ビッチですが、愛されています。

aika

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男狩り

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ミノアの職場は、街で2番目に大きなお花屋さん。
どうしてこの職場を選んだのか?
それは全て「男狩り」という目的のためなのだ。

この街では男性が意中の女性に花をプレゼントするという古くからの習わしがある。
街の男たちは、よく花を買いに花屋にやってくるのだ。

どこかの女にプレゼントしようとこの花屋にやってくる男に、花を選ぶアドバイスをしながら近付く。それがミノアの楽しみだった。
どこかの誰かに想いを寄せている男の心を横から奪う。その快感は何にも増して、とても気分がイイ。

2番目に大きな花屋、というのが重要だった。
1番大きな花屋はいつだっててんてこ舞い。花を選ぶアドバイスをする余裕はなく、仕事も細かく分担されている。注文を受ける係、花束を作る係、レジで代金を受け取る係。
そんなに細かく分担されていては、男に付け入る隙がない。

ミノアは無類の男好きで、誰とでも寝るような尻軽女だ。
天性のビッチだと、自覚している。

男に出会える職場、男を横取りできる職場。
それが彼女の職場選びで一番重要なポイントなのだった。



「おはようございます。」

「おはよう、ミノアちゃん、今日も可愛いねぇ。」

「店長、そんなこと言ってもダメですよ。私、絶対行きませんから。」

彼は毎週末、ミノアをしつこく食事に誘う。

ダメ元で、という所帯持ちの男のずるさが透けて見えて、なんだか可愛い。
ミノアはそんな男のずるい部分やダメな部分も愛おしいと思ってしまう、真性の男好きだ。


「相変わらず釣れないなぁ。」

「店長の誘いに乗ったりしたら、奥様に顔向けできませんわ。」

「まぁ、そんな態度がたまらないんだけど。」

私を見つめる店長の目は、いつだってハートマーク。
まぁ、当然ね。男なら誰だって私を落としたくてたまらないはずよ。

ミノアは内心そんなことを考えながら、両手の人差し指でばつ印を作って見せた。


「店長、またミノアにしつこくしてるんですか?奥さんに言いつけますよ。」

店の奥から長身の大男が出てくる。
服の上からでもよくわかる厚い胸板と太い腕。がっしりとした肉体の彼は、ミノアの職場の先輩。
大量の花を店の中に運び込みながら、店内外を行ったり来たりしている。

「カイルさん、おはようございます。」

「ミノア、おはよう。おっと、髪に花びらがついてるぞ。」

彼は筋肉隆々の腕を伸ばして、ミノアの綺麗な黒髪についた花びらを指先で摘んだ。

「あ・・ありがとうございます。」

彼の厚い胸板が目の前に迫って、ミノアは恥じらうような表情になった。
急に男性に近付かれてハッと顔を赤らめる彼女に、その場にいた男全員が見惚れる。

もちろんこれは、ミノアのあざとさが見せた演技だ。
男が好きな「恥じらいのある女性」という場面を、彼らに見せつけただけのこと。

何度抱かれても、何度身体の全てを見られていようとも、恥じらいをなくさない女が男は好きなのだ。
こちらとて飽きてしまっているような何度も寝た間柄であっても、恥じらう姿をその都度見せることで、男は欲情する。自分が男として意識されているのだという事実が、男根に響くのだ。
男がやる気を出せば、こちらも充分に楽しむことができる。たとえ何度寝た相手であっても、激しい性交は良いものだ。

「ミノア・・・」

彼女がいやらしく過去の性交に思いを馳せている間に、カイルは言いかけた言葉を仕舞い込んだ。
カイルの心は完全にミノアのものだった。

親しく気を許してくれているのはわかるけれど、一歩踏み出すにはまだ確信に欠ける。
同じ職場故、今後の関係にヒビを入れるわけにもいかない。
探り合いという今の状況を、ミノアは大いに楽しんでいた。

彼女には探りなど必要なかった。
彼は完全に落ちているのだから。あとはどこまで焦らして虐め倒してから一線を越えるのか、ということだけだ。

「カイルさん、昨日注文を受けたブーケを作りたいの。手伝ってくださる?」

「あ・・あぁ。もちろん。」

彼が顔を赤らめてハッと視線を逸らすのを見て、ミノアは内心恍惚の笑みを浮かべた。
心の中の彼女は、ニヤリと世にもいやらしいふやけた顔で舌舐めずりしながら、獲物を見つめている。

ミノアは、頭脳派のビッチなのだ。
とことん焦らして男の興奮が絶好調に達するのを、じっと待っている。
どうすれば一番気持ちがイイ性交経験を得られるのか、考えているのはただそれだけだ。



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