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満たしてあげる
しおりを挟む伊吹と、二人きりの夜。
邪魔が入らないようにと、細心の注意を払う。
常に監視カメラで見られている、この監禁部屋の中に安心できる場所はない。
普段通りベッドに入って、明かりを落とした。
目が暗闇に慣れるまでの、数分間。
この時間は、いつもドキドキと胸が高鳴る。
明かりを落とした暗い部屋の中に、イケメンと二人きり。
一つのベッドに、イケメンと二人で眠る最高のシチュエーション。
この状況でドキドキしない女が、この世にいるだろうか?
伊吹は、表情が乏しく、必要以上のことは喋らない。
ミステリアスな男性で、何度この部屋で夜を共にしても、私は彼が何を考えているのかいつもわからなかった。
彼は、自分自身のことはほとんど話さず、人にもあまり関心がない。
そんな彼が、私のことを「気になる」と言った。
どういう意味だろう。
女性として、特別に想っている・・・?
都合の良い妄想が浮かんできて、頭の中を支配していく。
この組織の男たちは、致命的なほどに女の趣味が悪い。
生まれてこのかた、一度もモテた経験のない私が、初めてもモテ期を迎えている。
「ユミのこと、全部俺に教えて?」
ベッドに潜り込んで、カメラから見えないように布団の中で手を握り合う。
子どもがふざけて遊んでいるみたいに、彼は悪戯な瞳で私を見る。
(わぁ・・美しすぎる・・・っ♡伊吹君・・・良い香りがするよぉ・・・♡)
彼の髪からふわりと甘い香りが漂って、一瞬にして変な気持ちになった。
イケメンのドアップは威力がありすぎて、経験値ゼロの私では到底太刀打ちできない。
「ユミ、恥ずかしいの・・?」
「・・・そんな・・・こと・・・・」
(恥ずかしくて、死にそ・・・う・・・っ・・・)
彼の綺麗な瞳に、私の間抜けな顔が映ることに耐えられず、背を向けて布団をかぶる。
「・・・可愛いね。」
耳元で、伊吹の甘い声が響く。
(か、可愛い?!この私が・・可愛い・・・・!?)
信じられない言葉に、私は完全にテンパっていた。
(これ、ドッキリとかじゃないよね・・?!罠じゃないよね・・・!?)
耳の裏側にあたった柔らかい感触が、彼の唇だとわかった瞬間、思わず変な声が出る。
「・・っ・・・あ・・・・」
「ユミ・・・そんな声出されたら、俺・・止まらなくなっちゃうよ?」
背後から、彼の腕が私の体を優しく包み込む。
いつでも逃げられる程度の優しい力で、抑え込むでも捕まえるでもなく、
彼は私の心を掴んだ。
パジャマの胸元に、彼の指がするりと入り込む。
いつも通りのスローペースな動き、おっとりとした口調で、甘く囁く。
「大丈夫。ユミ・・満たしてあげるから、俺に任せて?」
彼の吐息が耳にかかって、ゾクゾクと背筋に快感が走る。
「んぅ・・っ・・・伊吹く・・・ん・・っ・・・」
「その声、もっと聞きたい。」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて、彼が首筋を吸い上げた。
「ん・・んっ・・・」
彼と居ると安心する。
ゆっくりと焦らすように、私の肌に触れる彼の手。
もっと踏み込んできてほしい、そう思っている自分に気が付いた。
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