サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

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第六章 ベトナム旅行記・アイスコーヒーウイズミルク

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        第28話


    天井のホーチミン 第六話


 彼女達は特に彼氏がいるわけではないが、現在の生活にある程度満足をしているようで、特にオレンジさんなんかは一流企業のOLらしく、十数年も勤めているとそれなりの収入もあるし、欲しい物はよほど高価なものでなければ手に入れる事は容易であるらしい。

 今更結婚して自由になるお金が少なくなったり、相手の男性が幸せにしてくれる保証はないから、無理に結婚は考えていない、というようなことをおっしゃるのだ。

 今の時代は女性が男性に頼ることなく生きて行くことは、昔に比べると随分たやすくなっていて、社会がそういうメカニズムになってきているのではないかと僕も思うのだ。
 ただオレンジさんはメルトモが何人かいて、そのうちの妻子ある男性と時々会っているらしく、今度東京ドームに巨人・阪神戦を見に行く予定と、楽しそうに話していた。

 肝心の彼女の方はいつも「私はもてない、もてない」と口癖のように言いながら、結構いろいろと努力をしている様子で、きっとそのうち誰かがあちこちに張りめぐらした網にかかることだろう。

 「ペロ吉はどうなのさ?」

 彼女はさりげなく聞いてきた。

 僕はあまり自分のことを言いたくなかったのだが、最近前妻のことで嫌な思いをしたことがあったので、つい喋ってしまった。

 僕は結婚して二人の息子がいるのだが、九年程前に離婚に至り、子供は妻のもとで成長して、現在二人とも高校生である。

 離婚後ずっと養育費を十万円以上も支払っていて、それは誰に言われるでもなく僕が自ら送っているわけで、離婚当初なんかは毎月十五万円も送っていたくらいなのである。
 勿論息子とは月に二回程度は会っており、彼等は特に卓越したところはないにしても横道に逸れることなく、素直で真面目な人間に育っている。

 そのような状況で離婚後今日まで来たのだが、数ヶ月前に前妻が乳癌を患っていることが判明し、つい最近切除手術をしたばかりである。
 僕は前夫という立場であるが、要望により手術前の医師の説明を聞くため病院を訪れた。
 するとそこには前妻の両親や兄、姉が来ていて、九年ぶりに顔を合わせた。

 「ご無沙汰しています」

 僕は丁寧に挨拶をした。

 ところが前妻の父親や姉は僕に挨拶もなく、完全に無視をしているような態度だった。

 彼等からすれば大切な娘(妹)がこんな目にあったのは、僕のせいだときっと思っているのだろう。【冗談じゃない!】

 確かに彼女はいろいろと苦労があったかもしれないが、全部女手一つで育てましたというわけではないのだ。

 金銭的なことはともかくとして、子供に対して社会的なことはいろいろと僕が教えてきたし、高校入試前には毎週僕の家に呼んで勉強を教えていたじゃないか。

 僕だって自分のことだけ考えればもっと違った人生があったのかもしれないが、子供が一応十八才くらいになるまではと思って、自分なりに考えて協力してきたのだ。
 それが何だ、あの態度は。

 僕はこんなプライベートなことを話している自分にふと我に返り、彼女達にとっては何にも面白い話ではないことに気がつき、恥ずかしくて黙り込んでしまった。

 時刻はまだ午後一時前だったが、僕は体がまた熱っぽくなってきたので、オレンジさんに風邪薬と抗生物質を分けてもらって部屋に帰り、熱を計ると三十八度九分もあったので、再び布団にくるまって寝た。

 話したくないことを話してしまったことに、僕は少し自己嫌悪に陥ってしまった。

 これもきっと熱のせいに違いないのだ。

 つづく・・・
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