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第二章 2002年 春
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 72
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第二章 2002年 春
72 小銭詐欺?
バスは特にバス停などないのに、道端に乗客が立っていたら停車して乗せ、乗客もバス停で止まるのではなく、自分の家のすぐ近くで何やら声をあげて降ろしてもらっている。
そんなわけだからバスの停車する回数は数え切れなく、極端な場合は発車して数十メートルも走らないうちに止まったりするから、目的地のブッダパークにはなかなか着かない。
トゥクトゥクで行けばビエンチャンの中心部あたりから三十分もかからないのに、結局一時間あまりかかってしまったが、これもラオスならではであり、結構なことだ。
ヤレヤレといった感じでバスを降り、すぐ前にあった店で飲み物を買って休憩した。
兎にも角にも汗びっしょりなので水分補給が大切だ。
店の椅子に座っていると一人のラオス人男性が声をかけてきた。
ラオス人にしては彫が深い顔つきで、一見すると南米人風である。
彼は最初挨拶をしたあと、「私は日本に行ったことがある。東京に行ったことがあるが、大きな町に驚いた」と語った。
ラオス人が日本に足を踏み入れることは、経済的にも制度的にもなかなか大変だと聞いていたので、ちょっと訝しい気がしたが、彼の話を聞き続けた。
彼はバンビエンに数日遊びに行っていて、昨日の午後のバスでビエンチャンに戻って来たと言い、Y子さんのことをバスの中で見かけたと言った。
Y子さんも彼のことを覚えていたらしく、まんざら出鱈目を言っているわけではないと思った。
しばらく話をしたあと彼が、「東京に行った時に日本の貨幣を使い切らないで持ち帰ったので、ここにいくらかコインを持っているが、それをKipに交換してくれれば嬉しいのだが」と切り出した。
彼は手に百円銀貨を一枚持っていた。
「何だ、そんな簡単なことならかまわないよ」と僕は一万Kipを彼に渡し、その百円銀貨を手に取った。
間違いなく日本の百円銀貨だった。
彼はまだいくらかの日本のコインを持っていたようで、それをもっと交換して欲しそうな素振りを見せたが、僕は何やら面倒になってきたので、「そろそろブッダパークに入りましょう」とY子さんに言って店を出た。
「それじゃまた」と彼に言うと、彼も明るく答えてくれたので、決して悪い奴には見えないし、もう少し交換してやってもよかったという気になった。
しかし、一度に多額のコインを交換して欲しいと言わないのは、きっとこのコインは日本人観光客から「記念に日本のコインをくれないか」などと言って、無償で貰い集めたものに違いないと思うのだ。
おそらくそうだろう。
ラオスは貧しい。しかしラオス人はとても親切でシャイで、自分達の国に誇りを持っていて、悪い奴はいない気がする。
貧しい国だがそれを卑屈に感じている様子は全くない。
旅人からその人の国の話を聞こうと積極的だ。
ラオスでは殺人事件など皆無に近いと聞く。
しかし、貧しいがゆえにこのような金銭の知能犯が生まれることもあるのだろう。
それは取るに足りない小さなことかも知れない。奴も明るくていい奴に見える。
ただ、僕は結果的にあまり良い気はしなかった。
日本を訪問したことがあるという話は、おそらく嘘だと確信のようなものを持ったので、後ろ向きに彼に手を振って僕達二人はブッダパークに入って行った。
ブッダパークは二度目だが、やはり面白い仏像群は見ていて楽しい。
ノンカイのワットケークほど規模は大きくはないが、何を意味しているのか分からない怪しげな仏像が並んでいた。
それらをゆっくり見て歩くとメコン川の岸に出る。
岸辺ではオレンジ色の袈裟を纏った若い僧達が数人たたずんでいた。
彼らは気さくに僕達に話しかけてきた。
72 小銭詐欺?
バスは特にバス停などないのに、道端に乗客が立っていたら停車して乗せ、乗客もバス停で止まるのではなく、自分の家のすぐ近くで何やら声をあげて降ろしてもらっている。
そんなわけだからバスの停車する回数は数え切れなく、極端な場合は発車して数十メートルも走らないうちに止まったりするから、目的地のブッダパークにはなかなか着かない。
トゥクトゥクで行けばビエンチャンの中心部あたりから三十分もかからないのに、結局一時間あまりかかってしまったが、これもラオスならではであり、結構なことだ。
ヤレヤレといった感じでバスを降り、すぐ前にあった店で飲み物を買って休憩した。
兎にも角にも汗びっしょりなので水分補給が大切だ。
店の椅子に座っていると一人のラオス人男性が声をかけてきた。
ラオス人にしては彫が深い顔つきで、一見すると南米人風である。
彼は最初挨拶をしたあと、「私は日本に行ったことがある。東京に行ったことがあるが、大きな町に驚いた」と語った。
ラオス人が日本に足を踏み入れることは、経済的にも制度的にもなかなか大変だと聞いていたので、ちょっと訝しい気がしたが、彼の話を聞き続けた。
彼はバンビエンに数日遊びに行っていて、昨日の午後のバスでビエンチャンに戻って来たと言い、Y子さんのことをバスの中で見かけたと言った。
Y子さんも彼のことを覚えていたらしく、まんざら出鱈目を言っているわけではないと思った。
しばらく話をしたあと彼が、「東京に行った時に日本の貨幣を使い切らないで持ち帰ったので、ここにいくらかコインを持っているが、それをKipに交換してくれれば嬉しいのだが」と切り出した。
彼は手に百円銀貨を一枚持っていた。
「何だ、そんな簡単なことならかまわないよ」と僕は一万Kipを彼に渡し、その百円銀貨を手に取った。
間違いなく日本の百円銀貨だった。
彼はまだいくらかの日本のコインを持っていたようで、それをもっと交換して欲しそうな素振りを見せたが、僕は何やら面倒になってきたので、「そろそろブッダパークに入りましょう」とY子さんに言って店を出た。
「それじゃまた」と彼に言うと、彼も明るく答えてくれたので、決して悪い奴には見えないし、もう少し交換してやってもよかったという気になった。
しかし、一度に多額のコインを交換して欲しいと言わないのは、きっとこのコインは日本人観光客から「記念に日本のコインをくれないか」などと言って、無償で貰い集めたものに違いないと思うのだ。
おそらくそうだろう。
ラオスは貧しい。しかしラオス人はとても親切でシャイで、自分達の国に誇りを持っていて、悪い奴はいない気がする。
貧しい国だがそれを卑屈に感じている様子は全くない。
旅人からその人の国の話を聞こうと積極的だ。
ラオスでは殺人事件など皆無に近いと聞く。
しかし、貧しいがゆえにこのような金銭の知能犯が生まれることもあるのだろう。
それは取るに足りない小さなことかも知れない。奴も明るくていい奴に見える。
ただ、僕は結果的にあまり良い気はしなかった。
日本を訪問したことがあるという話は、おそらく嘘だと確信のようなものを持ったので、後ろ向きに彼に手を振って僕達二人はブッダパークに入って行った。
ブッダパークは二度目だが、やはり面白い仏像群は見ていて楽しい。
ノンカイのワットケークほど規模は大きくはないが、何を意味しているのか分からない怪しげな仏像が並んでいた。
それらをゆっくり見て歩くとメコン川の岸に出る。
岸辺ではオレンジ色の袈裟を纏った若い僧達が数人たたずんでいた。
彼らは気さくに僕達に話しかけてきた。
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