6 / 18
第5話 『月島 夕』
しおりを挟む新しい現場に行くと、同じ声優という立場の人間にキツく当たられることもある。
ベテラン声優さんは優しい人が多い。真白は同じ若手の声優に意地悪を言われたことが何度かあった。
考えてみれば仕方ない話だ。
若手の声優はたくさんいて、数少ない役をいつも取り合っているのだから。
「え~すごいヘッタクソ。君、名前なんて言うんだっけ?」
相手の言い様に、真白は驚いて開いた口が塞がらない。
(確かに今までも意地悪は言われたことあるけど・・・!段違いの奴キターーーー!!)
ピンク色の髪に、同じ生物と思えないようなツルツルの肌。吸い込まれそうな大きな目。
(こんな綺麗な顔して、言うことえげつな・・・!!)
「僕が可愛いからって、そんなにジロジロ見つめないでほしいな。」
これが、今をときめく超売れっ子若手声優。
月島 夕との出会いだった。
この業界でドギツイ人間に会ったことは何度もあるけれど、彼は格違いだった。
ピンク色の髪、どの角度から見てもアイドル的要素しかない可愛い系。おっとりした言葉と、可愛い声。
(だけど言うことは超絶辛辣・・・・!!)
「なんで超売れっ子の僕の相手役が、君みたいな全然売れてない奴なのかなぁ。」
「あの~・・」
「もしかしてすごいコネあるとか?暁リョウの事務所の子だよね?」
「あの・・」
「わかった!暁リョウとラジオとかやってるから、暁効果で知名度急上昇してるとか?」
(この子結構ちゃんと俺のこと知ってくれてるんじゃ・・・)
「君、もしかして暁リョウのファン?」
暁と一緒にラジオをやっていることを知っているのだから、もしかしたらと思って発言した真白は激しく後悔した。
「はぁ?僕が暁リョウなんか相手にするわけないじゃん。ばっかじゃないの?」
(うわ~地雷踏んじゃった・・?俺・・・)
「京極さんもなんでアンタみたいなヘッタクソ、気にかけてんのか全然意味わかんないんだけど、僕。」
「え!今京極さんって言った?!」
「そう。僕、京極事務所所属だから。もしかして知らなかったの?」
レベル低っ!と可愛い顔で吐き捨てた彼に、真白は食いついた。
「ねぇねぇ!もし良かったら、今日ご飯行かない?」
「はぁ?!」
♢♢♢
「僕、ボーイズラブなんて初めてやらされるからほんっと嫌でさぁ。蕁麻疹出ちゃったもん。」
話してみると、辛辣な態度とは裏腹に勉強熱心で真面目な一面が見える。真白はすぐに彼と意気投合した。
彼は共演者の事務所から過去の作品から今現在の仕事まで一通り調べてから、現場に臨んでいるらしい。真白は不勉強な自分が急に恥ずかしくなった。
(やっぱり売れている人は努力してるんだなぁ・・)
「京極さん、あんたのこと気にかけてるよ。なんだか知らないけど。」
「俺現場で京極さんに会ったこともないし・・なんでだろ?」
「ラジオで憧れてますぅ、とか言ったからじゃん?」
(ラジオ聞いてくれてたんだ・・・・)
素直じゃない天邪鬼な彼の性格が可愛く思えてきた。
「そんなに好きなら、ボーイズラブアニメのオーディション受けてみれば?京極豊の相手役。」
「え?!そんなのあるの?!」
「まだオフレコだから誰にも言わないでよ。来週発表になるはず。」
真白はこの出会いに心から感謝していた。
他のジャンルなら自信がないけれど、唯一場数を踏んできたBLならいけるかもしれない。
(京極 豊の相手役オーディション・・・・!!)
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる