。迷いなど見せずに彼女を抱く。彼女を救う為に。
「………わかった」
決意が伝わったのか、サイラスは少しだけ空気を和らげて頷いた。
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「兄上」
呼び止められて振り向くと、サイラスの視線が私を射抜いた。
「僕は今日、母上を抱くよ」
「……っ!?」
その言葉に、心臓が止まるかと思った。
サイラスにいつもの飄々とした雰囲気はない。
「母上はもう限界だよ。これ以上放っておいたら……壊れてしまう……」
「っ……だが……」
本当にそれでいいのか。そんな方法で……。他にもっといい方法が……。
サイラスと同じ事を考えながらも、私は迷っていた。
考えついた最終手段。あの頃のようにリーシャを抱いて、快楽で思考を埋めてしまえば。父上がいた頃の感覚だけでも再現してやれば。
非道な手段だ。けれどそれ以外の手段はもう試したのだ。このまま何もせず放っておけば、リーシャはきっと壊れてしまう……
言葉を続けられない私をサイラスが睨む。
「じゃあ兄上が母上を助けてあげられるの?もっといい方法で。それなら譲るよ?」
お互いできる事は、考えられる事は全てやったのだ。けれどリーシャは未だに現実を見てくれない。父上の影を追い続けている。彼女を傷つける為にわざとあんな去り方をしたろくでなしを想い続けている。
そんな彼女を、どうしたら救える?
悔しさに俯きギリっと唇を噛み締める私に、サイラスが冷たく言い放つ。
「………できないんでしょ?だったら邪魔しないで」
「……っ!」
咄嗟に顔を上げると、サイラスの驚くほど弱気な顔があった。
「………僕だって……本当はこんな事したくないんだ……でもこのままじゃ母上が……」
小さく漏らされた本音。珍しいサイラスの弱音。微かに震える唇。
サイラスはこんなだけど、リーシャの事を母親として慕っている。兄弟だからよく分かる。女性としてではないけれど、リーシャはサイラスにとって数少ない『特別』だ。
だから……怯えているのだ。このまま何もしなければ訪れるであろう結末に。
……こいつ一人に押しつけられない。
多分、サイラスに任せておけば上手くいく。サイラスは器用だから。リーシャは少しずつ現実を見るようになるだろう。壊れずに済むだろう。
けれどそうなるまでの過程は、サイラスにとってきっと辛い事になる。たとえ救う為だとしても、リーシャを新たに傷つけるのだから。父上の命令ではなく、自分の意志で。回復したリーシャに、どんな目で見られるのかもわからない。
それでもサイラスは決めたのだ。リーシャが壊れてしまうくらいならと。
私はこいつの兄だ。弟に辛い事を押しつけて、自分は手を汚さずに回復したリーシャと何食わぬ顔で接する。そんな真似ができる筈もない。サイラスがすると言うならーー
「………私もする」
言った瞬間にまた睨まれた。
「できるの!?兄上に!途中で躊躇ったら許さないよ!?母上を無駄に傷つけるのは、たとえ兄上だって許さない!」
怒鳴るサイラスに思わず気圧される。こいつが怒るのはとても珍しい。だが、それだけ今のリーシャの状態は危ういのだ。サイラスがここまで追いつめられるほどに。
だから私は頷いた。
「大丈夫だ。躊躇ったりしない」
こちらが迷いを見せたら、リーシャは行為に踏みきれなくなる。そうして壊れてしまう。それは決して引き起こしてはいけない事態だ。
正直怖い。父上がいた頃とは違うのだ。リーシャを傷つけながらも、壊れないよう慎重に限界を見極めていた父上。リーシャは、父上の存在によってあんな状況でもある意味安定していた。父上に傷つけられながら、それを受け入れていられた。
けれどその父上はもういない。
自分の態度一つで、言葉一つで彼女が壊れてしまうかもしれない。
そんな状態で彼女を抱くのだ。怖くて仕方がない。けれどサイラスだってそれは同じなのだ。
それにリーシャを好きだと言いながら、肝心な時に手を差し伸べないような真似などできる訳がない。
後から何度も、違う方法があったのではと後悔する事になるだろう。だが、それでも今はそれ以外の方法がわからないからーー
「約束する」
そう宣言した。迷いなど見せずに彼女を抱く。彼女を救う為に。
「………わかった」
決意が伝わったのか、サイラスは少しだけ空気を和らげて頷いた。
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