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Missing you
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最初はそういう日もあるだろうと泰三は変わらず空を見上げていた。
二日――三日――四日目を過ぎたころから空を見上げる時間よりも、境内に入る鳥居を眺める時間が増えていた。
これまで毎日やってきた咲季が来ないとどうにも調子が狂う。いつのまにか泰三は、彼女との時間が何より大切になっていたのだと気付いた。
鳥居を眺めていると草履が土を踏みしめる音が聞こえて泰三の心臓がドキリと跳ねる。
しかし姿を現したのは女性ではなく、西洋の背広と帽子を着込んだ見るからにガラの悪そうな男だった。
「よぉ」
腹巻きに突っ込んだ手を抜いて男はこちらに挨拶をする。
「……あんたか」
この男は泰三の仕事仲間。見た目通りの悪党だった。
境内を根城としている泰三の元にこうやってやってきては、仕事を頼んでくるのだが。最近は悪い評判もあって全然姿を現していなかった。
「珍しいじゃないか。俺のところに来るなんてよ。もう忘れられたもんかと思ってたよ」
睨みつけるように目を鋭くすると、男はひょうきんな態度を見せる
「そう凄むなって。急に仕事を止めたのは悪かったが、仕様がないだろう」
「別に、気にもしてねぇよ」
「そうかい、そりゃあよかった。お前さんとはこれからも仲良くやっていきたいからね」
明るい調子で話す男は腹巻から紙切れを取り出すと、泰三に手渡した。
「これは?」
「仕事だよ。お前にはある建物からブツを取ってきてもらいたい。それは屋敷の見取り図だ」
「空き巣か」
紙切れを開いて中を覗くと、紙面いっぱいに建物の内観が描かれていた。階層は三階まであるようで、部屋の数も考えると相当に広いお屋敷だとわかる。
「空き巣になるか、強盗になるか……それはお前次第ってところだな」
「どういうことだ?」
「そのバカでかい見取り図を見て想像つくだろう? ブツが置いてある屋敷は大病院に勤める男が建てたものでね。薬学研究者なんだが、薬効の高い新薬をバカスカ作るもんで法外な給金をもらって抱え込まれてるのさ。そして今、とんでもない新薬の研究に関わっている。お前の仕事はそのサンプルを取ってきてもらうことだ」
「新薬のサンプル? なんだお前。やくざ者を辞めて医者にでもなるつもりか?」
泰三の冗談に男は高笑う。
「実績ある男が作った新薬だ。裏に流せばとんでもない金に生まれ変わる。しかもその薬は訳アリだからな、どれだけの価値になるか俺でも想像がつかねぇ」
「要領を得ないな。いったい何の薬なんだよ」
「別にお前には関係ない。お前の仕事はただそいつを取ってくるだけだ」
「そんな得体の知れないもんを運ぶほど俺は間抜けじゃない。仕事をさせたかったらせめて何かくらい教えてくれ」
男はわざとらしく顎に手を当てて「うーん」と唸り声を漏らす。
「まぁ、お前がどこかに密告する心配もねぇか。そんなことしたら今までやって来たこと全部バレちまうしな」
ニヤニヤと歯を見せて笑う男に泰三は少し気分が悪くなった。
脅かしているつもりなのかも知れないが、やり口が嫌らしくてどうにも気に入らない。
我慢していると男はにやけた面をこちらに寄せて小声で話す。
「この新薬ってのがな、なんでも不老不死になる薬らしいんだ」
「不老不死だと? 馬鹿な」
「信じられねぇよな。正直なところ、俺も半信半疑だ。でも話のスジは病院関係者からでな。そいつが言うには動物実験の段階では狙った通りの結果が出たらしい」
「不老不死になったってことか?」
「そういうことだろうよ。でも俺たちにとって重要なのはそこじゃねぇ。金だ」
男は人差し指をビッと立てた。
「不老不死になれる薬。こいつは途方もない金になる。しこたま金をため込んだご老体たちが寄ってたかってこの薬に群がってくるはずだ。そいつらから毟れるだけ毟って、一生働かなくてもいい金が手に入る。まさに夢の薬なんだよこれは」
「でも、そんな薬がなんで屋敷の中にあるんだ? そんな世の中がひっくり返りそうなもん。持ち歩いて万が一でも失くしてしまったらおしまいだろう」
「その必要があったから持ち出したんだよ」
「あん?」
怪訝な表情を作ると、男は真面目な顔を作る。
「その男には娘が一人いるんだ。サンプルを持ち帰ったのはその娘に薬を飲ませるためだ」
「大事な娘を不死に変えようとしているってのか?」
「もしくは人体実験として利用するのか。動機まではわからんさ。大事なのは、そのために薬を持ち込んだってことだ。病院内だと警備が厳重すぎて手を出せねぇが、屋敷なら空き巣と要領は一緒だ。さっと行ってさっと出てくるだけでいい」
「そんな上手いこといくのかよ……」
いくらなんでもそんな薬を持ち運ぶなら警備の一人や二人はついているはずだ。寝ずの番だっているかもしれない。そうなれば普通の家探しとは訳が違う。仮に持ち出せたとしても、相手に気付かれたら必死になって追いかけてくるのは目に見えている。見つかったらどうなるか……。考えるだけで気落ちする。
「ここまで聞いたんだ。乗り気じゃなくてもやってもらうぜ」
断わろうと思った矢先、男が口を開いた。
嫌に口が軽いと思ったらこの男、最初からこういう展開にするのが目的だったのか。
相手はやくざ者。この状態で断れば面倒な事になるのは目に見えていた。
「……わかったよ」
「いやー、良い返事だ。そう言ってくれると信じてたぜ」
「それで、肝心の屋敷はどこにあるんだ」
「病院のすぐ近くだ。一等デカい屋敷だから見ればわかる。表札には綾小路と書かれてあるから、目印にするといい」
男の言葉に泰三はギョっとした。
「綾小路だって?」
「ああ、流石に学のないお前も知ってるか? 新薬の件で新聞にも名前が載った事があるしな」
「あ……あぁ。そうだな」
知らなかったが適当に話を合わせて泰三は頷く。頭の中では混乱が起きていた。
綾小路と言えば咲季が名乗っていた姓だ。身なりからどこぞの令嬢だというのはわかっていたが、まさかこんなところで出自がわかるとは。そして何より今から彼女の家に忍び込み、盗みを働くという事実に言葉を無くしていた。
「どうした? 間抜けな顔して、らしくねぇぜ」
「あ? あぁ……いや、何でもない」
「本当か? やることは空き巣だがこれは大仕事なんだ。変に体調を崩されたらコトだぞ」
「大丈夫だって。それよりもいつまでにやればいいんだ」
「早ければ早いほどいい。協力してくれてる奴の話では綾小路は研究所に籠ってまだ帰るのは難しいらしい。だが帰ったらすぐに娘を使って実験をするかも知れないからな」
「……そうか。わかった」
泰三が了承すると。男は「頼んだぞ」と言い残して境内を去って行った。
「くそっ!」
一人残った境内で泰三は頭を抱える。
悪いことをした人間はいつかしっぺ返しが来ると両親に言われたことがあった。ならばこれがそうなのだろうか。
泰三にとって唯一心を許せる相手。そんな相手の家に忍び込み、とんでもない薬を盗み出さなければいけない。もし咲季にバレてしまえば失望の目を向けられることは間違いない。
仮に成功して薬を持ち出せたとしても、咲季の家には莫大な迷惑がかかる。そのきっかけとなるのは泰三の盗みなのだ。
どちらに転んでも咲季からすればいい思いをしない。それがとても苦しかった。
だけど中止にすることは出来ない。聞くだけでも凄い金額が動くのがわかる話だ。逃げたとしたら追い回され、断ったら薬の存在を知る人間として殺されてしまうかもしれない。どれだけ苦心しても、結局のところ泰三に選択肢なんてものはなかった。
もう一つ泰三には気がかりがあった。男の話では娘を使って人体実験を行おうとしていると言っていた。それを咲季は知っているのだろうか。
彼女と話したのは少しだけだが、泰三にはとても彼女が長寿だの不老だのに興味があるようには見えない。それでも父親の為に研究対象になろうとしているのか。もしくは――。
「面倒なことになってきたな……」
泰三は空を見上げる。
こんな時でもやっぱり空はいつもと変わらない。雲が浮かんだ寒空はどこまでも青かった。
二日――三日――四日目を過ぎたころから空を見上げる時間よりも、境内に入る鳥居を眺める時間が増えていた。
これまで毎日やってきた咲季が来ないとどうにも調子が狂う。いつのまにか泰三は、彼女との時間が何より大切になっていたのだと気付いた。
鳥居を眺めていると草履が土を踏みしめる音が聞こえて泰三の心臓がドキリと跳ねる。
しかし姿を現したのは女性ではなく、西洋の背広と帽子を着込んだ見るからにガラの悪そうな男だった。
「よぉ」
腹巻きに突っ込んだ手を抜いて男はこちらに挨拶をする。
「……あんたか」
この男は泰三の仕事仲間。見た目通りの悪党だった。
境内を根城としている泰三の元にこうやってやってきては、仕事を頼んでくるのだが。最近は悪い評判もあって全然姿を現していなかった。
「珍しいじゃないか。俺のところに来るなんてよ。もう忘れられたもんかと思ってたよ」
睨みつけるように目を鋭くすると、男はひょうきんな態度を見せる
「そう凄むなって。急に仕事を止めたのは悪かったが、仕様がないだろう」
「別に、気にもしてねぇよ」
「そうかい、そりゃあよかった。お前さんとはこれからも仲良くやっていきたいからね」
明るい調子で話す男は腹巻から紙切れを取り出すと、泰三に手渡した。
「これは?」
「仕事だよ。お前にはある建物からブツを取ってきてもらいたい。それは屋敷の見取り図だ」
「空き巣か」
紙切れを開いて中を覗くと、紙面いっぱいに建物の内観が描かれていた。階層は三階まであるようで、部屋の数も考えると相当に広いお屋敷だとわかる。
「空き巣になるか、強盗になるか……それはお前次第ってところだな」
「どういうことだ?」
「そのバカでかい見取り図を見て想像つくだろう? ブツが置いてある屋敷は大病院に勤める男が建てたものでね。薬学研究者なんだが、薬効の高い新薬をバカスカ作るもんで法外な給金をもらって抱え込まれてるのさ。そして今、とんでもない新薬の研究に関わっている。お前の仕事はそのサンプルを取ってきてもらうことだ」
「新薬のサンプル? なんだお前。やくざ者を辞めて医者にでもなるつもりか?」
泰三の冗談に男は高笑う。
「実績ある男が作った新薬だ。裏に流せばとんでもない金に生まれ変わる。しかもその薬は訳アリだからな、どれだけの価値になるか俺でも想像がつかねぇ」
「要領を得ないな。いったい何の薬なんだよ」
「別にお前には関係ない。お前の仕事はただそいつを取ってくるだけだ」
「そんな得体の知れないもんを運ぶほど俺は間抜けじゃない。仕事をさせたかったらせめて何かくらい教えてくれ」
男はわざとらしく顎に手を当てて「うーん」と唸り声を漏らす。
「まぁ、お前がどこかに密告する心配もねぇか。そんなことしたら今までやって来たこと全部バレちまうしな」
ニヤニヤと歯を見せて笑う男に泰三は少し気分が悪くなった。
脅かしているつもりなのかも知れないが、やり口が嫌らしくてどうにも気に入らない。
我慢していると男はにやけた面をこちらに寄せて小声で話す。
「この新薬ってのがな、なんでも不老不死になる薬らしいんだ」
「不老不死だと? 馬鹿な」
「信じられねぇよな。正直なところ、俺も半信半疑だ。でも話のスジは病院関係者からでな。そいつが言うには動物実験の段階では狙った通りの結果が出たらしい」
「不老不死になったってことか?」
「そういうことだろうよ。でも俺たちにとって重要なのはそこじゃねぇ。金だ」
男は人差し指をビッと立てた。
「不老不死になれる薬。こいつは途方もない金になる。しこたま金をため込んだご老体たちが寄ってたかってこの薬に群がってくるはずだ。そいつらから毟れるだけ毟って、一生働かなくてもいい金が手に入る。まさに夢の薬なんだよこれは」
「でも、そんな薬がなんで屋敷の中にあるんだ? そんな世の中がひっくり返りそうなもん。持ち歩いて万が一でも失くしてしまったらおしまいだろう」
「その必要があったから持ち出したんだよ」
「あん?」
怪訝な表情を作ると、男は真面目な顔を作る。
「その男には娘が一人いるんだ。サンプルを持ち帰ったのはその娘に薬を飲ませるためだ」
「大事な娘を不死に変えようとしているってのか?」
「もしくは人体実験として利用するのか。動機まではわからんさ。大事なのは、そのために薬を持ち込んだってことだ。病院内だと警備が厳重すぎて手を出せねぇが、屋敷なら空き巣と要領は一緒だ。さっと行ってさっと出てくるだけでいい」
「そんな上手いこといくのかよ……」
いくらなんでもそんな薬を持ち運ぶなら警備の一人や二人はついているはずだ。寝ずの番だっているかもしれない。そうなれば普通の家探しとは訳が違う。仮に持ち出せたとしても、相手に気付かれたら必死になって追いかけてくるのは目に見えている。見つかったらどうなるか……。考えるだけで気落ちする。
「ここまで聞いたんだ。乗り気じゃなくてもやってもらうぜ」
断わろうと思った矢先、男が口を開いた。
嫌に口が軽いと思ったらこの男、最初からこういう展開にするのが目的だったのか。
相手はやくざ者。この状態で断れば面倒な事になるのは目に見えていた。
「……わかったよ」
「いやー、良い返事だ。そう言ってくれると信じてたぜ」
「それで、肝心の屋敷はどこにあるんだ」
「病院のすぐ近くだ。一等デカい屋敷だから見ればわかる。表札には綾小路と書かれてあるから、目印にするといい」
男の言葉に泰三はギョっとした。
「綾小路だって?」
「ああ、流石に学のないお前も知ってるか? 新薬の件で新聞にも名前が載った事があるしな」
「あ……あぁ。そうだな」
知らなかったが適当に話を合わせて泰三は頷く。頭の中では混乱が起きていた。
綾小路と言えば咲季が名乗っていた姓だ。身なりからどこぞの令嬢だというのはわかっていたが、まさかこんなところで出自がわかるとは。そして何より今から彼女の家に忍び込み、盗みを働くという事実に言葉を無くしていた。
「どうした? 間抜けな顔して、らしくねぇぜ」
「あ? あぁ……いや、何でもない」
「本当か? やることは空き巣だがこれは大仕事なんだ。変に体調を崩されたらコトだぞ」
「大丈夫だって。それよりもいつまでにやればいいんだ」
「早ければ早いほどいい。協力してくれてる奴の話では綾小路は研究所に籠ってまだ帰るのは難しいらしい。だが帰ったらすぐに娘を使って実験をするかも知れないからな」
「……そうか。わかった」
泰三が了承すると。男は「頼んだぞ」と言い残して境内を去って行った。
「くそっ!」
一人残った境内で泰三は頭を抱える。
悪いことをした人間はいつかしっぺ返しが来ると両親に言われたことがあった。ならばこれがそうなのだろうか。
泰三にとって唯一心を許せる相手。そんな相手の家に忍び込み、とんでもない薬を盗み出さなければいけない。もし咲季にバレてしまえば失望の目を向けられることは間違いない。
仮に成功して薬を持ち出せたとしても、咲季の家には莫大な迷惑がかかる。そのきっかけとなるのは泰三の盗みなのだ。
どちらに転んでも咲季からすればいい思いをしない。それがとても苦しかった。
だけど中止にすることは出来ない。聞くだけでも凄い金額が動くのがわかる話だ。逃げたとしたら追い回され、断ったら薬の存在を知る人間として殺されてしまうかもしれない。どれだけ苦心しても、結局のところ泰三に選択肢なんてものはなかった。
もう一つ泰三には気がかりがあった。男の話では娘を使って人体実験を行おうとしていると言っていた。それを咲季は知っているのだろうか。
彼女と話したのは少しだけだが、泰三にはとても彼女が長寿だの不老だのに興味があるようには見えない。それでも父親の為に研究対象になろうとしているのか。もしくは――。
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