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HAMUKO

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学校

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 11.17.木 稔は結局昨晩、何も食べなかった。食べられなかった。状況が異常すぎて喉を通らない。胃袋が空っぽのまま朝になった。下へ降りるとテーブルの上に一万円札とメモが置かれていた。

お昼買って食べてね 母より

((この一万円もカツアゲされて終わりか。))

 家を出て、電車で3駅。稔の通う高校は駅から徒歩5分。教室に着くと窓際の一番前の席につく。まだ教室には稔と数人しかいない。ヤツらはチャイムギリギリにサッカー部の朝練から戻ってくるのだ。だから、朝が1番心安らぐ。

キーン コーン カーン コーン…

ガラガラガラ…

「はーいおはよう。出欠とるぞー。」

担任の笹原はいわゆる無気力教師。生徒を干渉しないことで有名だ。ただ干渉はしないが状況把握は優れている。誰と誰が付き合っているか。誰が誰をいじめているか。誰が浮いてるのか。誰が取り仕切ってるのか。全部把握はしているというある意味すごい担任だ。無論、稔がサッカー部の男子からイジメられいるのも知っていた。ただ触れない。

 笹原に続いてサッカー部勢も入ってきた。稔はこの瞬間から冷や汗がにじむ。1限は現代文、自習。稔は逃げたくて仕方がないが、逃げても追いかけられ、捕まり、バケツの汚い水をかけられるのも知っている。べつに教室にいても何かはされる。皆知っていることだから。ヤツらも手加減がない。一体何をされるんだろう。ヘタしたらダンス部の女子も加わるから面倒だ。

キーン コーン カーン コーン…

 黒板には大きく自習の二文字。ワラワラと稔の席は取り囲まれた。しかもダンス部のヤツらまで来てしまった。

((逃げればよかった。))

もう遅い。知ってるさそんなこと。

「おうおう、えらいなぁ稔くん。テスト勉強かな?」

守田。稔をイジメはじめた男子生徒。

「でもお前第一志望落ちたんだろ?諦めとけよ。ここ、併願で来たのお前しかいないんだぜ?ウケる。」

河野。守田といつもつるんでいる。守田がやるなら、俺も。系のヤツ。

「ねぇ、なんでそんなに不細工なわけ?マジウケるんですけど、目障りなんだよねぇ。」

中寺。ダンス部キャプテン。ものすごくカワイイらしい。まぁ確かに美人。綺麗。イジメを受けて無ければ惚れていると思う。

この3人が中心になって稔をイジメる。取り巻きは男子があと2人。女子があと3人。8人で稔をドン底に突き落とす。

「ぼ、僕に構うなんて余裕だね…勉強しなくていいの?」

たまに我慢できなくなってこんなことを言ってしまう。十秒後には後悔がつきない。


「やばっ、泣いてるこいつっ!ウケるんですけど~」

結局稔は教室から連れ出されて校舎裏の花壇の上で泥まみれになっていた。

「泣くなよだりぃなぁ、どうせならもっとな泣かしてやるよ」

守田は稔を蹴飛ばすと、うつぶせになった稔の後頭部を思いっきり踏んだ。口の中には土がめり込んで来る。待ってましたというように残りの男子たちがホースで水ぶっかける。女子の笑い声が甲高く稔に突き刺さる。水は花壇の中をグチャグチャにかき回す。ドロドロになった土は稔の耳や鼻、口、服の中に流れ込んだ。

「きたねぇから教室戻ってくんなよな。」

8人のゲラゲラと笑う声が上から降ってくる。そのうち8人は教室に戻り、チャイムが鳴った。稔は動けなかった。


 「あちゃぁぁ、ひどいやられようだね、力を使えばいいじゃないのよ。」

シロだった。花壇の淵に立って稔を見下ろす。

「げほ…うぇ…。」

稔は凍える体をゆっくり起こすとシロを見上げた。

「信じて、いいの?」

シロはクスッと笑う。

「かんがえてごらん☆``あいつら``が色んな目にあって嫌がったり怖がったりするところを。それだけでいいの。いいの考え突いたら、実行、って思えばいいんだよ☆」

その日稔はその力に魂を売った。

夕焼けが稔の姿を真っ赤に、真っ赤に照らした。

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