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3 またこんな…
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「姉さん…」
階段を上がると、弟がドアの脇に立っていた。壁に背を預けて。
無視してそのまま前を通り過ぎようとしたら、腕をつかまれ部屋に引きずり込まれた。
「なっ…」
一瞬の出来事に驚く口を塞がれる。
舌が、入ってきた。
「っ…!」
「姉さん…姉さん…」
身体を押されバランスを崩して、よろけてベッドに後ろから倒れ込んだ。
「んっ…」
キスが…深い…
「姉さん…」
「っ…や…」
「…っ…姉さん…」
透の手が、胸を這う。
あれ以来そういう素振りを見せなかったから、一度したら満足したのだと思っていたのにっ…
「姉さんっ…」
「やめっ…透っ…」
「姉さん…っ…」
「やっ…!溜まってるなら他の子としなさいよっ!」
なんとか突き飛ばすと、透は呆然と目を見開いた。
「何…言ってるの?…姉さん…」
青ざめた顔。
「この前の…俺の話…ちゃんと聞いてた…?姉さんが好きだって…俺…ちゃんと言ったよね…?聞いて…なかったの…?」
「あんなの気の迷ーー」
「気の迷いですんだら、こんなに苦しむもんかっ!!」
透が壁を殴りつけて怒鳴った。
突然見せられた激しい怒りに硬直する。
「こんな…ずっと…ずっと…我慢してっ…それでも我慢できなくてっ…!……もう…どうしようもなくなってっ…だからっ…姉さんに…伝えたのにっ…姉さん…そんな風に…思ってたんだ…」
「…だって…あんたあれっきり…」
青白い顔をして怒鳴る透に、震える声でなんとか言い返したけれど
「そうだよ!姉さんと…やっとできて…嬉しくてっ…何度も何度も思い返してっ…姉さんも落ち着く時間が必要かなって我慢してたのに…姉さん…そんな風にっ…」
こんなに強い怒りを向けられたことは初めてで。身体が竦んで動けない。
「もういいよ…」
俯いた透の肩は震えていた。
泣いて…る?
「…透…?」
「もう我慢なんかしないっ…手加減なんかしないっ…俺がどれだけ姉さんを好きか…思い知ればいいっ…!」
泣きながら顔を上げた透にのしかかられ、剥き出しの肩を噛まれた。
「痛っ…!」
「姉さんなんかっ…姉さんなんかっ…!」
「やっ…透っ…!」
暗く深い瞳で睨みつけられた。
「……ぐちゃぐちゃのぼろぼろに、なればいい…」
「やだっ…!」
怖い…透が…
肩に透の指がキツく食い込んだ。
「もう二度と…もう二度とっ…そんなこと言わせないっ…!こんな何年も続く気の迷いがあるもんかっ!こんなっ!壁の向こうの姉さんのことばかり考えてっ…姉さんの彼氏を紹介されてっ…嫉妬に気が狂いそうになって…!他に何人女を抱いても忘れられないっ…そんな気の迷いがあるもんかっ!」
二の腕を噛まれる。柔らかいそこを。容赦なく思いきり。
「痛いっ…!透っ…やめてっ…!」
「痛い?当たり前だよ。痛くしてるんだから。もう他の人に見せられない身体にしてやるよ。身体中にいっぱい歯型つけて。「嫉妬深い彼氏ですね」って笑われて「これ、弟につけられたんです」って言える?ねぇ、姉さん。「私のことが死ぬほど好きな弟につけられたんです」って言える?」
肩を…首を…腕を…噛まれる…何度も…何度も…齧られる…
「痛いっ…やだっ…透っ…やだっ…」
手首も…噛まれる…歯型が…何個も…何個も…増えていく…
「しょうがないよ…姉さん…こうでもしないと…俺の気持ち…わかってくれないでしょ?」
胸も噛まれた。痛くてたまらない。
「わかったっ…わかったからっ…!」
「どうだか…」
低く暗い呟き。
…怖い。よく知っている筈の弟が怖い。どこかに堕ちてしまいそうな弟が……弟を…失ってしまいそうで…怖い…
「ごめんっ…ごめんね透っ…わかったからっ…」
泣きながら必死に謝る。
痛みより透を失いそうな恐怖の方が強くて、肌を噛む透の頭を抱きしめた。
そこから、帰ってきてーー
「………本当に?」
「…わかった…から…」
彼は、私にとっては可愛い弟。こんなことをされても、やっぱり大切で。
失いたくない…失えない…
「…じゃあ…約束して…」
少しだけ、透の声が落ちついた。
「…約…束?」
「もう二度と…俺の気持ちを疑ったりしないって…約束して」
「わかっ…た…」
「じゃあ言って…「透は私以外の女なんて目に入らない…他の女を抱きながら…私の名前を呼ぶくらいに…私のことが好き」って…」
「え…」
思わず呆然と透を見つめる。
「そんなこと…したの…?」
「…したよ」
ふて腐れたような顔。
見慣れた表情に、微かに安堵する。
「好きな人の身がわりでもいいから抱いてくれとか、気持ち悪いこと言う女がいたから。でも、姉さんの代わりになんて誰もなれっこないって、思い知らされただけだった」
悔しそうに唇を噛んで。
「姉さんじゃなきゃダメだって、思い知らされただけだった…っ…」
透の手が、私の頬に伸ばされた。
「姉さん…言って…弟の透は…私じゃなきゃダメだって…」
「透…」
「言って…好きだよ…好きなんだ姉さん…姉さんが…好き…好きだ…好き……」
そんなに…好き…なの…?
透の唇が、肌に触れる。今度は優しく…
「透は…私が…好き……」
呆然と、呟く。
「そうだよ…」
嬉しそうに、頬にキスされた。
「でも…私は…」
とても気持ちを返せそうにない…
唇を指で押さえられ、その先の言葉は封じられた。
「言わないで。わかってるから…」
切なげな視線。
「今は…俺が本気で姉さんを好きだって…それだけわかってくれてたら…それでいいから…」
耳に…首に…顔に…キスされる…
「もう一回、言って…」
目の奥を…見つめられて…逸らせない…
「透は…私が…好き……」
「うん…ごめんね………こんな弟で…」
階段を上がると、弟がドアの脇に立っていた。壁に背を預けて。
無視してそのまま前を通り過ぎようとしたら、腕をつかまれ部屋に引きずり込まれた。
「なっ…」
一瞬の出来事に驚く口を塞がれる。
舌が、入ってきた。
「っ…!」
「姉さん…姉さん…」
身体を押されバランスを崩して、よろけてベッドに後ろから倒れ込んだ。
「んっ…」
キスが…深い…
「姉さん…」
「っ…や…」
「…っ…姉さん…」
透の手が、胸を這う。
あれ以来そういう素振りを見せなかったから、一度したら満足したのだと思っていたのにっ…
「姉さんっ…」
「やめっ…透っ…」
「姉さん…っ…」
「やっ…!溜まってるなら他の子としなさいよっ!」
なんとか突き飛ばすと、透は呆然と目を見開いた。
「何…言ってるの?…姉さん…」
青ざめた顔。
「この前の…俺の話…ちゃんと聞いてた…?姉さんが好きだって…俺…ちゃんと言ったよね…?聞いて…なかったの…?」
「あんなの気の迷ーー」
「気の迷いですんだら、こんなに苦しむもんかっ!!」
透が壁を殴りつけて怒鳴った。
突然見せられた激しい怒りに硬直する。
「こんな…ずっと…ずっと…我慢してっ…それでも我慢できなくてっ…!……もう…どうしようもなくなってっ…だからっ…姉さんに…伝えたのにっ…姉さん…そんな風に…思ってたんだ…」
「…だって…あんたあれっきり…」
青白い顔をして怒鳴る透に、震える声でなんとか言い返したけれど
「そうだよ!姉さんと…やっとできて…嬉しくてっ…何度も何度も思い返してっ…姉さんも落ち着く時間が必要かなって我慢してたのに…姉さん…そんな風にっ…」
こんなに強い怒りを向けられたことは初めてで。身体が竦んで動けない。
「もういいよ…」
俯いた透の肩は震えていた。
泣いて…る?
「…透…?」
「もう我慢なんかしないっ…手加減なんかしないっ…俺がどれだけ姉さんを好きか…思い知ればいいっ…!」
泣きながら顔を上げた透にのしかかられ、剥き出しの肩を噛まれた。
「痛っ…!」
「姉さんなんかっ…姉さんなんかっ…!」
「やっ…透っ…!」
暗く深い瞳で睨みつけられた。
「……ぐちゃぐちゃのぼろぼろに、なればいい…」
「やだっ…!」
怖い…透が…
肩に透の指がキツく食い込んだ。
「もう二度と…もう二度とっ…そんなこと言わせないっ…!こんな何年も続く気の迷いがあるもんかっ!こんなっ!壁の向こうの姉さんのことばかり考えてっ…姉さんの彼氏を紹介されてっ…嫉妬に気が狂いそうになって…!他に何人女を抱いても忘れられないっ…そんな気の迷いがあるもんかっ!」
二の腕を噛まれる。柔らかいそこを。容赦なく思いきり。
「痛いっ…!透っ…やめてっ…!」
「痛い?当たり前だよ。痛くしてるんだから。もう他の人に見せられない身体にしてやるよ。身体中にいっぱい歯型つけて。「嫉妬深い彼氏ですね」って笑われて「これ、弟につけられたんです」って言える?ねぇ、姉さん。「私のことが死ぬほど好きな弟につけられたんです」って言える?」
肩を…首を…腕を…噛まれる…何度も…何度も…齧られる…
「痛いっ…やだっ…透っ…やだっ…」
手首も…噛まれる…歯型が…何個も…何個も…増えていく…
「しょうがないよ…姉さん…こうでもしないと…俺の気持ち…わかってくれないでしょ?」
胸も噛まれた。痛くてたまらない。
「わかったっ…わかったからっ…!」
「どうだか…」
低く暗い呟き。
…怖い。よく知っている筈の弟が怖い。どこかに堕ちてしまいそうな弟が……弟を…失ってしまいそうで…怖い…
「ごめんっ…ごめんね透っ…わかったからっ…」
泣きながら必死に謝る。
痛みより透を失いそうな恐怖の方が強くて、肌を噛む透の頭を抱きしめた。
そこから、帰ってきてーー
「………本当に?」
「…わかった…から…」
彼は、私にとっては可愛い弟。こんなことをされても、やっぱり大切で。
失いたくない…失えない…
「…じゃあ…約束して…」
少しだけ、透の声が落ちついた。
「…約…束?」
「もう二度と…俺の気持ちを疑ったりしないって…約束して」
「わかっ…た…」
「じゃあ言って…「透は私以外の女なんて目に入らない…他の女を抱きながら…私の名前を呼ぶくらいに…私のことが好き」って…」
「え…」
思わず呆然と透を見つめる。
「そんなこと…したの…?」
「…したよ」
ふて腐れたような顔。
見慣れた表情に、微かに安堵する。
「好きな人の身がわりでもいいから抱いてくれとか、気持ち悪いこと言う女がいたから。でも、姉さんの代わりになんて誰もなれっこないって、思い知らされただけだった」
悔しそうに唇を噛んで。
「姉さんじゃなきゃダメだって、思い知らされただけだった…っ…」
透の手が、私の頬に伸ばされた。
「姉さん…言って…弟の透は…私じゃなきゃダメだって…」
「透…」
「言って…好きだよ…好きなんだ姉さん…姉さんが…好き…好きだ…好き……」
そんなに…好き…なの…?
透の唇が、肌に触れる。今度は優しく…
「透は…私が…好き……」
呆然と、呟く。
「そうだよ…」
嬉しそうに、頬にキスされた。
「でも…私は…」
とても気持ちを返せそうにない…
唇を指で押さえられ、その先の言葉は封じられた。
「言わないで。わかってるから…」
切なげな視線。
「今は…俺が本気で姉さんを好きだって…それだけわかってくれてたら…それでいいから…」
耳に…首に…顔に…キスされる…
「もう一回、言って…」
目の奥を…見つめられて…逸らせない…
「透は…私が…好き……」
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