サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

文字の大きさ
110 / 205
第三章 バンコク近郊・意外展開旅行記

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 110

しおりを挟む

  大倉直氏との出会い その一

 翌日、僕はNanaホテルをチェックアウトして、前日「ざるそば」の魅力からベッドを予約していたトラベラーズロッジへ移動した。

 四階には二段ベッドが八床、全十六人を収容できる。
 僕は真ん中辺りの下段を与えられた。

 シーツは清潔だしクッションも硬めでちょうど良い。

 ベッドの上にバックパックを置いてから、さて周りを見渡すと、ベッドの上に荷物を置いている旅人は出かけており、ベッドにいる者はいびきをかいて眠っていた。

 もうお昼近くだというのに、彼等は一体何時から眠り始めたのだろう。

 暇だから映画でも見に行くことにした。大通りに出てバス停で待った。

 バンコクではバスをうまく乗ることができると随分と移動費が節約できる。

 いつも短期の旅なので、時間が勿体無いと、移動はもっぱらタクシーを利用しているが、今日は特に何も予定がないからバスに乗ってみることにしたのだ。

 間もなく47番の赤いバスが到着した。
 乗り込むと、中年の車掌さんが空いている席を指差してくれた。

 アルミでできた丸い筒のような物をカラカラと鳴らしながら料金を集めに来た。
 いくらかと訊くと、何と3.5バーツだ。

 十円ほどのバス賃なのだから、勿論エアコンなど付いているはずはない。
 しかし僕は周りのバンコクの人々と同じように最も安いバスに乗っていることが、何だか嬉しい気持ちになってきた。

 旅行者なのだから、現地の人の庶民の交通機関を利用しないで、タクシーやその他の手段で移動することを受け入れる国側は望むかもしれないが、それはお金のある旅行者に任せておけば良い。

 我々のようにあまりお金を遣わずに、安宿に泊まり、安い交通機関を利用して移動する旅行者ばかりだと困るとは思うが、このような庶民の足を利用することで、少しはその国の日常に触れることが出来るような気がするのだ。

 道路はそれほど混んでおらず、三十分もしないうちにマーブンクロンの辺りに到着した。

 エアコンのよく効いた建物に入り、エスカレーターで上がって行く。

 いつも思うのだが、このマーブンクロンの建築構造は、ちょっと危ないような気がする。エスカレーターのある部分の片側が吹き抜けなのだ。

 それに全体的に吹き抜け部分があまりにも多いような気がするのは、おそらく僕だけではないと思うのだ。

 日本にこんな建造物はないだろう。大きな地震に見舞われたら大惨事になってしまう構造だと思う。

 そんなことを考えながら映画のフロアに着いた。

 現在上映しているメニューを見ると、いくつかある中で僕は「メンインブラックⅡ」を選んだ。

 この映画はウイル・スミス演じるMIBのエリート捜査官が、相棒と協力して地球を救うという、単純というか何というか、ともかくエンターテイメントとしてはハイレベルの作品である。

 ここでは全席指定で、チケット料金が七十バーツである。

 二百円ほどでロードショーを鑑賞できるということだけでもバンコクに来る意義があるような気がしてしまう。

 ただ映画は当然英語で、字幕はタイ語だから、エンターテイメント以外の映画だとちょっとストーリーが分からないかもしれない。

 南極のように(行ったことはないが)猛烈にエアコンが効いた館内で、冷凍状態になりながら映画を楽しんだあと、行きと同じノンエアコンのバスでカオサンへ戻った。

 映画はまあまあ面白くて満足した。

 宿の自分のベッドに戻ると、僕のベッドの向かい側に、顔全体に髭を伸ばして長髪を後ろでくくった男性がいた。

 お互いに挨拶を交わし、夕食をご一緒することになった。

 この男性があとで分かるのだが、ノンフィクション作家の大倉直(オオクラチョク)さんだった。

◆その当時の僕、トラベラーズロッジのベランダで





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

処理中です...