猫の罪深い料理店~迷子さんの拠り所~

碧野葉菜

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 そう思った私の次なる行動は早かった。
 道筋が決まれば、あとは前進あるのみだ。
 猫宮さんにお返しをするなら、今まで生きた長さの分だけお世話になっているはずの十二支たちは外せない。
 それぞれ猫宮さんにどんな思いがあるかはわからないけれど、なるべく多くの人数を集めたい。
 個人的に連絡が取れて、猫宮さんと特に親しい間柄の十二支。
 そう考えれば、思い当たる人物は一人しかいなかった。

 八月のお盆休みを目前にした街には、友人やカップル、グループ交際と見られる若者たちが足並みを揃えてはしゃいでいる。社畜とはまだ無縁の学生たちだろう。
 私も通過してきた年齢だけれど、あんな眩しい時代はなかった。
 今の方がずっと青春らしい。
 そう感じながら電車に乗り、私の自宅と会社から少し離れた場所に移動した。
 彼と会っているところを、顔見知りの誰かに見られたら面倒だから。
 そんな理由で選んだ郊外の喫茶店。
 高層ビルがひしめき合う都市部とは違い、悪く言うと古くさい片田舎、良く言うと落ち着いた住宅街。
 駅から数分歩けば見える、昔ながらの木製のドア前に足を止める。
 よく考えてみると、仕事以外で誰かと待ち合わせするなんて、初めてかもしれない。
 慣れないことにやや落ち着かず、腕時計と周辺に交互に目配せしていると、その声は思わぬところから現れた。

「千鶴よ、待たせたか」

 前方でも左右でもない。
 舞い降りるような静かな気配は、私の真後ろに訪れた。
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