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第14話 枢機卿の悪事
①
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「宰相はどこだ」
ヴィクトラス王国第二王子のルシオールは、ブーツの踵を派手に鳴らしつつ、王宮の二階廊下を足早に歩いていた。
そのうしろに追従するのは、デローニとクロナージュ伯爵、それから護衛の屈強な兵士たちだ。全員腰に剣を帯びているので、石造りの堅牢な廊下にはがちゃがちゃと物騒な音が響いている。
デローニが歩を速めて、ルシオに肩を並べた。
「この時間はおそらく、執務室にいるのではないでしょうか。彼は医者の言いつけを守って、食後一時間は外出を控えているようです」
「なるほど。確かに、食後すぐに馬に乗るのは消化に良くない」
ルシオが応じると、デローニは苦いものをのみくだすそぶりを見せた。
「こんなことになるとわかっていれば、わたくしも朝食を軽めにしましたのに」
「まあそう言うな。兄に言って、もう少し大人しい馬を用意してもらうから」
そう言ってルシオは、最近口ひげにまで白髪が増えたデローニの肩を叩く。
枢機卿から祝いの品が贈られてきたのは、ルシオが十八歳を迎えた翌日の朝、つまり今朝のことだ。
ルシオが離宮に逗留していることは、いずれ知れ渡ることだと思ってはいた。それは仕方がないとして、問題は祝いの品に『近々殿下にお目通り願いたい』という旨の、枢機卿からの手紙が添えられていたことにある。
ここ数年、ルシオは彼に一度も会っていなかった。それが、枢機卿の方から突然面会の要求があるとはただ事ではない。
孫娘との縁談を袖にされ続けていることに痺れを切らしたのか、それとも、コリアード伯爵邸での事件のことを知って、何か揺さぶりをかけようというのか――。
あの演奏会の場に、枢機卿の手の者がいなかったとは限らない。もしもアデルの正体が枢機卿に知られたとして、エレイナとの仲を疑われたら彼女が危険に晒されるだろう。
エレイナの命を守るため、ルシオは身を引き裂かれそうな思いを胸に秘めて、離宮をあとにしたのだった。
目的の場所にたどりついて、ルシオは伴の者を後ろに下がらせた。
ここは王の執務室の前だ。宰相であるロンデル伯爵に会う前に、兄に挨拶をしなければならない。
ヴィクトラス王国第二王子のルシオールは、ブーツの踵を派手に鳴らしつつ、王宮の二階廊下を足早に歩いていた。
そのうしろに追従するのは、デローニとクロナージュ伯爵、それから護衛の屈強な兵士たちだ。全員腰に剣を帯びているので、石造りの堅牢な廊下にはがちゃがちゃと物騒な音が響いている。
デローニが歩を速めて、ルシオに肩を並べた。
「この時間はおそらく、執務室にいるのではないでしょうか。彼は医者の言いつけを守って、食後一時間は外出を控えているようです」
「なるほど。確かに、食後すぐに馬に乗るのは消化に良くない」
ルシオが応じると、デローニは苦いものをのみくだすそぶりを見せた。
「こんなことになるとわかっていれば、わたくしも朝食を軽めにしましたのに」
「まあそう言うな。兄に言って、もう少し大人しい馬を用意してもらうから」
そう言ってルシオは、最近口ひげにまで白髪が増えたデローニの肩を叩く。
枢機卿から祝いの品が贈られてきたのは、ルシオが十八歳を迎えた翌日の朝、つまり今朝のことだ。
ルシオが離宮に逗留していることは、いずれ知れ渡ることだと思ってはいた。それは仕方がないとして、問題は祝いの品に『近々殿下にお目通り願いたい』という旨の、枢機卿からの手紙が添えられていたことにある。
ここ数年、ルシオは彼に一度も会っていなかった。それが、枢機卿の方から突然面会の要求があるとはただ事ではない。
孫娘との縁談を袖にされ続けていることに痺れを切らしたのか、それとも、コリアード伯爵邸での事件のことを知って、何か揺さぶりをかけようというのか――。
あの演奏会の場に、枢機卿の手の者がいなかったとは限らない。もしもアデルの正体が枢機卿に知られたとして、エレイナとの仲を疑われたら彼女が危険に晒されるだろう。
エレイナの命を守るため、ルシオは身を引き裂かれそうな思いを胸に秘めて、離宮をあとにしたのだった。
目的の場所にたどりついて、ルシオは伴の者を後ろに下がらせた。
ここは王の執務室の前だ。宰相であるロンデル伯爵に会う前に、兄に挨拶をしなければならない。
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