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第二章 2002年 春
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 57
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第二章 2002年 春
57 カオピャック
去年は二泊したサイスリーゲストハウスに今年も宿を取り、午前中だけで汗びっしょりになった身体をシャワーで洗い流し、Tシャツに短パンというラフな服装に着替えて階下に降りて行った。
勿論、灼熱の国・ラオスなのだから昼間でもバンダナは欠かせない。
R子さんは僕を驚かそうと思ったのかどうか分からないが、つばの広いハイカラな帽子をかぶって出てきた。
でもそれよりも、彼女が着替えた短めのタンクトップから可愛らしいおへそが見えそうで、またしても僕は目のやり場に困惑してしまうのだった。
何だか盆と正月がいっぺんにやって来たような気分になって、僕はR子さんとビエンチャンの街中に飛び出すように出かけた。
「ともかく昼食にしましょう。何が食べたいですか」
「そうですね。先程の方が是非とおっしゃっていたカオピャとかいう讃岐うどんを食べてみたいです」
カオピャは讃岐うどんではなく、讃岐うどんのように麺がシコシコしているということだが、彼女のリクエストに応えるのは簡単だった。
何しろビエンチャンは昨年に続いて二度目なんだから。
「じゃあハットリさんが推奨していた店に行きましょう」
僕はその店の場所も当然知っていたので、胸を張って歩き始めた。
ナンプ広場を北に上がり、最初の道路に当たる手前左側の小さなレストランだ。
店は四人掛けテーブルが八卓ほどの家庭的な雰囲気だが、ここはフランスパンサンドイッチも店先で軽く炙ってトッピングの野菜などを挟んで売っている。
実は去年も一度朝食を食べに入り、念願のフランスパンサンドイッチと、グラスの底に一センチ以上もコンデンスミルクが入っている、死ぬ程甘ったるいラオコーヒーを注文して、本当に瀕死の状態になって宿に帰ったのを思い出す。
テーブルに着くと、人の良さそうな御主人がメニューを持ってきたが、それを見ることもなく、カオピャッ(カオピャック)をふたつ、それとビアラオを一本注文した。
ラオスに入ってビアラオを飲まないと話にならない。
ふたつのグラスにナミナミとビアラオを注いで、「無事のラオス入国に乾杯!」とグラスを鳴らし、僕たちは渇いた喉に冷たいビールを流し込んだ。
しばらくして運ばれてきたカオピャックは、スープは鶏がらベースの薄味でベトナムのフォーみたいだが、麺はハットリさんが言ったとおり米粉だけで作られているのではなくて、シコシコと本当にコシがあり、讃岐うどんに似ているというのも納得ができるものだった。
ふたりとも殆ど無言のままこのカオピャックを一気に食べて、R子さんなんかはスープを最後の一滴まで飲み干すのだった。
「美味しかったですねぇ」と、彼女は心の底から嬉しそうな顔をして言った。
女性は変に遠慮がちだったり気取ったりして、料理を残すのが奥ゆかしいとか可愛いとか勘違いしている人がいるようだが、彼女のように屈託なく美味しいものは美味しいと言って、気持ちよいくらいの食欲があるほうがずっと素敵に思う。
まあ僕の好みの話をしても仕方がないが、ふたりで一万六千Kip(約百八十円ほど、今回は一万Kipがちょうど百円ほどのレートだった)を支払って店を出ると、すぐ前にトゥクトゥクが客待ちをしていた。
僕は去年このビエンチャンに二泊しているから、この町での見所となるバトゥーサイやタートルアンなどは既に訪れていたのだが、R子さんに気を遣わせないために、「いやぁ、去年は国境で知り合った関西から来ていた男性とビアラオばかり飲んでいて、どこも訪れていないのですよ」と嘘をついた。
人の良さそうなトゥクトゥクの男性に、「バトゥーサイからタートルアン、そして薬草サウナに行きたいけど、いくら?」と僕は問いかけた。
空を見上げると雲ひとつなく、カラッとした暑さは心地よく、本当に灼熱のビエンチャンだった。
57 カオピャック
去年は二泊したサイスリーゲストハウスに今年も宿を取り、午前中だけで汗びっしょりになった身体をシャワーで洗い流し、Tシャツに短パンというラフな服装に着替えて階下に降りて行った。
勿論、灼熱の国・ラオスなのだから昼間でもバンダナは欠かせない。
R子さんは僕を驚かそうと思ったのかどうか分からないが、つばの広いハイカラな帽子をかぶって出てきた。
でもそれよりも、彼女が着替えた短めのタンクトップから可愛らしいおへそが見えそうで、またしても僕は目のやり場に困惑してしまうのだった。
何だか盆と正月がいっぺんにやって来たような気分になって、僕はR子さんとビエンチャンの街中に飛び出すように出かけた。
「ともかく昼食にしましょう。何が食べたいですか」
「そうですね。先程の方が是非とおっしゃっていたカオピャとかいう讃岐うどんを食べてみたいです」
カオピャは讃岐うどんではなく、讃岐うどんのように麺がシコシコしているということだが、彼女のリクエストに応えるのは簡単だった。
何しろビエンチャンは昨年に続いて二度目なんだから。
「じゃあハットリさんが推奨していた店に行きましょう」
僕はその店の場所も当然知っていたので、胸を張って歩き始めた。
ナンプ広場を北に上がり、最初の道路に当たる手前左側の小さなレストランだ。
店は四人掛けテーブルが八卓ほどの家庭的な雰囲気だが、ここはフランスパンサンドイッチも店先で軽く炙ってトッピングの野菜などを挟んで売っている。
実は去年も一度朝食を食べに入り、念願のフランスパンサンドイッチと、グラスの底に一センチ以上もコンデンスミルクが入っている、死ぬ程甘ったるいラオコーヒーを注文して、本当に瀕死の状態になって宿に帰ったのを思い出す。
テーブルに着くと、人の良さそうな御主人がメニューを持ってきたが、それを見ることもなく、カオピャッ(カオピャック)をふたつ、それとビアラオを一本注文した。
ラオスに入ってビアラオを飲まないと話にならない。
ふたつのグラスにナミナミとビアラオを注いで、「無事のラオス入国に乾杯!」とグラスを鳴らし、僕たちは渇いた喉に冷たいビールを流し込んだ。
しばらくして運ばれてきたカオピャックは、スープは鶏がらベースの薄味でベトナムのフォーみたいだが、麺はハットリさんが言ったとおり米粉だけで作られているのではなくて、シコシコと本当にコシがあり、讃岐うどんに似ているというのも納得ができるものだった。
ふたりとも殆ど無言のままこのカオピャックを一気に食べて、R子さんなんかはスープを最後の一滴まで飲み干すのだった。
「美味しかったですねぇ」と、彼女は心の底から嬉しそうな顔をして言った。
女性は変に遠慮がちだったり気取ったりして、料理を残すのが奥ゆかしいとか可愛いとか勘違いしている人がいるようだが、彼女のように屈託なく美味しいものは美味しいと言って、気持ちよいくらいの食欲があるほうがずっと素敵に思う。
まあ僕の好みの話をしても仕方がないが、ふたりで一万六千Kip(約百八十円ほど、今回は一万Kipがちょうど百円ほどのレートだった)を支払って店を出ると、すぐ前にトゥクトゥクが客待ちをしていた。
僕は去年このビエンチャンに二泊しているから、この町での見所となるバトゥーサイやタートルアンなどは既に訪れていたのだが、R子さんに気を遣わせないために、「いやぁ、去年は国境で知り合った関西から来ていた男性とビアラオばかり飲んでいて、どこも訪れていないのですよ」と嘘をついた。
人の良さそうなトゥクトゥクの男性に、「バトゥーサイからタートルアン、そして薬草サウナに行きたいけど、いくら?」と僕は問いかけた。
空を見上げると雲ひとつなく、カラッとした暑さは心地よく、本当に灼熱のビエンチャンだった。
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