サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

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第三章 バンコク近郊・意外展開旅行記

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 86

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 第三章 バンコク近郊・意外展開旅行記

     ★第二話★ 約束

 Hさんとはこの年の五月の旅の際にも、僕が帰国する日の朝彼女がラオスからバンコクに着いて、N君とともにほんの数時間だけ過ごしたことがあるが、会うのはそれ以来である。(この旅行記の第二章のラスト、84のことです)

 首にブルーのスカーフを巻いた彼女は、相変わらず女優の小林聡美さんによく似た可愛い人だったが、少し疲れが顔に出ていた。

「どうしてここにいるの?」と、僕はスムーズに言葉が出なくてバカみたいなことを訊いた。

「明日着く予定を一日早くして、プノンペンから飛行機で今日戻ってきたのです。カンボジアは疲れました。今夜は全然食欲がないので、飲み物だけ買って早く寝ようと思っているのです」

 あっそうか、僕は彼女とN君と三人で、明日の夕方Kri Thai Mansionのロビーで会う約束をしていたのだった。

 N君は直前になって、仕事の都合で来れなくなってしまったのだけど、僕は約束をしていたことを、発熱のためかすっかり忘れていたのだ。

 だから彼女が一日早く着いたとしても、近くのコンビニで会う可能性もあったわけだ。

 でもやっぱり偶然だな。

「僕も体調が悪いから、クッキーでも食べて今夜は寝ようと思ってね」

 HさんもKri Thai Mansionが空いてなかったので、僕の宿の近くのA-One Inホテルに泊まっているとのことで、コンビニを出て宿の方向へブラブラと歩きながら少し話をした。

 バンコク郊外のワット・ファウロンワというおかしな寺を明日訪ねてみたいと僕が言うと、彼女も特に予定がないので一緒に行ってよいかと訊く。

「勿論大歓迎です。盆正月が一緒に来たような気分です」と返事して、明朝七時に彼女の宿の前で会う約束を交わし、この夜はあっけなく別れた。

 そうなれば早く寝て、体調を整えないといけないぞ。僕は風邪薬を四錠も飲んですぐに寝た。
 
 翌日は少し熱も下がっていたようだった。

 水シャワーを浴びて髭を剃り、午前七時にHさんのゲストハウスの前に行くと、彼女がちょうど宿から出てきたところだった。

「先ず朝ごはんにしましょう」ということになり、通りに出てすぐの屋台レストランに入った。

 まだ早いのでメニューは殆どできないらしく、僕はカオパッドを食べたかったが、仕方なく二人とも極細麺のヌードルスープを注文した。

 このヌードルスープは味がとても薄くて、いろいろ調味料を加えてみたがあまり味の変化が生まれず、全部食べるには食べたがちょっと不満だった。それはHさんも同じだったようだ。(20バーツ)

 彼女はKri Thai Mamsionに部屋を予約しているので、一旦彼女の荷物を取りに宿に戻ってからホテルを訪れた。

 僕達がフロントに着いた時には、ロビーやレストランには大勢の旅行者が溢れていたが、大部分の人はこれから帰国するようだった。

 フロントの女性があと三十分ほど待ってくれればHさんの部屋が空くとのことで、念のためもう一部屋空きませんかと訊いてみたところ、同じ時刻に空くというので、僕も早速荷物を取りに宿に戻った。

 このホテルは少しだけ値段が高目だが、すごく快適なのだ。

 Bed&Breakfast GHの女将さんに、「ごめんなさい急きょラオスに行きます。チェックアウトを」と嘘をついて宿をあとにした。(他のホテルに移るとは言えないよね。こういうのを嘘も方便というのだな)

 Kri Thai Mansionに無事部屋を確保し、バックパックを降ろしてから僕達は予定通りバンコク郊外にあるという「ワット・ファウロンワ」という寺院を目指した。

 宿を出た時刻は既に午前九時半を過ぎていた。
 ホテルの前のスクンビット通りの向こう側のバス停で南バスターミナル(サーイ・ターイ)方面行きのバスを待った。

 バンコクのバスは乗り慣れればとても便利で安いのだが、縦横無尽に張り巡らされたバスルートを把握するのは非常に困難である。

「何番のバスに乗ればいいのですか」とHさんが訊く。

「ガイドブックではいくつかあるのだけど、八番とか五十一番とかかな?ともかく次に来たバスに乗ってしまいましょう」と僕はいい加減なことを言った。

 次にバス停に滑り込んできたバスはノンエアコンで、何番だったかは今となっては憶えていないが、「サーイ・ターイ!」と宣言すると、車掌が「ホイホイ」と頷いたようなので着席した。

 しばらくして後ろのおばちゃんがタイ語で何やらHさんに話しかけてきた。

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