探偵手帳・番外編 

Pero

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奇人変人探偵社 28

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    奇人変人の数々 その九


 吉岡主任の大阪名物なにわ節的行動によって、徳田調査員と新人の調査員はどうにかクビをまぬがれた。
 二人がクビにならなくてすんだことを、実際彼等がどう思っているかは知らない。

 このあと調査員間で、この「うっちゃり」が殆どなくなったようだが、前にも述べたように、依頼人から相談を受けて調査の日程と時間を組む段階で、もっと効率の良い時間配分を取るべきである。

 契約時間を消化すれば追加依頼につながるからと、あまりにも営利主義に徹
 しすぎていると僕は思うのだ。

 勿論ボランティアで調査業は営めないから、顧客サイドにたって効率の良い調査をアドバイスすることと、どうせ依頼人はイチゲンが多いのだから金を取れるだけ取ろうとする考えとのジレンマは、業界の永遠のテーマではないだろうか?

 或いはそこまで考えずに、今のことしか頭にないのかもしれないが。

 さてこの項、「奇人変人の数々」であるが、次に誰を取り出すまでもなく、記述の中に登場する人物がすべて奇人・変人と言っても過言ではない。

 そりゃそうだ、もともと日本では探偵などやってみようと思う人間にまともな奴などいない。
 このアートリサーチセンターにおいても、学卒後、キチンとした会社に勤めた経験があるのは、おそらく私だけなのだから。(笑)

 マルチ商法の会社からの転職者、元暴走族のカシラ、元チンピラ、弱いものいじめのサラ金あがり、自衛隊崩れ、元露天商、元ドサ回り芸人からカギ職人等々、何とも歴戦のツワモノが揃っていた。

 彼等に共通して言えることは、自分達はまともな人間であり、おかしいのは周りだという誤った認識を持っていることである。

 まあそれはさておいて、ただ彼等は常人には持ち合わせていない飛びぬけた能力を持っているのだった。
 それは机上でガリガリと勉強して詰め込んだ知識とは分野の異なった能力で、調査員の何人かはエキスパートと呼べる卓越した能力を持っていた。

 具体的には車の運転技術であったり、決して尾行で見失わないノウハウであったり、カメラ技術であったり、或いは調査に於ける工作技術であったりするわけだ。
 それは頭で考えるものではなくて、体或いは体の一部が感覚的に憶えているものなのである。

 そういう意味ではプロと呼べる調査員は、確かにアートリサーチセンターにも何人かはいた。


 さて、このアートリサーチセンターにおける奇人変人は男性調査員だけではなかった。
 調査にも女性が必要な局面があるので、ここにも数名の女性探偵がいたが、それが全員変わり者だった。

 先ずは木藤みどりさん。
 どんなに道路が曲がっていても真っ直ぐ歩き、曲がる時は直角に曲がる、今思えば懐かしきおかしな女性だった。

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