164 / 208
第五章・ミャンマー行きの予定が何故か雲南へ
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 164
しおりを挟む第十四話
2009年12月26日、日本ではクリスマスという無心論者でも参加する大イベントが終わって、街が虚脱感に包まれているころである。
僕は遠くラオスという国の首都・ビエンチャンに於いて、チャリンコをキコキコ漕いで北バスターミナルへ向かっていた。
陽が落ちて薄暗くなったビエンチャンの街だが、昔と違って車やバイクが慌しく国道を往来している。
早々とシャッターを閉め始める道路沿いの建材店や石細工店、仕事を追えた人々が家路を急ぐ。
平和な光景に、僕の心も穏やかな感情に包まれる。しかし暑い。
北バスターミナルは国道をヒョイと入ったところにあり、位置的には分かりにくい。
チャリンコにしっかり鍵を掛けて、チケット売り場へ歩く。
長方形の小屋のような建物がバス発着場の手前にあり、そこが売り場である。
中国方面の窓口は向かって一番右端であった。
「明後日の昆明までの夜行バスチケット1枚!」
汗を拭き拭き窓口のオッサンに叫ぶ。
ラオス人ではなく、明らかにチャイナ顔の中年男。
だが、オッサンは首を横に振る。
「明日の午前9時以降でないと発売しない」とのたまう。
何で?と一応訊いてみたが同様の返答。このバンダナ日本人オヤジはウルせぇな、といった顔付きだ。
せっかく身体中から汗を噴出しながらやってきたのに、この冷たい返答は何なのだ。
憤慨しながらも仕方なく帰ることにした。
チャリンコのべダルを漕ぐ足がなんとなく重い。
すっかり陽は落ちて、ビエンチャンの街は暗闇に包まれていた。
チャリンコを返し終わったら何もすることがない。
ゲストハウスが多く存在する通りには、様々な飲食店が旅行者を呼んでいる。
楽しそうに会話しながら、ピザ店に入っていく欧米人カップル。
確かこの店は、2002年に国境で知り合って数日行動をともにしたR子さんだったか、或いはバンビエンからビエンチャンに戻ってくる際に知り合ったY子さんとだったか、以前に入ったことがある。
その時、この店は洋酒を主体に飲ませるカフェだったはずだ。
僕はR子さんの美貌に酔いしれて、ウイスキーをガブガブ飲んで、文字通り酔っ払ってしまったことを思い出す。
その店が今ではピザ屋に変っている。
年月の経過は、様々な事象の変化を伴うのは当然であるが、ちょっと寂しい気がした。
ゲストハウスへ帰ってもTVのない部屋だし、本を読む気分でもない。
ナンプ広場近くにある、毎回訪れるシーリーマッサージ店へ行くことにした。
ここはビエンチャンに来るたびに、滞在中何度かマッサージをしてもらうのだが、若い女性が多い割には丁寧な仕事をしてくれるので満足のいく店である。
今夜はどんな可愛い女性が僕の疲れた四肢をほぐしてくれるのだろうと、期待に胸膨らませて店のドアを開けた。
入ってすぐ左にカウンターがあり、その向こうには妖艶なラオス美女が「サバイディー」と微笑みながら迎えてくれる・・・・そんな都合よく話が進むはずはない。
この夜、僕のマッサージを担当してくれたのは、体躯のガッシリとした、一見ホモっぽいたくましい若い男性だった。(涙)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる