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5 怒り
「下がっていいわよ」
姫様のその言葉で、私たちはやっと退出を許された。
何故かそのままリチャード様に肩を抱かれ、少し廊下を歩いてどこかの一室に入った。口止めでもされるのだろうか。心配しなくても、こんなこと誰にも言えなど…
部屋に入った途端、ドアに背を押しつけられた。
「もう一度…いいだろうか…」
「え…?」
「あんな…あんなの…耐えられないっ…私が…今まで…どれだけ…努力をっ…してっ…」
つかまれた肩が痛い。
「せめて…君で…もう一度…」
ギラギラと、プライドを傷つけられた怒りに燃える瞳が私を射抜いた。
当然だ。
怒らない筈が、傷つかない筈がなかった。いくら理想の騎士であろうとしても。
いや、清廉たる騎士であろうとするリチャード様だからこそ。あのような真似をさせられて、いっそう傷ついた筈だ。
そして、リチャード様が、あのような真似をする羽目になったのは、すべて私の所為なのだ…。
頭ではそうわかっていても、男の人に間近からぶつけられる激しい怒りに、身体が竦んだ。
震える肩をつかむ手の力が、一層強くなった。
「あの避妊薬は、丸一日は効果がある…だから…」
リチャード様が、身体を近づけた。
…このままでは、リチャード様は今度は本当に、無理矢理私を抱いてしまいそうだった。そして終わった後で後悔する。
…そんな思いまで、この方にさせる訳にはいかない
「…はい…何度でも…お気の済むまで…」
震える腕を、リチャード様に差し伸べた。怯える身体を差し出した。
これは、私の受けるべき罰なのだ。
そう、受け入れた。
今度のリチャード様は、容赦がなかった。手加減など、欠片も感じられなかった。ただ、罵りながら、まるで痛めつけるかのように私を抱いた。
「クソっ…何故!この私がっ…」
リチャード様は、一度も「君の所為だ」とは言わなかった。けれども憎々しげなその瞳が、ぶつけられる身体が、そう言っているも同然だった。
それは、姫様への怒りなのかもしれなかった。でも、身体でそれを受け止めさせられる私には、その判別はつかなかった。
「嫌と言うほど犯してやる」
低い低い、独り言のような呟き。
声に出している自覚もないのかもしれない。
うつ伏せに体勢を変えさせられると、その責めは更に苛烈になった。先ほど破瓜を終えたばかりの私には、痛みでしかなかった。けれど私は「嫌だ」と叫びそうになる口を必死にシーツを噛んで堪えた。
これは、私が受け入れなければいけない罰なのだ。
リチャード様を、巻き込んだ罰。
体内を暴れ回る、暴力のようなそれに意識が消え、そしてまた痛みに目を覚ます。
それは、明け方まで続いた。
ふと、意識が覚醒した。
今はもう、嵐のようなそれは止んで、リチャード様は隣で眠っていた。
部屋に、戻らなければ
そう思い起き上がった手首をつかまれた。
「すまなかった」
眠っていると思ったリチャード様が、目を開けて真っ直ぐにこちらを見ていた。
「…いえ、合意の上…ですから…」
震えながらもそう首を振ると、引き寄せられ唇を塞がれた。
姫様の部屋で、抱かれる前にされた時のような優しい感触。
「もう一度…やり直させてくれ」
「………仕事が、ありますから…」
ずっと憧れていたリチャード様とはいえ、昨夜の扱いは、私の身体に彼に対する怯えを刻み込むには十分すぎた。
今すぐ、彼から離れたかった。
彼が怖くて仕方がなかった。
ともかく、距離を取りたかった。
なのに
「今日は私の世話をさせると伝えよう」
「っ…!」
未婚の騎士の「世話をする」。
それは、要するに性欲処理の相手をするということだ。
たまに、あるのだ。
歓楽街まで降りていく暇がなく、あるいは手間を嫌ってメイドにその代わりをさせることが。
口説かれて。
騙されて。
あるいは無理矢理手篭めにされて。
そういうことになったメイドは、それを「業務」として扱われ、その日は他の仕事を免除される。けれどそれは同時に、「そういう風に扱われた」と周りに知られるということでもあるのだ。
「それ…は…」
「姫様が繰り返し命ずるなら、遅かれ早かれ君のことは知れ渡るだろう」
「っ…」
「昨夜のことは…すまなかった。あのようなこと、君にすべきではなかった。…記憶を塗り替えさせて欲しい…」
そしてもう一度、優しく唇を塞がれた。啄むようにされ、思わず応えてしまう。リチャード様がそれに微笑んだ。
「頼む」
その穏やかな笑みにつられ、頷きを返してしまっていた。
姫様のその言葉で、私たちはやっと退出を許された。
何故かそのままリチャード様に肩を抱かれ、少し廊下を歩いてどこかの一室に入った。口止めでもされるのだろうか。心配しなくても、こんなこと誰にも言えなど…
部屋に入った途端、ドアに背を押しつけられた。
「もう一度…いいだろうか…」
「え…?」
「あんな…あんなの…耐えられないっ…私が…今まで…どれだけ…努力をっ…してっ…」
つかまれた肩が痛い。
「せめて…君で…もう一度…」
ギラギラと、プライドを傷つけられた怒りに燃える瞳が私を射抜いた。
当然だ。
怒らない筈が、傷つかない筈がなかった。いくら理想の騎士であろうとしても。
いや、清廉たる騎士であろうとするリチャード様だからこそ。あのような真似をさせられて、いっそう傷ついた筈だ。
そして、リチャード様が、あのような真似をする羽目になったのは、すべて私の所為なのだ…。
頭ではそうわかっていても、男の人に間近からぶつけられる激しい怒りに、身体が竦んだ。
震える肩をつかむ手の力が、一層強くなった。
「あの避妊薬は、丸一日は効果がある…だから…」
リチャード様が、身体を近づけた。
…このままでは、リチャード様は今度は本当に、無理矢理私を抱いてしまいそうだった。そして終わった後で後悔する。
…そんな思いまで、この方にさせる訳にはいかない
「…はい…何度でも…お気の済むまで…」
震える腕を、リチャード様に差し伸べた。怯える身体を差し出した。
これは、私の受けるべき罰なのだ。
そう、受け入れた。
今度のリチャード様は、容赦がなかった。手加減など、欠片も感じられなかった。ただ、罵りながら、まるで痛めつけるかのように私を抱いた。
「クソっ…何故!この私がっ…」
リチャード様は、一度も「君の所為だ」とは言わなかった。けれども憎々しげなその瞳が、ぶつけられる身体が、そう言っているも同然だった。
それは、姫様への怒りなのかもしれなかった。でも、身体でそれを受け止めさせられる私には、その判別はつかなかった。
「嫌と言うほど犯してやる」
低い低い、独り言のような呟き。
声に出している自覚もないのかもしれない。
うつ伏せに体勢を変えさせられると、その責めは更に苛烈になった。先ほど破瓜を終えたばかりの私には、痛みでしかなかった。けれど私は「嫌だ」と叫びそうになる口を必死にシーツを噛んで堪えた。
これは、私が受け入れなければいけない罰なのだ。
リチャード様を、巻き込んだ罰。
体内を暴れ回る、暴力のようなそれに意識が消え、そしてまた痛みに目を覚ます。
それは、明け方まで続いた。
ふと、意識が覚醒した。
今はもう、嵐のようなそれは止んで、リチャード様は隣で眠っていた。
部屋に、戻らなければ
そう思い起き上がった手首をつかまれた。
「すまなかった」
眠っていると思ったリチャード様が、目を開けて真っ直ぐにこちらを見ていた。
「…いえ、合意の上…ですから…」
震えながらもそう首を振ると、引き寄せられ唇を塞がれた。
姫様の部屋で、抱かれる前にされた時のような優しい感触。
「もう一度…やり直させてくれ」
「………仕事が、ありますから…」
ずっと憧れていたリチャード様とはいえ、昨夜の扱いは、私の身体に彼に対する怯えを刻み込むには十分すぎた。
今すぐ、彼から離れたかった。
彼が怖くて仕方がなかった。
ともかく、距離を取りたかった。
なのに
「今日は私の世話をさせると伝えよう」
「っ…!」
未婚の騎士の「世話をする」。
それは、要するに性欲処理の相手をするということだ。
たまに、あるのだ。
歓楽街まで降りていく暇がなく、あるいは手間を嫌ってメイドにその代わりをさせることが。
口説かれて。
騙されて。
あるいは無理矢理手篭めにされて。
そういうことになったメイドは、それを「業務」として扱われ、その日は他の仕事を免除される。けれどそれは同時に、「そういう風に扱われた」と周りに知られるということでもあるのだ。
「それ…は…」
「姫様が繰り返し命ずるなら、遅かれ早かれ君のことは知れ渡るだろう」
「っ…」
「昨夜のことは…すまなかった。あのようなこと、君にすべきではなかった。…記憶を塗り替えさせて欲しい…」
そしてもう一度、優しく唇を塞がれた。啄むようにされ、思わず応えてしまう。リチャード様がそれに微笑んだ。
「頼む」
その穏やかな笑みにつられ、頷きを返してしまっていた。
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