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第二章 2002年 春
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 56
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第二章 2002年 春
56 サイスリーゲストハウス
バッテリーが破裂してしまったトゥクトゥクの男性は、苦虫を噛み潰したような顔をして、仲間のトゥクトゥクが通るのを待っていた。
トゥクトゥクには仲間グループがあるらしいのだが、特に無線や携帯電話などを持っている訳ではない。
ビエンチャン市内の市民の足は、やはりトゥクトゥクに依存している割合がまだまだ大きいのだろう。
僕達が道路脇で立ち尽くしている間にも、トゥクトゥクは次から次へと通り過ぎて行くが、彼の仲間のトゥクトゥクは通らないようだった。
緊急連絡を取る方法がないし、偶然性に期待するしかないのに、本当に大丈夫なのかという心配には及ばす、僅か十分あまりで仲間のトゥクトゥクが走ってきて、「どうしたんだ?」というふうにその男性と話し始めた。
ラオス語の会話なので何を言っているのか全く分からないが、ハットリさんのお連れの女性が彼等の会話に加わり、二人の話の内容を彼に伝えている。
結局、タラート・サオまでが百五十バーツなので、そのうちの半分以上をバッテリー故障のトゥクトゥク男性に支払い、残りでここから先まで行ってもらうということで話がつき、僕達はやって来た仲間のトゥクトゥクに乗って出発した。
アクシデントのあった場所からは五分ほど走るとビエンチャンの中心街に入り、間もなくタラート・サオが見えてきた。
市場の横のトゥクトゥクの駐車場の辺りに着き、ハットリさんカップル宅はここからまだ十数分先とのことなので、僕達二人は降ろしてもらい、シェアした料金を支払おうとした。
しかしハットリさんは、こちらがいくら強引にお金を手渡そうとしても、断固として受け取らないのだった。
「何言うてまんねん。日本の人がビエンチャンに来たら、私にええカッコさせてくれたらよろしいのや。
私もあんたらに会えて嬉しいのでっせ。気い遣いなはんな。これから先も楽しい旅を祈ってまっせ!」とハットリさんは関西弁丸出しの大声で言うのだ。【本当にいい人だ】
僕とR子さんは、ハットリさんたちの乗ったトゥクトゥクが見えなくなるまで、何度も何度も手を振って別れを惜しんだ。
だが、本当に残念なことに、ハットリさんの本名と連絡先を訊くのを忘れてしまったのだった。
僕は去年のラオス旅行でも、帰路の列車で一等エアコン車で同室だった服部君に名刺をもらっておきながら、それをすぐに失くしてしまったことがあり、どうもハットリさんという名前には縁がないようだ。
(しかしハットリさんとは、このあと偶然再会するのです。感動的でした。それはこの話の先を期待してください)
ともかく僕達二人はタラート・サオからメコン川の方向に歩き出した。
懐かしい建物や街並みが目に映った。帰ってきたぞ、一年ぶりのビエンチャン。
ハットリさんが言っていたラオ・パリホテルの前を歩き、最初の角をメコン川の方向に左折すると、その向かいの角に例のカオピャックが美味しいという小さなレストランがあった。
さらに進むと、去年は何もなくなっていたナンプ広場がすっかり新たになっていた。
中央に大きな噴水があり、その周りを円形に、まだ木の香りが匂ってきそうなベンチが設置されており、市民たちがくつろいでいた。
◆最近のナンプ広場は夜になるとこんな風にイルミネーションが綺麗です。
「R子さん、去年僕が世話になった宿でもいいですか?」
「何処でも構いませんよ」
ということで、ナンプ広場から比較的近いサイスリーゲストハウスに向かった。
宿は外見が去年とちっとも変っていなかったが、中に入ると小さなロビーに大型テレビがドカーンと置かれていた。
【儲けているんだなぁ】と思いながら、フロントで見覚えのあるあまり愛想の良くない女将さんに、「ファンのシングルが二部屋空いていませんか」と訊いた。
すぐに部屋を見せてもらうと、ダブルサイズのベッドで窓の位置もグッドな部屋が空いており、彼女は一階の六ドルの部屋を、僕は二階の七ドルの部屋に決め、「シャワーを浴びてから昼ご飯にしましょう」とそれぞれがバックパックを部屋に降ろした。
ここまで順調な旅であることに、僕は部屋に入ってすぐに跪き、神と御先祖様と隣のミケと我が家のシロちゃんに祈った。
56 サイスリーゲストハウス
バッテリーが破裂してしまったトゥクトゥクの男性は、苦虫を噛み潰したような顔をして、仲間のトゥクトゥクが通るのを待っていた。
トゥクトゥクには仲間グループがあるらしいのだが、特に無線や携帯電話などを持っている訳ではない。
ビエンチャン市内の市民の足は、やはりトゥクトゥクに依存している割合がまだまだ大きいのだろう。
僕達が道路脇で立ち尽くしている間にも、トゥクトゥクは次から次へと通り過ぎて行くが、彼の仲間のトゥクトゥクは通らないようだった。
緊急連絡を取る方法がないし、偶然性に期待するしかないのに、本当に大丈夫なのかという心配には及ばす、僅か十分あまりで仲間のトゥクトゥクが走ってきて、「どうしたんだ?」というふうにその男性と話し始めた。
ラオス語の会話なので何を言っているのか全く分からないが、ハットリさんのお連れの女性が彼等の会話に加わり、二人の話の内容を彼に伝えている。
結局、タラート・サオまでが百五十バーツなので、そのうちの半分以上をバッテリー故障のトゥクトゥク男性に支払い、残りでここから先まで行ってもらうということで話がつき、僕達はやって来た仲間のトゥクトゥクに乗って出発した。
アクシデントのあった場所からは五分ほど走るとビエンチャンの中心街に入り、間もなくタラート・サオが見えてきた。
市場の横のトゥクトゥクの駐車場の辺りに着き、ハットリさんカップル宅はここからまだ十数分先とのことなので、僕達二人は降ろしてもらい、シェアした料金を支払おうとした。
しかしハットリさんは、こちらがいくら強引にお金を手渡そうとしても、断固として受け取らないのだった。
「何言うてまんねん。日本の人がビエンチャンに来たら、私にええカッコさせてくれたらよろしいのや。
私もあんたらに会えて嬉しいのでっせ。気い遣いなはんな。これから先も楽しい旅を祈ってまっせ!」とハットリさんは関西弁丸出しの大声で言うのだ。【本当にいい人だ】
僕とR子さんは、ハットリさんたちの乗ったトゥクトゥクが見えなくなるまで、何度も何度も手を振って別れを惜しんだ。
だが、本当に残念なことに、ハットリさんの本名と連絡先を訊くのを忘れてしまったのだった。
僕は去年のラオス旅行でも、帰路の列車で一等エアコン車で同室だった服部君に名刺をもらっておきながら、それをすぐに失くしてしまったことがあり、どうもハットリさんという名前には縁がないようだ。
(しかしハットリさんとは、このあと偶然再会するのです。感動的でした。それはこの話の先を期待してください)
ともかく僕達二人はタラート・サオからメコン川の方向に歩き出した。
懐かしい建物や街並みが目に映った。帰ってきたぞ、一年ぶりのビエンチャン。
ハットリさんが言っていたラオ・パリホテルの前を歩き、最初の角をメコン川の方向に左折すると、その向かいの角に例のカオピャックが美味しいという小さなレストランがあった。
さらに進むと、去年は何もなくなっていたナンプ広場がすっかり新たになっていた。
中央に大きな噴水があり、その周りを円形に、まだ木の香りが匂ってきそうなベンチが設置されており、市民たちがくつろいでいた。
◆最近のナンプ広場は夜になるとこんな風にイルミネーションが綺麗です。
「R子さん、去年僕が世話になった宿でもいいですか?」
「何処でも構いませんよ」
ということで、ナンプ広場から比較的近いサイスリーゲストハウスに向かった。
宿は外見が去年とちっとも変っていなかったが、中に入ると小さなロビーに大型テレビがドカーンと置かれていた。
【儲けているんだなぁ】と思いながら、フロントで見覚えのあるあまり愛想の良くない女将さんに、「ファンのシングルが二部屋空いていませんか」と訊いた。
すぐに部屋を見せてもらうと、ダブルサイズのベッドで窓の位置もグッドな部屋が空いており、彼女は一階の六ドルの部屋を、僕は二階の七ドルの部屋に決め、「シャワーを浴びてから昼ご飯にしましょう」とそれぞれがバックパックを部屋に降ろした。
ここまで順調な旅であることに、僕は部屋に入ってすぐに跪き、神と御先祖様と隣のミケと我が家のシロちゃんに祈った。
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