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第三章 バンコク近郊・意外展開旅行記
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 110
しおりを挟む大倉直氏との出会い その一
翌日、僕はNanaホテルをチェックアウトして、前日「ざるそば」の魅力からベッドを予約していたトラベラーズロッジへ移動した。
四階には二段ベッドが八床、全十六人を収容できる。
僕は真ん中辺りの下段を与えられた。
シーツは清潔だしクッションも硬めでちょうど良い。
ベッドの上にバックパックを置いてから、さて周りを見渡すと、ベッドの上に荷物を置いている旅人は出かけており、ベッドにいる者はいびきをかいて眠っていた。
もうお昼近くだというのに、彼等は一体何時から眠り始めたのだろう。
暇だから映画でも見に行くことにした。大通りに出てバス停で待った。
バンコクではバスをうまく乗ることができると随分と移動費が節約できる。
いつも短期の旅なので、時間が勿体無いと、移動はもっぱらタクシーを利用しているが、今日は特に何も予定がないからバスに乗ってみることにしたのだ。
間もなく47番の赤いバスが到着した。
乗り込むと、中年の車掌さんが空いている席を指差してくれた。
アルミでできた丸い筒のような物をカラカラと鳴らしながら料金を集めに来た。
いくらかと訊くと、何と3.5バーツだ。
十円ほどのバス賃なのだから、勿論エアコンなど付いているはずはない。
しかし僕は周りのバンコクの人々と同じように最も安いバスに乗っていることが、何だか嬉しい気持ちになってきた。
旅行者なのだから、現地の人の庶民の交通機関を利用しないで、タクシーやその他の手段で移動することを受け入れる国側は望むかもしれないが、それはお金のある旅行者に任せておけば良い。
我々のようにあまりお金を遣わずに、安宿に泊まり、安い交通機関を利用して移動する旅行者ばかりだと困るとは思うが、このような庶民の足を利用することで、少しはその国の日常に触れることが出来るような気がするのだ。
道路はそれほど混んでおらず、三十分もしないうちにマーブンクロンの辺りに到着した。
エアコンのよく効いた建物に入り、エスカレーターで上がって行く。
いつも思うのだが、このマーブンクロンの建築構造は、ちょっと危ないような気がする。エスカレーターのある部分の片側が吹き抜けなのだ。
それに全体的に吹き抜け部分があまりにも多いような気がするのは、おそらく僕だけではないと思うのだ。
日本にこんな建造物はないだろう。大きな地震に見舞われたら大惨事になってしまう構造だと思う。
そんなことを考えながら映画のフロアに着いた。
現在上映しているメニューを見ると、いくつかある中で僕は「メンインブラックⅡ」を選んだ。
この映画はウイル・スミス演じるMIBのエリート捜査官が、相棒と協力して地球を救うという、単純というか何というか、ともかくエンターテイメントとしてはハイレベルの作品である。
ここでは全席指定で、チケット料金が七十バーツである。
二百円ほどでロードショーを鑑賞できるということだけでもバンコクに来る意義があるような気がしてしまう。
ただ映画は当然英語で、字幕はタイ語だから、エンターテイメント以外の映画だとちょっとストーリーが分からないかもしれない。
南極のように(行ったことはないが)猛烈にエアコンが効いた館内で、冷凍状態になりながら映画を楽しんだあと、行きと同じノンエアコンのバスでカオサンへ戻った。
映画はまあまあ面白くて満足した。
宿の自分のベッドに戻ると、僕のベッドの向かい側に、顔全体に髭を伸ばして長髪を後ろでくくった男性がいた。
お互いに挨拶を交わし、夕食をご一緒することになった。
この男性があとで分かるのだが、ノンフィクション作家の大倉直(オオクラチョク)さんだった。
◆その当時の僕、トラベラーズロッジのベランダで
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