【完結・R18】弟は私のことが好き

ハリエニシダ・レン

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8 どうしたら…

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目が覚めると、もう透はいなかった。
ローテーブルの上に一枚のメモ。

『おはよう姉さん
バイトがあるから、もう行くね』

複雑な気持ちになった。

嘘かもしれない。
前回、朝起きた時に、私は酷く透を傷つけてしまったから。

でも、ほっとしてもいた。
また、あんな風に透の傷ついた顔を見るのは嫌だった。あんな風に傷つけてしまうのはもう嫌だった。だから、顔を合わせずに済んでほっとした。
チクリと胸の片隅で沸いた「寂しい」という感情には、気づかない振りをした。

いつの間にか床に落ちていたワンピースを拾い上げ、頭から被る。
…透に脱がされた下着も拾って履いた。服を着たことで、人心地がつく。

はあっと、大きく息をついた。
吸い込んだ空気に混じる、部屋についた透の匂いに刺激されて、昨日のことを思い出しかける。

ダメ…いけない…

頭を振って振り払う。
でも、私は確実に、透に惹かれかけている。
心より先に身体が、透との行為に慣れ始め、悦んでいる。
そして、身体だけではなく心ももう…

いけない…こんなの…いけない…

「甘えて」

そう囁いた透の声を思い出して、身体がぞくりと震えた。

「透…」

甘えて求める声が、部屋に響いた。透のいない透の部屋に。

「透…」

ベッドに、倒れ込む。
透の匂いのするベッド。
顔をシーツに擦り付ける。
透の匂いを吸い込む。
下腹部に熱さを感じた。

「透…」

自分で、胸に触れる。
先をつまむと甘い痺れが走った。

「透…」

もう片方の手は、当然のように下へと伸びる。下着の中へと手が滑り込んだ。

くちゅり

濡れたそこが、音を返した。
小刻みに揺らしながら、中へと埋めていく。

「透っ…」

中ほどまで埋まった指を、折り曲げてぐねぐねと動かす。

この指が、透の指ならよかったのに…

そう思いながら、根元まで一気に突き入れた。

「んっ…」

気持ちいい…
でも、透の指ならもっと…

透はいないから、せめて透の匂いを嗅ぐ。いつも透が寝ているベッドの匂い。シーツに染みついた透の匂いに、肺が満たされる。

「透…」

気持ちいい…透…気持ちいいの…でも…
もっと気持ちよくなりたいの…

「透っ…」

甘えるように何度も呼ぶ。
シーツに身体を擦り付ける。
透の匂いを少しでも自分につけたくて。

「透…好き…」

言葉が溢れた。

「好き…好き……好き………」

呟きながら腰を振って指を動かす。

「透…気持ちいいの…私…気持ちい…」

ぐちゃりぐちゃりと激しい音を立てながら、指を動かす。

「透…ねぇ…もう…私…イっちゃう…もう…あっ…あっ…あっ…………っ!!!」


ぐったりとして、荒い呼吸を繰り返す。段々それは、ゆっくりとした呼吸に変わっていく。ぼんやりとしていた頭が働きだす。

私は…今、いったい何を…

我に返って、指を身体の中から抜いた。ぐちゃぐちゃになった身体の中から。

ぐちゅり、と酷く淫猥な音がした。抜いた指には、愛液がべっとりとこびりついていた。慌ててそれをシーツで拭う。その後で、ここは弟のベッドだったと思い出して一瞬焦る。けれど、昨日の行為で既に散々染みついてしまっていることに思い至って、ベッドに突っ伏した。

どうしたら…いいの…
さっき私…

自分がしたことが、信じられなかった。
あれではまるで、私も透を…

その時、ガチャリと音がしてドアが開いた。

「…姉さん…?」

お茶のグラスを手にした透が、そこに立っていた。
惚けたような顔。
私が未だにこの部屋にいるなんて、思ってもいなかったのだろう。

ついさっきの自分の痴態を思い出して、顔が熱くなる。私、弟の留守に弟の部屋で…っ…

「姉さん?熱あるの!?」

透の声に慌てて跳ね起きて、近づいてこようとした彼の脇をすり抜ける。

「なんでもないっ!」

手に持ったグラスの所為で動きが鈍い透を振り切って、自分の部屋に逃げ込んだ。

ガチャリと鍵をかける。
後を追ってくる慌てた足音が聞こえた。ドアを激しくノックされる。

「姉さん?姉さん!?大丈夫なの!?」

心配そうな声。

「熱あるんじゃないの!?」

「ないったら!」

「でも顔…」

「平気だからほっといて!」

恥ずかしさのあまり怒鳴った。
透はドアの前でしばらく迷っていたようだけれど、

「具合が悪くなったら、すぐに俺を呼んで。お願い…」

と縋るように言った。
それきり、ドアの前から動く気配はない。

「わかった…」

渋々そう返すと、ほっとしたように大きく息を吐いて、自分の部屋へと返っていった。

私の顔の熱は、しばらく引かなかった。


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