【完結】売られた先の長閑な田舎の百姓貴族の次男様に溺愛されてます

れると

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1.隣国の長閑な田舎の貴族に売り飛ばされました。

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「遠いところ、ようこそおいでいただいた。我が伴侶殿。」

「・・・・・・え?伴侶?・・・伴侶ですか。伴侶?」

僕は、初めて来た見知らぬ国の、見知らぬ土地の、初めて足を踏み入れた大きな屋敷で、僕を買い雇ったこの国のとある子爵家の次男殿の言葉に疑問を浮かべて馬鹿みたいに『伴侶』という言葉を繰り返した。

僕って、所謂奴隷みたいな感じで売られたんじゃないの?伴侶って、僕の知ってる伴侶?国が変わると言葉も変わったりするの?

僕は首を傾げつつも、遠いこの地に一緒に来てくれた従者を振り返る。

「先ずはご挨拶を。」

僕の疑問には応えてくれず、挨拶をしろと促される。

「ぁ、失礼いたしました。本日よりこちらでお世話になります、アロガン帝国より参りましたキーリーと申します。」

うん。無難さ100%の挨拶。うん、花丸すぎるね。

「確か、ハープ子爵家のご子息だと伺っていたのだが・・・?」

目の前の大柄な男は俺の無難さ100%の挨拶に疑問で返してきた。

ああ、その反応は間違ってないです。やっぱりそう聞いてますよね。

「あ、ええと、あの、僕は、他国に出されたので子爵家の者では無いので名乗るなと、子爵から仰せつかっております。」

「そう、なのか。ふむ。」

爵位のある家の者が金銭的余裕がないから次男や三男を他国に売り飛ばすのは特に奇異な事では無い。貧乏貴族が息女をお金目当てで嫁がせたりなんかも当たり前だ。
その際に家名を名乗らせないのも至極当たり前の事である。

ただし、俺の国では。

やっぱり変なのかな、売る側としては貴族っていうのはアピールポイントだもんね。

そして今から僕のご主人様となる、いや、既になった人は先程から顎に手を当てて何やら考え込んでいる。

うん、そうですよね。

元々爵位のある家の者が勘当された訳でも絶縁された訳でも無いのに家名を名乗るなっていうのは変だよね、僕の生まれた国ではそれが普通だけど、僕も変だと思うよ、うん。

僕がじぃーっと見ていたからか、ハッとして彼は居住まいを正して挨拶をしてくれた。

「ああ、すまない。既に知っているとは思うが、俺はブレア。ブレア・モラレスだ。このモラレス領を統治するモラレス子爵の次男だ。お前と同じネコ族だ、一応な。」

「・・・同じ、ネコ族?、ですか。」

僕は一般的なネコ族でも小柄な方だ。よくあるベージュに近い薄めの黄金色で特に模様もないどこにでも居る陳腐な感じ。

対して目の前の、僕のご主人様は背が高く大柄で全身に筋肉が付いているのがよく分かる。黄金色ベースに少な目だが斑のような縞のような模様の暗色が混じっている耳と尻尾も太くて立派。まるで筋肉質な模様の違うヒョウといった感じ。

ん?ヒョウもネコ科だからいいのか。
ヒョウってこんなに筋肉質になるのかな、鍛えればなるか。

「・・・ヒョウ、ですか?」

「ぶはっ!!!」

………どうやら違うらしい。豪快に笑う人なんだなぁ。
一頻り笑ったあと俺に向かって答えを教えてくれた。

「ワイルドキャットって知ってるか?」

「・・・ワイルドキャット?」

ワイルドキャット?なんだっけ。前に聞いたことがあるような、無いような。

「森の奥に住む、木に登るネコだな。」

「木に登るネコ・・・?クランベリーの?」

モラレスって確かクランベリーの林の近くに住むって意味じゃなかったっけ?

「お?物知りだな。クランベリーの木じゃ細くて折れちまうけどな!」

ハハハとまた豪快に笑う。

その笑い方に、初めて会った筈なのに何故か誰かに似ているような、既視感の様なものが沸いてきた。

でも僕の数少ない知り合いにはこんな風に笑う人は居ない筈だ。



「本当に耳が無いんだな。」

ご主人様は、僕の欠けてる左耳を、壊れ物に触れるかのように至極優しく撫でてくる。

「あー、半分から下はありますよ?痛くもないですし、きちんと聞こえます。少し動きと感覚は鈍いですが、見た目以外は普通です。もっとガッツリ触っても問題ないですよ?」

「ふむ。」

今度は根元をしっかりとモミモミ、欠けてる先端を撫で撫でしてくる。

満足したのだろうか。
一頻り堪能された後、僕の事をぎゅっと抱き締めてきた。

・・・抱きしめられた?

「長旅、疲れただろう?夕餉までにはまだ時間がある。先ずは部屋を案内しよう。」

「あ、はい。あ、あのその前に、」

「ん?どうかしたか?」

僕はここまで一緒に着いてきてくれた、とりあえずの僕の従者ということになってるルーランを見た。

今までずっと黙って見ていたルーランが声を出した。

「ブレア様。大変不躾ではございますが、私のお役目はキーリー様を無事このお屋敷までお連れ致すことですので、そろそろお暇させて頂ければと存じます。」

そうなのだ。僕一人では体裁が宜しくないからという理由で付けられたのがこのルーラン。毛先が白い狐のお耳と尻尾の彼。年齢が割と近いこともあって、人の目を盗んで会話をしてくれていたので仲は悪くはない、と僕は思っている。
でも彼のお役目は僕をここまで無事送り届ける事。
早く帰らせないと日が暮れてしまって帰り道が危なくなってしまう。

「うん、ルーランここまでありがとう。気をつけて帰ってね。」

僕はご主人様の腕の中からヒラヒラと手を振った。

「帰ってしまうのか?ふむ、ルーランと言ったか、月これでどうだ。子爵には私から頼りを出しておこう。」

ご主人様はそう言いながら何かハンドサインをルーランに示した。ルーランはそれを見て「よろしくお願い致します。」と返事を返している。

そして未だご主人様の腕に囚われている僕に向かって2人は言った。

「今からルーランはキーリーの専属侍従だ。」

「キーリー様、よろしくお願いいたします。」



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