サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

文字の大きさ
204 / 208
第六章 ベトナム旅行記・アイスコーヒーウイズミルク

204

しおりを挟む

        第26話


    天井のホーチミン 第四話


 バス発着場近くのキリスト教会を訪ねて、ちょうど礼拝の真っ最中だったその雰囲気に圧倒され、僕は少し頭が痛くなってきた。

 「急に頭が痛くなってきたから外に出て待ってるよ」と僕が言ったら、彼女達も何かに取り付かれたような元気のない表情で後に続いた。

 やっぱり今日は皆疲れているんだなと思いながら、市場に続くメインストリートを下っていくと、そこは昨日と同ように大勢の人で賑わっていた。

 オレンジさんが友人に送る絵葉書を買うために一軒の土産物屋に立ち寄ってから、市場の近くをうろうろした後、僕達はともかく夕食にしようと、宿に近い小さなレストランに入った。

 僕はトレッキングの疲れかあまり食欲がなく、彼女達も同様に昨夜ほど食欲がないようだった。
 彼女はカレー味のビーフ入りチャーハンにオレンジジュース、オレンジさんはシーフードチャーハンとマンゴージュースを注文し、僕はラオ・カイビールと普通のチャーハンという風に、今夜は全員チャーハンだった。

 彼女達はそれでも全部平らげてしまったが、僕はビールもチャーハンも半分程残してしまった。
 少し前からちょっと体が熱っぽい感じがしていて、ビールを半分も残してしまったことに対してオレンジさんが、「探偵さん、少し元気がないんじゃないの?」と心配そうに言ってくれた。

 この時も彼女は、「ヤッパ年だよ!」の一言で片付けてしまい、僕はガックリきてしまうのであった。

 ともかく宿に帰って昨日の雪辱戦をしないと気が済まない僕は、「よし!ここは大貧民がご馳走してやるよ」と言って、三万ドン程(約二百三十円)を支払って店を出た。

 再び彼女達の部屋で大富豪ゲーム(大貧民ゲーム?)を始めたが、僕はその前にオレンジさんから体温計を借りて(オレンジさんは用意が良くて、風邪薬や胃薬はもとより抗生物質まで持ってきていた)熱を計ると、三十七度少しあった。

 「微熱があるんじゃないの?」とオレンジさんは心配そうな顔であったが、僕は比較的平熱が高めで、いつも三十七度近くあるだけに、これくらいは平熱だ。
 雪辱戦を開始した。

 ところが相変らず僕は平民には時々なるが、概して大貧民が多く、午後十時頃にオヒラキにする時はやはり大貧民の身分であった。
 トランプなんかで何度も負けると、このあとますます偉そうに言われるから、一度はギャフンと言わせたかったが、返り討ちに遭いさらに落ち込む僕だった。

 戦いのあとはオレンジさんがマンゴーを食べようよといって、丁寧にナイフで皮をむき、一口程度に切ってお皿に入れてくれた。(オレンジさんは本当に優しい人だ。きっといい奥さんになると思う)

 「風邪に良く効くんだよ」と彼女はマンゴーにレモンやライムをたっぷりかけて僕に勧めた。

 彼女は常にレモンを持ち歩いているといっても過言でないくらいにレモンが好きなのだ。

 このように本当に個性的な二人の女性と過ごしている僕であるが、いよいよ体は熱っぽく、少し寒気もしてきたので、オレンジさんに風邪薬を二つ分けてもらって、ミネラルウオーターで流し込んでからヨタヨタになって部屋に戻った。

 ベッドに倒れ込み、TVのスイッチを入れると、ベトナム国営放送はホー・チ・ミンの肖像や独立戦争の模様などを放映しており、ますます頭が痛くなって来た。

 別にホー・チ・ミンがどうのこうの言うわけじゃないんだが、ベトナム語の甲高い声でのアジテーションやホー・チ・ミンの肖像とベトナム軍隊の画面ばかりが写っていて一種異様な感じを受けてしまうのだ。

 ますます寒気がひどくなるので、布団にくるまってすぐに寝たが、夜中に何度も目が覚め、その度にTシャツが汗でびっしょりになっており、朝まで三度も着替えた。

 今日のトレッキングで、雨で濡れたシャツのまま長時間いたのできっと風邪を引いたのだと思うが、僕は結構健康には自信があって、風邪なんて三年に一度くらいしか引かないのに、一体どうなってしまったのだろう。

 【やっぱり彼女の言うとおり年なのか】

つづく・・・
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...