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第五章 大戦
二節 戦禍
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二節
「ふぅ・・・。実戦だとやっぱり怖い・・・っとと。」
ちょっとふらついたところをアストラさんに支えられた。
「大丈夫か!?アリアに回復してもらうか!?」
「いえ、大丈夫です。ちょっと疲れただけですから。そんなことより村の方に行かなくていいんですか?」
「いや、行かなければならないが・・・。あのラミエルと戦っていたユーリも心配でな・・・。」
「俺はいいですから、村の方に行ってください。というかこんな悠長に話してる余裕なんてないと思いますよ。」
「・・・それもそうか・・・。すまないが村の方に先に行かせてもらうぞ。」
そう言ってアストラさんは村の方に走っていった。ふと気づくと自分の体のいたるところから血が出ていた。戦っているときは興奮状態だったのかあまり気にならなかったが、こうしてみるとなかなか痛々しい。というか痛い。と、ここでアリアがやっていた<ヒール>を思い出した。確かこう・・・小指を立てて、十字を描いて・・・。「ヒール」と唱えるんだったか。そして怪我をした場所に手を当てれば・・・。傷が消えた。意外と誰にでも使えるみたいで助かった。
見えるところの傷をすべて治し、村の方を見る。まだ煙が上がっていたり、怒号や悲鳴が飛び交っているのが聞こえる。とりあえずまっすぐ上に飛び上がってホバリング。大体どこで戦っているのかを把握すると、上空から土弾で牽制を入れる。敵がこちらに気づくと、こっちに矢やら魔法やらが飛んでくるので、矢なら風で吹き飛ばし、魔法は土壁で対応した。そして敵の真上あたりまで来たところでホバリングを解除して下降。風で調整を入れつつ重力の力で落ちる。自分の周りに火球を作りそれを敵の頭上に落とす。自分の下降速度より遅く飛ばしたから自分に当たることはないだろう。地面から5mくらいのところで横向きに風の向きを変え、味方である村の人たちのところで着地する。
「大丈夫ですか!?」
「おう、坊主か!・・・見てのとおり戦況はなかなか苦しいぞ・・・。というか坊主、お前魔法めちゃくちゃ使えるんだな!」
「あ、あれおっちゃんじゃないですか!おっちゃんは毒大丈夫だったみたいですね、よかった・・・。」
「毒?」
「なんか水に入ってたとかなんとか・・・。自分で生成してる人は無事だったらしいですけどね。とりあえずここらにいる人達を連れて社の方に向かってください!ここは俺が何とかしますから!」
「ああ、じゃあすまんが任せた!社に向かえばいいんだな?お前らぁ!!動ける奴は動けないやつ担いで社までいくぞぉお!!!」
「「おぉー!!」」
と、みんなが行こうとした時、敵が動いた。咄嗟に土弾で牽制を入れる。
「待て貴様ら!いかs」
「・・・行かせませんよ?あなたたちの相手は僕ですから。」
そのひと言が口火になって敵の一斉攻撃が始まった。前からは前衛と思われる剣士が、上からは弓が。そして全方向から土弾が。
まず風で上空の弓を吹き飛ばしつつ上昇する。高さ的に人の頭当たりまで上がり、切りかかってきた剣士の顔面を踏みつけつつもう一度飛び上がる。剣士たちの体制が崩れたのを確認しつつ魔術師の場所を確認する。そこに向かってこちらから土属性に有効な風属性として竜巻を起こす。土弾を落とされて、土壁で防ごうとする敵をこちらも土弾を作って撃ち抜く。敵は詠唱する時間がある分隙があり、そこを狙う。4人居た魔術師も、その方法で潰した。と、倒しているうちに矢の第2波が来ていた。もう一度風で吹き飛ばし、今度は弓部隊に向かって火球を放つ。いくらか放ち、弓部隊が全滅したと思った瞬間、背中に鋭い痛みが走った。
下にいた剣士たちが自分の持っていた剣を投げたのだ。
刺さった痛みで集中が切れ、自分を支えていた風魔法が弱まり、地面に叩きつけられた。
「カハッ・・・カヒュ・・・・・・。」
右肩のあたりから生暖かい血の感触と、鉄の冷たさを同時に感じる。地面に叩きつけられた衝撃も合わさり、体が動かない。周りからはぼんやりと「今だ」とか「殺せ」だとかが聞こえてくる。戦いの中に身を置いていると一つの油断が大事につながる。それはこういうことなんじゃないだろうか。油断していなくても死角には気を張らねばならなかった。それを怠ったのだ。
最後に風切り音と金属同士が当たった時に鳴るキィーンという甲高い音を最後に意識がプツンと切れた。
「ふぅ・・・。実戦だとやっぱり怖い・・・っとと。」
ちょっとふらついたところをアストラさんに支えられた。
「大丈夫か!?アリアに回復してもらうか!?」
「いえ、大丈夫です。ちょっと疲れただけですから。そんなことより村の方に行かなくていいんですか?」
「いや、行かなければならないが・・・。あのラミエルと戦っていたユーリも心配でな・・・。」
「俺はいいですから、村の方に行ってください。というかこんな悠長に話してる余裕なんてないと思いますよ。」
「・・・それもそうか・・・。すまないが村の方に先に行かせてもらうぞ。」
そう言ってアストラさんは村の方に走っていった。ふと気づくと自分の体のいたるところから血が出ていた。戦っているときは興奮状態だったのかあまり気にならなかったが、こうしてみるとなかなか痛々しい。というか痛い。と、ここでアリアがやっていた<ヒール>を思い出した。確かこう・・・小指を立てて、十字を描いて・・・。「ヒール」と唱えるんだったか。そして怪我をした場所に手を当てれば・・・。傷が消えた。意外と誰にでも使えるみたいで助かった。
見えるところの傷をすべて治し、村の方を見る。まだ煙が上がっていたり、怒号や悲鳴が飛び交っているのが聞こえる。とりあえずまっすぐ上に飛び上がってホバリング。大体どこで戦っているのかを把握すると、上空から土弾で牽制を入れる。敵がこちらに気づくと、こっちに矢やら魔法やらが飛んでくるので、矢なら風で吹き飛ばし、魔法は土壁で対応した。そして敵の真上あたりまで来たところでホバリングを解除して下降。風で調整を入れつつ重力の力で落ちる。自分の周りに火球を作りそれを敵の頭上に落とす。自分の下降速度より遅く飛ばしたから自分に当たることはないだろう。地面から5mくらいのところで横向きに風の向きを変え、味方である村の人たちのところで着地する。
「大丈夫ですか!?」
「おう、坊主か!・・・見てのとおり戦況はなかなか苦しいぞ・・・。というか坊主、お前魔法めちゃくちゃ使えるんだな!」
「あ、あれおっちゃんじゃないですか!おっちゃんは毒大丈夫だったみたいですね、よかった・・・。」
「毒?」
「なんか水に入ってたとかなんとか・・・。自分で生成してる人は無事だったらしいですけどね。とりあえずここらにいる人達を連れて社の方に向かってください!ここは俺が何とかしますから!」
「ああ、じゃあすまんが任せた!社に向かえばいいんだな?お前らぁ!!動ける奴は動けないやつ担いで社までいくぞぉお!!!」
「「おぉー!!」」
と、みんなが行こうとした時、敵が動いた。咄嗟に土弾で牽制を入れる。
「待て貴様ら!いかs」
「・・・行かせませんよ?あなたたちの相手は僕ですから。」
そのひと言が口火になって敵の一斉攻撃が始まった。前からは前衛と思われる剣士が、上からは弓が。そして全方向から土弾が。
まず風で上空の弓を吹き飛ばしつつ上昇する。高さ的に人の頭当たりまで上がり、切りかかってきた剣士の顔面を踏みつけつつもう一度飛び上がる。剣士たちの体制が崩れたのを確認しつつ魔術師の場所を確認する。そこに向かってこちらから土属性に有効な風属性として竜巻を起こす。土弾を落とされて、土壁で防ごうとする敵をこちらも土弾を作って撃ち抜く。敵は詠唱する時間がある分隙があり、そこを狙う。4人居た魔術師も、その方法で潰した。と、倒しているうちに矢の第2波が来ていた。もう一度風で吹き飛ばし、今度は弓部隊に向かって火球を放つ。いくらか放ち、弓部隊が全滅したと思った瞬間、背中に鋭い痛みが走った。
下にいた剣士たちが自分の持っていた剣を投げたのだ。
刺さった痛みで集中が切れ、自分を支えていた風魔法が弱まり、地面に叩きつけられた。
「カハッ・・・カヒュ・・・・・・。」
右肩のあたりから生暖かい血の感触と、鉄の冷たさを同時に感じる。地面に叩きつけられた衝撃も合わさり、体が動かない。周りからはぼんやりと「今だ」とか「殺せ」だとかが聞こえてくる。戦いの中に身を置いていると一つの油断が大事につながる。それはこういうことなんじゃないだろうか。油断していなくても死角には気を張らねばならなかった。それを怠ったのだ。
最後に風切り音と金属同士が当たった時に鳴るキィーンという甲高い音を最後に意識がプツンと切れた。
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