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奇妙な仲間たち

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 十二支たちが登場する度、私の固定概念が覆され、鍛えられる。
 どれだけ計算しても答えが出ない。
 理屈では説明できない物事があると、この短期間で無理やり学ばされた。
 驚きはするものの、昨日のように早く帰りたいとは思わない。
 
「二人はラブラブなんだよ、長い間よくやるよね」
「ったりめえだろ! 俺たちの愛は永遠だからなっ!」

 あきれた様子の猫宮さんに、繁寅さんがすかさず断言する。
 卯瑠香さんは知らん顔で空になった小鉢と箸をテーブルに置く。慣れたやり取りなのだろうか。本当にラブラブなのか疑いたくなるほど見事な無視だ。
 そんな彼女は「ごちそうさま」と手を合わせたあと、こちらに身体を向け私を見た。

「でもあたしも気になるわ、猫ちゃんがただの人間……お客さんに対してそこまで親しそうなの初めて見たもの」

 太腿の両端に位置する椅子の縁を持ち、身を乗り出すように興味の視線を向けてくる。
 足を組むポーズが艶かしく、胸の谷間もチラつく。目のやり場に困るとはこのことか。
 一応女性同士ではあるけれど、自分とは違いすぎて比べる余地もない。断じて羨ましくなんてない。

「ちづちゃんはね、僕の置き物が欲しいって言ってくれたんだよ」

 おかしな勘違いを封印するために、セクシーウサギのプロポーションに思考をシフトしていたのに。
 そこに行き着くまでの経緯を飛ばした上、ついに猫ではなく「僕」の置き物ときた。
 その言い方では猫宮さん個人の銅像でも欲しがっているようではないか。
 天然なのかわざとなのか、いずれにせよ罪な人だ。
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