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第二章 2002年 春
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 64
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第二章 2002年 春
64 バンビエンリゾート
近くのレストランでまたまた僕はフランスパンサンドイッチをバナナシェイクとともに注文したが、ここではR子さんも小さめのサンドイッチを頼んでいた。
何しろ美味しいものだから、ラオス滞在中は毎日でも食べたくなるだろうから。
オープンレストランの椅子に座ってバンビエンの町の向こうを眺めると、昨年と同様に特徴のある小さな山々が並んでいる。
「この山の形は中国の桂林で見られました」と、そういえば昨年の旅で知り合ったO村君が言っていたのを思い出した。
天候は素晴らしく良い。バスも無事にバンビエンに到着した。美味しいフランスパンサンドイッチの昼食も食べている、しかもバナナシェイク付きでだ。目の前には美人のR子さんが座っている。
これ以上、僕は何を望む必要があるだろうか。
でもボチボチR子さんを解放してあげないと、いくらなんでも僕のような中年オヤジと三日間も一緒なのだから、本当はうんざりしているに違いない。
彼女は大人だから表情には出さなくとも、【もういい加減うんざりだわ】って思っているような気がしてきた。
そんなことをボンヤリと考えていると、「ガイドブックに洞窟があるって書いてますよ。行ってみませんか」と彼女が言った。
僕達は洞窟まで歩いて行くことにした。
「昨年はね、行きはトゥクトゥクに乗って行ったのですけど、そんなに距離がなかったので、帰りは歩いて帰ってきたのですよ。それほど距離はないし、町歩きを兼ねて行きましょうか」
僕達はまるで箱庭のような小さな町をブラブラと歩いた。
小さな町にしては旅行者をたくさん見かけたが、その殆どが欧米人で、日本人は見かけない。
右側にナムソン川を見ながら、学校の運動場を左に見てさらに奥に行き、突き当りを右に曲がって三百メートルほど砂の道を歩くとバンビエンリゾートの入口が見えた。
入場料を支払い(毎回思うのだが、このような入場料を僕ははっきりと憶えていない。多分千Kip、12円程度だったと思う)、つり橋を渡って奥へ奥へと進んで行くと、洞窟の入口につながっている階段の登り口がある。
レストランを出て三十分程歩きっぱなしだが、灼熱の下ではやはり相当暑さが身にこたえる。
彼女は帽子をかぶっているから大丈夫そうだが、僕はバンダナを通して熱射が地肌を焦がしている感覚で、せっかく毛髪をプロテクトしているのに、ここラオスではバンダナなんかは暑さ避けにはならない。
そんなことを考えていると、「登りましょう」と彼女が言うので、僕達は一段一段足の裏で石段を踏みしめるようにしながら、一歩一歩確実に洞窟の入口に向って前進を始めた。
だらしないことに、三十段も登ると息が切れてきたので足を止め、「大丈夫ですか」と自分のほうが大丈夫でないのに偉そうに彼女に声をかけた。
「きついですねぇ。のんびりと登りましょう」
彼女は人間ができている。
僕の痩せ我慢なんかはとっくに見破られているに違いなく、彼女の言葉は僕を気遣ってのものであることは明白だ。
【彼女と結婚する男性は一生の幸せ者だな】と、またまた取りとめもなく考えていると、「さあ、頑張って登りましょうか」と励まされ、さらに僕達は石段を一歩一歩踏みしめながら登って行ったのだった。
僕も一応は、「暑くないですか?」「疲れていませんか?」などと気遣いの声をかける。
そして、その度に彼女は、「大丈夫です」とにこやかに応える。
この笑顔は読者の方に見せたいくらい素晴らしいものだ。
てなことをくどくど言っているうちに、洞窟の入口に到着した。(笑)
振り返ってバンビエンの町を眺めてみると、それはしばらく形容する言葉が浮かばないほど素晴らしく、緑溢れた村をナムソン川が貫き、村全体が一つのリゾート地になっているような美しさだった。(バンビエンは町というより村である)
他に洞窟を訪れている観光客はいなかった。
僕達はお互いをカメラに収めてから洞窟の中に入って行った。
洞窟の中は所々に薄明かりが見えるだけで、ほぼ真っ暗に近く、ここで僕は彼女の手を引こうかどうか迷ってしまった。
こんな時は躊躇せずに、「暗いから気をつけて」とか何とか言いながら、どさくさに紛れて手を繋いでしまえばいいのに、僕はいつも肝心な時に全く駄目なのだ。
躊躇しているうちに間もなく中ほどのテラスに出てしまった。
64 バンビエンリゾート
近くのレストランでまたまた僕はフランスパンサンドイッチをバナナシェイクとともに注文したが、ここではR子さんも小さめのサンドイッチを頼んでいた。
何しろ美味しいものだから、ラオス滞在中は毎日でも食べたくなるだろうから。
オープンレストランの椅子に座ってバンビエンの町の向こうを眺めると、昨年と同様に特徴のある小さな山々が並んでいる。
「この山の形は中国の桂林で見られました」と、そういえば昨年の旅で知り合ったO村君が言っていたのを思い出した。
天候は素晴らしく良い。バスも無事にバンビエンに到着した。美味しいフランスパンサンドイッチの昼食も食べている、しかもバナナシェイク付きでだ。目の前には美人のR子さんが座っている。
これ以上、僕は何を望む必要があるだろうか。
でもボチボチR子さんを解放してあげないと、いくらなんでも僕のような中年オヤジと三日間も一緒なのだから、本当はうんざりしているに違いない。
彼女は大人だから表情には出さなくとも、【もういい加減うんざりだわ】って思っているような気がしてきた。
そんなことをボンヤリと考えていると、「ガイドブックに洞窟があるって書いてますよ。行ってみませんか」と彼女が言った。
僕達は洞窟まで歩いて行くことにした。
「昨年はね、行きはトゥクトゥクに乗って行ったのですけど、そんなに距離がなかったので、帰りは歩いて帰ってきたのですよ。それほど距離はないし、町歩きを兼ねて行きましょうか」
僕達はまるで箱庭のような小さな町をブラブラと歩いた。
小さな町にしては旅行者をたくさん見かけたが、その殆どが欧米人で、日本人は見かけない。
右側にナムソン川を見ながら、学校の運動場を左に見てさらに奥に行き、突き当りを右に曲がって三百メートルほど砂の道を歩くとバンビエンリゾートの入口が見えた。
入場料を支払い(毎回思うのだが、このような入場料を僕ははっきりと憶えていない。多分千Kip、12円程度だったと思う)、つり橋を渡って奥へ奥へと進んで行くと、洞窟の入口につながっている階段の登り口がある。
レストランを出て三十分程歩きっぱなしだが、灼熱の下ではやはり相当暑さが身にこたえる。
彼女は帽子をかぶっているから大丈夫そうだが、僕はバンダナを通して熱射が地肌を焦がしている感覚で、せっかく毛髪をプロテクトしているのに、ここラオスではバンダナなんかは暑さ避けにはならない。
そんなことを考えていると、「登りましょう」と彼女が言うので、僕達は一段一段足の裏で石段を踏みしめるようにしながら、一歩一歩確実に洞窟の入口に向って前進を始めた。
だらしないことに、三十段も登ると息が切れてきたので足を止め、「大丈夫ですか」と自分のほうが大丈夫でないのに偉そうに彼女に声をかけた。
「きついですねぇ。のんびりと登りましょう」
彼女は人間ができている。
僕の痩せ我慢なんかはとっくに見破られているに違いなく、彼女の言葉は僕を気遣ってのものであることは明白だ。
【彼女と結婚する男性は一生の幸せ者だな】と、またまた取りとめもなく考えていると、「さあ、頑張って登りましょうか」と励まされ、さらに僕達は石段を一歩一歩踏みしめながら登って行ったのだった。
僕も一応は、「暑くないですか?」「疲れていませんか?」などと気遣いの声をかける。
そして、その度に彼女は、「大丈夫です」とにこやかに応える。
この笑顔は読者の方に見せたいくらい素晴らしいものだ。
てなことをくどくど言っているうちに、洞窟の入口に到着した。(笑)
振り返ってバンビエンの町を眺めてみると、それはしばらく形容する言葉が浮かばないほど素晴らしく、緑溢れた村をナムソン川が貫き、村全体が一つのリゾート地になっているような美しさだった。(バンビエンは町というより村である)
他に洞窟を訪れている観光客はいなかった。
僕達はお互いをカメラに収めてから洞窟の中に入って行った。
洞窟の中は所々に薄明かりが見えるだけで、ほぼ真っ暗に近く、ここで僕は彼女の手を引こうかどうか迷ってしまった。
こんな時は躊躇せずに、「暗いから気をつけて」とか何とか言いながら、どさくさに紛れて手を繋いでしまえばいいのに、僕はいつも肝心な時に全く駄目なのだ。
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