【完結・R18】弟は私のことが好き

ハリエニシダ・レン

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3 またこんな…

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「姉さん…」

階段を上がると、弟がドアの脇に立っていた。壁に背を預けて。
無視してそのまま前を通り過ぎようとしたら、腕をつかまれ部屋に引きずり込まれた。

「なっ…」

一瞬の出来事に驚く口を塞がれる。
舌が、入ってきた。

「っ…!」

「姉さん…姉さん…」

身体を押されバランスを崩して、よろけてベッドに後ろから倒れ込んだ。

「んっ…」

キスが…深い…

「姉さん…」

「っ…や…」

「…っ…姉さん…」

透の手が、胸を這う。
あれ以来そういう素振りを見せなかったから、一度したら満足したのだと思っていたのにっ…

「姉さんっ…」

「やめっ…透っ…」

「姉さん…っ…」

「やっ…!溜まってるなら他の子としなさいよっ!」

なんとか突き飛ばすと、透は呆然と目を見開いた。

「何…言ってるの?…姉さん…」

青ざめた顔。

「この前の…俺の話…ちゃんと聞いてた…?姉さんが好きだって…俺…ちゃんと言ったよね…?聞いて…なかったの…?」

「あんなの気の迷ーー」

「気の迷いですんだら、こんなに苦しむもんかっ!!」

透が壁を殴りつけて怒鳴った。
突然見せられた激しい怒りに硬直する。

「こんな…ずっと…ずっと…我慢してっ…それでも我慢できなくてっ…!……もう…どうしようもなくなってっ…だからっ…姉さんに…伝えたのにっ…姉さん…そんな風に…思ってたんだ…」

「…だって…あんたあれっきり…」

青白い顔をして怒鳴る透に、震える声でなんとか言い返したけれど

「そうだよ!姉さんと…やっとできて…嬉しくてっ…何度も何度も思い返してっ…姉さんも落ち着く時間が必要かなって我慢してたのに…姉さん…そんな風にっ…」

こんなに強い怒りを向けられたことは初めてで。身体が竦んで動けない。

「もういいよ…」

俯いた透の肩は震えていた。
泣いて…る?

「…透…?」

「もう我慢なんかしないっ…手加減なんかしないっ…俺がどれだけ姉さんを好きか…思い知ればいいっ…!」

泣きながら顔を上げた透にのしかかられ、剥き出しの肩を噛まれた。

「痛っ…!」

「姉さんなんかっ…姉さんなんかっ…!」

「やっ…透っ…!」

暗く深い瞳で睨みつけられた。

「……ぐちゃぐちゃのぼろぼろに、なればいい…」

「やだっ…!」

怖い…透が…
肩に透の指がキツく食い込んだ。

「もう二度と…もう二度とっ…そんなこと言わせないっ…!こんな何年も続く気の迷いがあるもんかっ!こんなっ!壁の向こうの姉さんのことばかり考えてっ…姉さんの彼氏を紹介されてっ…嫉妬に気が狂いそうになって…!他に何人女を抱いても忘れられないっ…そんな気の迷いがあるもんかっ!」

二の腕を噛まれる。柔らかいそこを。容赦なく思いきり。

「痛いっ…!透っ…やめてっ…!」

「痛い?当たり前だよ。痛くしてるんだから。もう他の人に見せられない身体にしてやるよ。身体中にいっぱい歯型つけて。「嫉妬深い彼氏ですね」って笑われて「これ、弟につけられたんです」って言える?ねぇ、姉さん。「私のことが死ぬほど好きな弟につけられたんです」って言える?」

肩を…首を…腕を…噛まれる…何度も…何度も…齧られる…

「痛いっ…やだっ…透っ…やだっ…」

手首も…噛まれる…歯型が…何個も…何個も…増えていく…

「しょうがないよ…姉さん…こうでもしないと…俺の気持ち…わかってくれないでしょ?」

胸も噛まれた。痛くてたまらない。

「わかったっ…わかったからっ…!」

「どうだか…」

低く暗い呟き。
…怖い。よく知っている筈の弟が怖い。どこかに堕ちてしまいそうな弟が……弟を…失ってしまいそうで…怖い…

「ごめんっ…ごめんね透っ…わかったからっ…」

泣きながら必死に謝る。
痛みより透を失いそうな恐怖の方が強くて、肌を噛む透の頭を抱きしめた。
そこから、帰ってきてーー

「………本当に?」

「…わかった…から…」

彼は、私にとっては可愛い弟。こんなことをされても、やっぱり大切で。
失いたくない…失えない…

「…じゃあ…約束して…」

少しだけ、透の声が落ちついた。

「…約…束?」

「もう二度と…俺の気持ちを疑ったりしないって…約束して」

「わかっ…た…」

「じゃあ言って…「透は私以外の女なんて目に入らない…他の女を抱きながら…私の名前を呼ぶくらいに…私のことが好き」って…」

「え…」

思わず呆然と透を見つめる。

「そんなこと…したの…?」

「…したよ」

ふて腐れたような顔。
見慣れた表情に、微かに安堵する。

「好きな人の身がわりでもいいから抱いてくれとか、気持ち悪いこと言う女がいたから。でも、姉さんの代わりになんて誰もなれっこないって、思い知らされただけだった」

悔しそうに唇を噛んで。

「姉さんじゃなきゃダメだって、思い知らされただけだった…っ…」

透の手が、私の頬に伸ばされた。

「姉さん…言って…弟の透は…私じゃなきゃダメだって…」

「透…」

「言って…好きだよ…好きなんだ姉さん…姉さんが…好き…好きだ…好き……」

そんなに…好き…なの…?
透の唇が、肌に触れる。今度は優しく…

「透は…私が…好き……」

呆然と、呟く。

「そうだよ…」

嬉しそうに、頬にキスされた。

「でも…私は…」

とても気持ちを返せそうにない…
唇を指で押さえられ、その先の言葉は封じられた。

「言わないで。わかってるから…」

切なげな視線。

「今は…俺が本気で姉さんを好きだって…それだけわかってくれてたら…それでいいから…」

耳に…首に…顔に…キスされる…

「もう一回、言って…」

目の奥を…見つめられて…逸らせない…

「透は…私が…好き……」

「うん…ごめんね………こんな弟で…」


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