【完結済】ヒト族ですがもふもふの国で騎士団長やらされてます。

れると

文字の大きさ
33 / 167

お父様

しおりを挟む
「ここが第1訓練場で騎士団の中で1番大きな訓練場になります。」
「ほぅ。こういう上から見渡せる場所は他の訓練場にもあるのかい?」
「いえ、観覧場所があるのはこの第1訓練場のみになります。」

俺は今先程お茶の時間に訪れたお客さんの案内役をしている。
お客さんは素性を明かさず ルアン様と呼ぶように、とだけ自己紹介された。
レスト副団長が何も言わずに俺1人にに案内役を任せたので大丈夫な人なんだろうと思う。

ルアン様は赤褐色の髪色にクーグゥ様みたいな大きめの耳に黒の斑点があり、尻尾は根元がふわっとして先がシュッと細くなっていて先の方が黒に近い色になっている。背は高めで切れ長の目にルビーのような燃える色をした瞳が収まっていて、少し伸びた顎髭と相まってダンディさが際立っている。
背筋は伸びていてお腹もシュッと引き締まっている。
チャコールグレーのスリーピーススーツを見事に着こなしており、タイは無いがシャツの上から3つ目まで開けている姿が、どこからどう見てもダンディで素敵なおじ様だ。ボタンの開け具合がちょっと雰囲気エロ入ってるよね!

「せっかく来たのだからガイウス君と誰か手合わせしてるところを見てみたいのだが。」
「俺ですか?・・・うーん、一旦下の観覧席に移動しましょうか。」

ルアン様を連れて下の観覧席に移動する。
第1訓練場は年に数回競技等を行う為に大きくは無いが観覧席が設備として備わっている。

手合わせかぁ・・・。相手によるよなぁ。弱いものイジメはしたくないし。うーん、だれか良さげな人居ないかなぁ?

「良い相手が居るか確認してきますのでお待ちください」

ぽてぽてと訓練場を邪魔にならないように歩く。

んーっと・・・お、相手してくれるか分かんないけど適任見っけ♪

俺はゆっくりその人に近づいて声をかけた。

「ジェントルド!俺と手合わせしてくれません?」

・・・・・・ザワっ。

えっ何?一瞬静まって一瞬騒ついたぞ?

周りをキョロキョロ見渡すが 、先程と変わらずほかの団員たちは訓練や手合わせを続けていた。

「団長、俺とですか?」
「うんそう。実は今日お客さん来てまして、俺と誰かの手合わせが見たいって言われて・・・。」

先程の事は気にしないで、ちらっとルアン様の居る観覧席を視線で示す。

「これは、断われないやつじゃないですか。」

はぁ。と溜息を吐くジェントルド。

断れないの?ルアン様ってそんな凄い人なの?
っていうか断る気だったんだね?


その後はジェントルドが全て仕切ってくれていた。
気がつけば団員は全員訓練をやめて閲覧席や廊下に出ており、アデルバートが審判役を買って出ていたりして、俺は訓練生用の小さめの木で出来た剣を、ジェントルドは木で出来た大振りの剣を手にしていた。

手際が良過ぎる!俺より絶対団長向いてるよ!
っていうかアデルバート居たのね!?

「「よろしくお願いします」」

挨拶をして、背を向けて歩く。
ある程度距離を取ったところで向かい合って木刀を構えて少し強めの身体強化をかけた。

「はじめっ!」

アデルバートの声が響いた瞬間、ジェントルドが地面を蹴り出し、こちらに大振りの剣を振りかぶって来るのを避ける。

ブンっ

ジェントルドの木刀が空気を切る音がした。

相変わらず凄い馬鹿力!あれ当たったら俺死ぬよね。
後ろに2歩程下がり剣を構えて距離を詰めながら腕力強化の術をかけて斬り掛かる。

カンッ

木刀同士がぶつかる音がして弾かれた。
後ろに跳んで体勢を立て直しまた斬り掛かる。

カンカンカンカンッ
ブオンっ

連撃を繰り出したが全て弾かれて横凪に大剣が振るわれるのを少し屈んで避け隙を付いて脇腹目掛けて剣を振るうが、それも後ろに下がって避けられて、開いた距離を詰めてまた連撃を繰り返す。

カンカンガッ!

力強く弾かれてよろけた所に上から重い一撃が降って来る。咄嗟に木刀を構えるが、重さに耐えきれず地面に膝を付く。

身体強化を更にかけてそれを片手で横に流すと距離を詰めて、今だ!

「!!くっ」

先程膝を付いた時に掴んだ砂をジェントルドの顔に向けて放つ。予想だにしない攻撃に一瞬動きが止まるがまた横に凪いできたそれを軽くいなして、体全体に硬化術をかけて全力の体当たり!!
またしても予想外の攻撃にジェントルドがバランスを崩す、ところを更に体当たり!

「は!!?」

流石に連続で体当たりとは思いもしなかったのだろう間抜けな声が聞こえて来た。

更にバランスを崩したジェントルドの向う脛を木刀で叩く。全力で行って折っちゃうと後々面倒なので怪我はしないけどすっごい痛いくらいの強さで。
そのまま後ろに回り込み、膝から崩れるように体重をかけて思いっ切り膝裏を踵で蹴り下ろす。

崩れかかったところを今度は背中上部、そのまま前に倒すように勢いと体重をかけて、

「そこまで!」

アデルバートでは無い声が響いて手を止めた。

ヤバい!やり過ぎたかも!脛辺りから崩す事しか考えて無かった!

「じぇ、ジェントルド、大丈夫です、か?」
「・・・目ぇ、洗いたいです。」
「ぁぁ、今すぐっとぉその前にポーションっはいこれ飲んで!」
「・・・なんでんなものすぐ出せるんですか。」
「実は上着の内ポケットに特殊なポーチを縫い付けてまして?」
「はぁー。有難く頂きます。」

俺から受け取った小さな小瓶の中身を一気に煽ってから水場の方へ歩いていった。
ジェントルドもレスト副団長みたいに溜息が返事みたいになって来てる気がする・・・。

「・・・団長ぉ、何やってるんですか。」
「あ、声掛けてくれて助かりました。」
「団長とジェントルド様が手合わせしてるって小耳に挟んだので来て良かったです。ところでどうして手合わせを?」

ミッキィが溜息混じりに聞いてくる。先程、場内に響く声で制止をかけてくれたのはミッキィだったのだ。

ミッキィまでもが溜息を・・・。

「ええと、ルアン様が今日見学で来られてまして、俺の手合せが見たいと仰るので・・・。」

ちらっと視線で観覧席にルアン様を示す。

「あぁ。・・・アデルバート!審判するなら一方的になった時点で止めろ!無駄な怪我人を出す気か!」

ミッキィは少し悩んでから矛先をアデルバートに変えた。

いや俺ちょっと夢中になっちゃっただけで怪我人を出そうとは露ほども思ってないんだけども。

ルアン様を放って置けないので観覧席に近づくと、
ルアン様は興奮した様子で「ガイウス君凄いね!こんな小さな身体で大きなジェントルド君を相手に気後れもせず勝ってしまうなんて!」と仰った後「しかし君の魔術が見れなかったのは残念だったよ。」と項垂れながら呟いた。

ふむふむ、なるほどね!

「ルアン様、まだお時間ありますか?」

そう言って俺はルアン様を訓練場の外に連れ出した。

「ほう。訓練場の裏手にこんな場所があるとは知らなかったよ。」

訓練場の裏手にはちょっとした庭がある。庭って言っても本当に小さな池に背の低い低木が数種類植わっていて奥には屈強な騎士団では2人でもぎゅうぎゅうなガゼボに、処々座って休めるようにベンチが点々と置いてあるだけの小さな場所だ。

俺はルアン様を近くのベンチに座らせて低木から数枚葉を失敬して、その葉で魔獣の形を作る。
小さくて可愛い野ネズミや小鳩などを作っていたらルアン様が「私もやっていいかい?」と尋ねてきたのでお願いした。ルアン様が作った魔獣はフェレットだった。凄い!可愛い!器用!

「ふふふ、ではインパクトも過激さも無いですが、少しだけ俺の魔術を披露しますね!」

ルアン様に笑顔で伝えて集中する。
先ずは高い所の空気中の水分を凍らせて傾き始めている太陽の光でキラキラさせて、虹に、何色か別れるように、、、、少し頑張って見たが難しいので諦めて、先程ルアン様にも手伝って貰った葉っぱで作った魔獣を風で浮かせてキラキラの中を楽しく駆け回っている様にうごかす。
チラッとルアン様を伺うと俺の魔術をジッと見てくれていた。

あ、どうしよう。最後どうやって終わらせようか考えてなかった。

そう考えたその時、ビュォっと強い風が吹いてキラキラも魔獣達もサーっとどこかへ飛んでいってしまった。

「あは。風に横取りされちゃいました。」

にへらっと笑う俺に満足してくれたようで「こういう魔術の使い方は中々見ない」だとか「凄く繊細で綺麗な魔術操作だ」とか「うちの妻にも見せたい」だとか沢山褒めてくれた。

その後、時間だからと帰るルアン様に今日のお礼と別れの言葉を告げて任務完了!
と思ったら最後にルアン様はこんなことを言ってきたんだ。

「ところでガイウス君は何時になったら私の事を『お父様』と呼んでくれるのかね?」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎
BL
 前世で元ヤンキーだった橘茉優(たちばなまひろ)は、異世界に転生して数ヶ月が経っていた。初めこそ戸惑った異世界も、なんとか知り合った人の伝でホテルの料理人(とは言っても雑用係)として働くようになった。  この世界の人はとにかくパーティーが好きだ。どの会場も予約で連日埋まっている。昼でも夜でも誰かしらが綺麗に着飾ってこのホテルへと足を運んでいた。  その日は騎士団員が一般客を招いて行われる、ダンスパーティーという名の婚活パーティーが行われた。  騎士という花型の職業の上、全員αが確約されている。目をぎらつかせた女性がこぞってホテルへと押しかけていた。  中でもリアム・ラミレスという騎士団長は、訪れた女性の殆どが狙っている人気のα様だ。  茉優はリアム様が参加される日に補充員としてホールの手伝いをするよう頼まれた。  転生前はヤンキーだった茉優はまともな敬語も喋れない。  それでもトンチンカンな敬語で接客しながら、なんとか仕事をこなしていた。  リアムという男は一目でどの人物か分かった。そこにだけ人集りができている。  Ωを隠して働いている茉優は、仕事面で迷惑かけないようにとなるべく誰とも関わらずに、黙々と料理やドリンクを運んでいた。しかし、リアムが近寄って来ただけで発情してしまった。  リアムは茉優に『運命の番だ!』と言われ、ホテルの部屋に強引に連れて行かれる。襲われると思っていたが、意外にも茉優が番になると言うまでリアムからは触れてもこなかった。  いよいよ番なった二人はラミレス邸へと移動する。そこで見たのは見知らぬ美しい女性と仲睦まじく過ごすリアムだった。ショックを受けた茉優は塞ぎ込んでしまう。 しかし、その正体はなんとリアムの双子の兄弟だった。パーティーに参加していたのは弟のリアムに扮装した兄のエリアであった。 エリアの正体は公爵家の嫡男であり、後継者だった。侯爵令嬢との縁談を断る為に自分だけの番を探していたのだと言う。 弟のリアムの婚約発表のお茶会で、エリアにも番が出来たと報告しようという話になったが、当日、エリアの目を盗んで侯爵令嬢ベイリーの本性が剥き出しとなる。 お茶会の会場で下民扱いを受けた茉優だったが……。 ♡読者様1300over!本当にありがとうございます♡ ※独自のオメガバース設定があります。 ※予告なく性描写が入ります。

猫になった俺、王子様の飼い猫になる

あまみ
BL
 車に轢かれそうになった猫を助けて死んでしまった少年、天音(あまね)は転生したら猫になっていた!?  猫の自分を受け入れるしかないと腹を括ったはいいが、人間とキスをすると人間に戻ってしまう特異体質になってしまった。  転生した先は平和なファンタジーの世界。人間の姿に戻るため方法を模索していくと決めたはいいがこの国の王子に捕まってしまい猫として可愛がられる日々。しかも王子は人間嫌いで──!?   *性描写は※ついています。 *いつも読んでくださりありがとうございます。お気に入り、しおり登録大変励みになっております。 これからも応援していただけると幸いです。 11/6完結しました。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

処理中です...