サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

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サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 ㉙

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     第一章 2001年 春

       二十九

 タイヤチューブボート遊びのあと、僕とHさんとは昨夜夕食を食べたネットカフェ併設のオープンレストランで軽食を摂りながらビアラオを飲んだ。

 ラオスサラダとフランスパン・ツナサンドを注文して二人で分けて、差し向かいでこんなにリラックスするのは、これが初めてのような気がした。

 彼女はとても興味深い女性なので、僕はこれまでの彼女の旅行歴や仕事のことなどをいろいろと訊いた。

 彼女は大学生時代に友人と二人でインドに初めてバックパッカーとして旅をしたのがきっかけで、これまでタイ、ミャンマー、マレーシア、ネパール、インドネシアなどを訪れた経験があると語った。

 インドでは一ヶ月も両親に連絡をしなかったので、インドの日本大使館に捜索願いまで出されたと笑っていた。
 彼女のあっけらかんとしたというか、朗らかで楽天的な人柄が窺えた。

◆明るい性格のHさん



 独身の妙齢の女性が海外を旅をしていて、一か月も両親に連絡しないということは笑い事ではないと思ったが、そのような彼女の明るい人柄がとても素敵に思えた。

 彼女は神奈川県の川崎市に両親と弟さんとで暮らしているらしい。

 僕の友人が横浜の港北区に住んでいて、年に数回は出張の際に彼の家に泊めてもらって彼の職場仲間達などを呼んで、大阪名物のたこ焼きやお好み焼を僕が振舞うのですよと言うと、「港北区なら私の家から車で10分程ですよ。今度来られたら是非呼んで下さいね」と興味深そうに言った。

 僕は単純だから、次に関東方面に仕事が入ればきっと招待しようと思ったのだった。

 そんな楽しい会話をしていると、何とビエンチャンで大勢の日本人旅行者と夕食を共にしたあの美人が、バックパックを背負ってバス乗り場の方向から歩いて来た。

◆左側の一番手前の彼女です。



 確かにラオスの人口は少ないが、このように旅のルートは同じであることが多く、去年のベトナム旅行でもサ・パで一緒だった日本人や欧米人の多くと、次のバック・ハーで再会した。

 ラオスは特に小さな町が多く、ビエンチャンからルアンパバーンに向かう北部ルートはほぼ同じだから、このように偶然何人もの旅行者と再会するのだろう。

 彼女に声をかけて訊くと、ビエンチャン発午後一時のバスに乗ってさっき到着したとのことだった。
 ローカルバスで四時間だけど、意外と早く着いたと言っていた。

 彼女は僕達が泊まっている宿に泊まりたいと言ったが、あいにくタビソックゲストハウスはフルなんですと言うと、地球の歩き方に掲載されている宿を訪ねてみるとのことだった。

 そして今夜夕食を一緒にどうですかと誘うと「もちろんお願いします」と快諾してくれ、僕達の宿の中庭で午後六時半頃に約束をして別れた。

 それから僕達は宿に帰って、名物息子のタビソックと中庭で遊んで夜までの時間を過ごした。

◆タビソックと僕(前にも貼ったかな)



 中庭でタビソックの写真を撮ったりしていると、宿の女将さんが大きなパイナップルを切ってくれて、昼寝から起きて来たN君も交えてご馳走になった。

 僕は普段果物を殆ど食べないのだが、こんなに美味しいのなら毎日でも食べたいと思った。

 さらに女将さんは中庭でタケノコを削り始め、これはご家族の今夜のメニューの一部なのだが、僕達にもタケノコスープとして振舞ってくれたのだった。

 中庭の丸い石テーブルでビアラオを女将さんに注文して、僕とN君とHさんとでスープをいただきながらくつろいでいると、K子さんがお父さんを連れてやって来た。

 お父さんは六十一才で、去年定年退職を迎えて今は悠々自適でのんびり過ごしており、今回初めて娘さんの旅に同行したとのことだった。

 年令的なこともあるが、穏やかで丁寧な物腰が聞き方をとても安心させる人で、K子さんは良いお父さんを持って羨ましいと思ったが、K子さんはお父さんに対してかなり言いたい放題だった。(笑)

 お父さんはそんなK子さんを大きな心で受け止めて終始ニコニコとしており、親というものはこれくらいどっしりするべきだと、僕もふたりの息子を持つ父親としてつくづく思うのだった。

 さてその後、先程の美人(この女性は名前を訊くのを忘れたので残念に思っています。年令は二十四才で、どういう訳か今春大学を卒業したと言っていた)も約束の時間に現れた。

 女将さんが家族の主食であるカオニャーオ(もち米で作ったごはん、手で少しこねて食べます)も小さな竹篭に入れて振舞ってくれ、途中N君が近くの屋台でチキン料理(ガイヤーン)などを買ってきたので、今夜はレストランには行かないでここで夕食にしましょうということとなった。

 丸い石テーブルを囲んで僕達三人とK子さん父子、そして美人さんの計六人は、ラオスに来て毎夜のようになってしまった日本人同士の夕食を楽しんだ。

 K子さんのお父さんは上品で理知的なタイプなのだがかなり饒舌で、「日本の町工場の社長がラオス政府に九百万円を寄付して、ビエンチャンに中学校を建てたらラオス一の規模のものが完成して、その開校式に招待されて大歓迎を受けたらしいです。日本ではその十倍以上は費用がかかりますからなぁ」と、ボランティアに興味があるようなことを話していた。

 しばらくすると、外から岡崎大五さんが帰って来たので、「一緒にいかがですか?」と誘って、さらに賑やかな夕食の席となった。

 ここからは旅行に関する話題になって、岡崎さんはやはり旅行作家ということもあって、世界の様々な国の情報をよく知っていた。

 K子さんのお父さんがブータンという国に興味があると言うと、「あの国は落ち着けますよ。義理堅い国です。日本の皇室に対しても礼節を徹底していますから、日本人には友好的です」などと、実際に岡崎氏は訪問しているので、生の有力な情報を教えてくれるのであった。

 このように夜遅くまで、宿の女将さんの親切な手料理で、日本人旅行者同士が旅行論や人生論を、ああでもないこうでもないなどと好き勝手に話し合うということは、日本でのややこしい人間関係とは無縁であるから、この上なく楽しいものだと僕は感激したのであった。

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