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第15話 囚われの王と翼を持つ弟
①
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この情報がもたらされたのは、先日コリアード伯爵邸で行われた演奏会でのことだった。アデルに扮したルシオがエレイナと踊ろうとした時、火急の用件があるとデローニに呼ばれたのだ。
ルシオが連れて行かれた別室には、見知らぬ男が待っていた。デローニの話によると男は子爵で、昨年まで王国の財務管理を担当していたとのこと。
『ここ最近の財政難の理由は、もしや自分が知っていることと関係があるかもしれない』――そう考えていた彼が、演奏会の広間で偶然見つけたデローニに声をかけてきたのだった。
詳しく聞いてみれば、彼が役人だった当時にも請求額と支払額の不一致や、帳簿の改ざんなど細かなトラブルが絶えなかったようだ。消えた金が枢機卿の懐に流れていると、もっぱらの噂だったらしい。
手短に話し終えたルシオは、厳しい目をロンデルに向けた。
「以前から噂されていた国庫の使い込みの件が、これではっきりした。さらに信ぴょう性を高めるため、引き続き過去の帳簿の洗い出しと、枢機卿の身辺をクロナージュ伯爵に調査してもらっている。しかし、事実が明るみになったところで、元老院の一メンバーであるクロナージュ伯爵では、枢機卿を相手に力が及ばないだろう。だから、お前にも手伝ってほしいと思っている」
ルシオの言葉に、ロンデルは苦々しい顔をして首を横に振った。
「まあそうなるでしょうな。しかし、すべてが明らかになったとして、正教会が黙っているでしょうか。教会はおろか、今や民衆もヘネ枢機卿を信奉しております」
「それについては初動が大事だと思っている。閉ざされた議会で公表するのではなく、最初に衆目に晒すんだ」
「つまり……?」
「政府の公式発表とする」
凛とした声で宣言したルシオを、ロンデルは驚愕した顔で見た。彼は困惑する様子を隠しもせず、何度か瞬きをしたのち口を開く。
「しかし、王室の権威が危ぶまれている現在の情勢では、我われが枢機卿を陥れるために事件をねつ造したと思われるのが関の山では? そうなると、選挙制を目論んでいる連中の思う壺です」
ロンデルの言うことはもっともだったが、ルシオには秘策があった。
ルシオが連れて行かれた別室には、見知らぬ男が待っていた。デローニの話によると男は子爵で、昨年まで王国の財務管理を担当していたとのこと。
『ここ最近の財政難の理由は、もしや自分が知っていることと関係があるかもしれない』――そう考えていた彼が、演奏会の広間で偶然見つけたデローニに声をかけてきたのだった。
詳しく聞いてみれば、彼が役人だった当時にも請求額と支払額の不一致や、帳簿の改ざんなど細かなトラブルが絶えなかったようだ。消えた金が枢機卿の懐に流れていると、もっぱらの噂だったらしい。
手短に話し終えたルシオは、厳しい目をロンデルに向けた。
「以前から噂されていた国庫の使い込みの件が、これではっきりした。さらに信ぴょう性を高めるため、引き続き過去の帳簿の洗い出しと、枢機卿の身辺をクロナージュ伯爵に調査してもらっている。しかし、事実が明るみになったところで、元老院の一メンバーであるクロナージュ伯爵では、枢機卿を相手に力が及ばないだろう。だから、お前にも手伝ってほしいと思っている」
ルシオの言葉に、ロンデルは苦々しい顔をして首を横に振った。
「まあそうなるでしょうな。しかし、すべてが明らかになったとして、正教会が黙っているでしょうか。教会はおろか、今や民衆もヘネ枢機卿を信奉しております」
「それについては初動が大事だと思っている。閉ざされた議会で公表するのではなく、最初に衆目に晒すんだ」
「つまり……?」
「政府の公式発表とする」
凛とした声で宣言したルシオを、ロンデルは驚愕した顔で見た。彼は困惑する様子を隠しもせず、何度か瞬きをしたのち口を開く。
「しかし、王室の権威が危ぶまれている現在の情勢では、我われが枢機卿を陥れるために事件をねつ造したと思われるのが関の山では? そうなると、選挙制を目論んでいる連中の思う壺です」
ロンデルの言うことはもっともだったが、ルシオには秘策があった。
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